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60歳から筋トレ開始でこの身体!メリハリのある筋肉美でボディコンテスト活躍 「挑戦に"遅すぎる"なんてことは、ありません」

撮影:中島康介

競技歴わずか1年で、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の最高峰の舞台、『オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2023』に出場。ビキニフィットネス最年長の61歳で挑んだ落合玲子(おちあい・れいこ/63)さんは、マスターズ(45歳以上)で13位。2年目の『オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2024』では62歳でマスターズ(50歳以上)で4位、さらに20代も出場する身長別(158cm以下)で13位と、その健闘が話題に。

60歳から始めた筋トレが、落合さんの人生にもたらしたものとは──。

[初出:Woman'sSHAPE vol.30]

【写真】落合玲子さんの還暦越えでもメリハリのある筋肉美

肩こりからスタートした筋トレライフ

━━競技歴2年でオールジャパン入賞を果たした落合さん。60歳からの筋トレ、そのきっかけは?

落合 もともとスポーツ経験があったわけではないんです。30年以上、外資系金融でマーケットを相手に、緊張感の続くデスクワーク中心の毎日を送っていました。ほとんど一日中、画面に向かっているような日々で、慢性的な肩こりに悩まされていたんです。そこにコロナ禍で在宅勤務が加わり、外に出る機会が激減。気づけば、1日数10歩しか動かない日もあるほどで……。

━━身体の不調に運動不足が追い打ちをかけたんですね。

落合 そうですね。それまで私は、子育てをしながらも完全に〝仕事人間〞。時差の関係で帰宅後にも仕事をするような日々でした。現在も仕事をしておりますが、年齢的にも退職後を意識するようになり、「仕事がなくなったら、私はこれから何をするのだろう?」と考えるようになったことも、新しいことを始めるきっかけのひとつだったと思います。

━━「身体を変えたい!」の優先順位は、最初は低かったのですね。

落合 でも実際にトレーニングを始めてみたら、想像以上に性に合っていて。身体も自然とほぐれるし、「あ、これは続けられるかも」と思えたんです。それに私は、有酸素運動が大嫌いで(苦笑)。その点、筋トレは短時間で集中して終わる。性格的にも合っていたんでしょうね。仕事に通じるものも少し感じられて。

━━筋トレと金融のお仕事が?

落合 筋トレって、自分との戦いじゃないですか。私がやってきた資産運用の仕事も、チームワークはありつつ、個人の分析と判断が問われる場面が多いのです。そこに似た感覚を感じました。そのうち楽しくなってきて、パーソナルトレーニングも受けるようになり、ゴールドジムで天童愛ゆ美先生に教わるようになりました。

━━ご自身のボディビルダーとしての経験から、ボディメイク指導に定評のある方ですよね。JBBF審査員の資格もお持ちです。

落合 先生から大会出場を勧められたのですが、私はあくまで一般人のおばさんですし、ボディビルの世界は特殊な人がやっているイメージ。だからもちろん「裸同然でステージに上がるなんてとんでもないです」と丁重にお断りしました。そうしたら先生が「『マッスルゲート』という大会ではトレーニングウェアで大丈夫なんですよ」と。それを聞いて重い腰が上がりました(笑)。

━━コンテストデビューはマッスルゲートだったんですね。

落合 筋トレを2021年の後半に始めて、翌年の秋に出ました。その後、先生から「来年からJBBFのビキニに出ましょうね」と言われて。「オールジャパン」の存在も知らないくらいの私が、本当にあれよあれよという感じでしたね(苦笑)。

60歳は「節目」ではなく新たな挑戦のスタートライン

━━心身の変化はトレーニング初期から感じられましたか。

落合 それはありましたね。トレーニングを始めたら、本当は毎日もっと忙しくなるはずですよね。でも仕事はこれまでと同じ全力投球、トレーニングはオフの楽しみと”オン・オフ”がはっきりして、24時間では足りないくらい充実しています。やってよかったなと思いますね。

━━60歳を迎えて、まさに「生きがい」に出合えたのですね。

落合 のめり込むタイプなので、仕事の他に打ち込めるものができたことが嬉しいですね。60歳って日本では「節目」のように捉えられているじゃないですか。定年を迎えたり、「還暦」という言葉もあったりして。でも、実際の同世代はみんなすごく生き生きしているんですよね。それなのに、言葉のイメージだけで世の中的に”人生終わった人”みたいに思われちゃうのかな?と残念に思ったり、私自身もそういう捉え方をしていたところはちょっとあって。だから、60歳になるのがすごく嫌だったんです(笑)。

━━50歳のときとは違う?

落合 全然違いますね。50代はまだ「現役バリバリ」。60代になると、社会から「そろそろ引いてもいいのでは?」という目がなんとなく出てくる。でも、自分の中ではまだやりたいことも成し遂げたいこともある。そんなときに出合った筋トレが、人生をもう一段階上へ押し上げてくれた感覚でした。

━━改めて、中高年の方にトレーニングをお勧めする理由は?

落合 やっぱり人生のここからは「健康寿命」が何より大事ですよね。60代、70代の方を見ていると、健康な人ほど人生を楽しめていると感じます。私事ですが、今、母は90歳。年齢にしては元気ですが、運動をしてきていないので足腰が弱って何となく気弱にもなってきました。片や父は、仕事を引退後は毎朝4時から散歩、近所のラジオ体操に山登りとアクティブでした。92歳で亡くなりましたが、足腰は最後まで丈夫で、人生を謳歌していました。

━━身近にお手本がいらっしゃるんですね。

落合 同じものを食べて、同じ生活空間にいても、やっぱり運動習慣の差でこんなに違うものかって思います。健康はお金では買えませんよね。その意味でも本当に皆さんにお勧めしたいと思います。

━━60歳前後のなかには、関節の痛みなどから運動に踏み切れない人もいるようです。

落合 私も最初はひどい肩こりがきっかけでした。でも、原因は「身体を動かしていないこと」だったんだと気づきました。筋トレを始めた当初は、いきなり筋肉をつけようとは思っていませんでしたので、軽いラットプルダウンなどで「まずは肩や背中を動かせるようになる」ことだけをやっていました。

━━トレーニングを始める際に、まずは筋肉を増やそうと思いがちですが、ハードルを下げて、まずは”動かしやすい身体”を目指したのですね。筋トレで痛みや不調は出ませんでしたか。

落合 一時期、腰痛が出ましたが、原因を探るとやっぱり無理な体勢でやっていました。60歳にもなると身体のクセが強くなって、なかなか修正できない。性格も頑固ですけど身体も頑固で(笑)。でも、フォームを直したら自然と痛みも軽減したし、私の場合はあくまで趣味だから、絶対に無理はしません。

「やってみよう」がもたらした新しい出会いと成長

━━SNSで「年齢を重ねるごとに身体づくりが難しくなる」といった投稿をされていましたが、それはどういった思いからですか?

落合 私のような年代で、女性でトレーニングに取り組んでいる人の情報って、実はあまり多くないんです。だからこそ、「昨年と同じトレーニング方法でいいのかな?」「もっと自分に合ったやり方があるのでは?」と、常に自分で考えて試行錯誤しています。筋肉は努力すれば育てられるけれど、内臓など身体の内部は確実に年齢を重ねていくので、予想外の変化も起こり得ます。だからこそ、これからも自分の身体と丁寧に向き合いながら、トレーニングも競技も無理なく続けていきたいと思っています。

━━この先の人生のビジョンについてもぜひ教えてください。

落合 競技をいつまで続けるかは、正直まだ決めていません。でも、トレーニングはこれからもずっと、自分の人生に必要なものとして続けていくつもりです。これまで仕事を通じて、多くの仲間や学びを得てきました。そして、60歳を迎えて始めたトレーニングや競技で、まったく異なる世界の人たちと出会い、新しい刺激や価値観に触れることができた。それがすごく面白いんです。大会では20代の選手と同じステージに立つこともありますが、彼女たちの話を聞くのは楽しいし、エネルギーをもらえる。そして、年齢に関係なく、自分もまた成長していると感じられる。そんな環境にいられることが、今はすごく幸せですね。

━━最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

落合 私自身、ビキニ競技なんて「せいぜい40代までの世界」だと思っていました。実際、最初に出場を勧められたときも、「できません」とお断りしたんです。でも、もしあのとき本当に断っていたら、今の私はいません。迷いながらも「とりあえず、やってみよう」と一歩踏み出してみたら、思いがけないほど充実した毎日が待っていました。振り返ってみると、仕事でも「それ無茶じゃない?」と周囲に言われながらも、何度も挑戦してきました。結果よりも、挑戦している時間そのものが、自分を強くしてくれるんだと思います。だから今も、同じ気持ちでいます。大切なのは、まず挑戦すること。やってみないと、景色は変わりません。うまくいかなかったら、そのときに修正すればいい。挑戦に”遅すぎる”なんてことは、ありません。

わずか2年でオールジャパン表彰台へ
落合玲子選手の脚、お尻強化トレーニング
atトレーニングセンターサンプレイ

週5回トレーニングのうち、週2回、サンプレイで代表の近藤賢司氏のパーソナルトレーニングを受けている落合さん。今強化している脚、お尻トレーニングの模様をお届けします。

❶レッグエクステンション

15回×3セット
スクワット前のウォーミングアップとしておこなう。

❷レッグカール

15回×3セット
スクワット前のウォーミングアップとしておこなう。

❸バーベルスクワット

メインセット60㎏×10回、3セット、最後に50㎏×10回
足首が硬いとのことで、かかとの下に板を置き、かかとを少し上げた状態で動作する。骨盤が安定した状態でしゃがめるように工夫している。

❹ダンベルワイドスクワット

20回×3セット
バーベルスクワットと同じように、板を踏みかかとを上げた状態で動作をする。ダンベルが床につくまで、丁寧にしゃがむ。

❺レッグカールとルーマニアンデッドリフトのコンパウンドセット

15回×3セットずつ
お尻下部のたるみに効果的。2種目を続けて行うことで、ハムストリングの収縮とストレッチを交互にかけることができる。

 

❻レッグプレス

20回×3セット
背もたれにパッドをはさみ可動域アップ。負荷の位置が調整できるマシンで初動負荷寄りで行う。

❼ドンキーキック

左右50回(徒手抵抗)
初めて取り入れた種目。近藤トレーナーの手の負荷に耐えながら動作する。

おちあい・れいこ
1961年11月27日生まれ。東京都出身。30年以上外資系金融でマーケット関係の業務に従事。2021年の後半、60歳の新たな挑戦としてトレーニングを開始し、2022年10月マッスルゲート東京・レギンスカテゴリーに出場。2023年6月JBBF山梨オープン大会でビキニフィットネスデビューし優勝。2024年JBBFオールジャパンマスターズフィットネスチャンピオンシップス・ビキニフィットネス50歳以上級4位。同年オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス158㎝以下級13位と一般クラスでも活躍。

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取材・文:藤村幸代 撮影:中原義史、中島康介(大会写真)写真提供:落合玲子 Web構成:中村聡美

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