『オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2026』ビキニフィットネスでの敗戦から6日後。安井友梨は京都で『オールジャパンウィメンズフィットモデルチャンピオンシップス2026』に出場した。「また負けるのではないか」という恐怖の中で安井は優勝し、オーバーオールも制した。
[月刊ボディビルディング2026年11月号より]

2026年オールジャパンウィメンズフィットモデル163cm超級&オーバーオール優勝の安井友梨
ビキニフィットネスでの敗戦
2026年8月9日、三重県・イスのサンケイホール鈴鹿で行われた『オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2026』ビキニフィットネス163cm超級。2015年第2回大会で初優勝してから負けなし、10連覇中の安井友梨が敗れ、11連覇を逃した。「2位 安井友梨」と発表された瞬間、安井は新女王・西村裕子へ「おめでとうございます」と笑顔で声をかけ、大会直後のバックステージでは気丈に、これまで支えてくれた関係者への感謝を述べた。
しかし、10年にわたって優勝し続け、日本のビキニフィットネスの歴史そのものとも言えるほど中心的な存在として活躍してきた安井にとって、敗戦のショックがどれほど大きいものだったのか、想像に難くない。実際に、大会後、更新頻度の高いSNSは沈黙した。安井は、敗戦からわずか6日間で立ち直ることができたのだろうか。
たくさんの励ましを力に変えて
ビキニフィットネスでの敗戦以降、滞っていたSNSは2日後に再開した。つづられていたのはまわりへの感謝の言葉だった。「皆様のあたたかさ、そのお気持ちに対する感謝の気持ちを忘れずに、初心に帰り、目の前の1レップに魂を込めて全力でトレーニングにぶつけていきます」。
精神的につらい中でも、投稿しないわけにはいかなかった。なぜなら、2024年に行われた『IFBB世界フィットネス選手権』マスターズビキニで悲願の金メダルを獲った時よりも、11連覇が途絶えた今回の方が、たくさんのメッセージが届いたからだ。「世界一になったときよりもみなさんに励ましていただいて、力をいただきました」
暗闇の中の6日間
『オールジャパンウィメンズフィットモデルチャンピオンシップス』まで夜も眠れない日々。大会までわずか6日しかなく、時間がない中で、「できることはなんでもやろう」と死に物狂いでもがいていた。6日間を振り返る安井から出てくる言葉は苦しみにあふれていた。
「食事の味も感じない。目の前が真っ暗。ステージが恐怖に変わり、また負けてしまうのではないかと、どうしようもなく怖かった」
大会を棄権しようとも考えていた。
「6日間でどういうふうに気持ちを戻していけばいいのか全く分かりませんでした。自分はステージに上がることはできない、ステージに上がる資格がないと思っていました。何とかステージに立てるだろうか、と思えたのは大会当日の朝のことでした」
安井は大会前日から京都入りし、大会当日の朝、東本願寺を散歩した。東本願寺では朝7時から晨朝法要(じんじょうほうよう)、いわゆる朝のお勤めが行われている。お勤めの後は15分ほどの法話。「自分を幸せにすることが、すべてのご先祖様を幸せにできます。自分自身のことを一番に信じてあげましょうね」。先祖供養の話に出てきたこの言葉に、安井は導かれたように感じた。

フィットモデルのステージでポージングする安井友梨
「世界一に向けた挑戦のチャンスをグラチャンでつかんで、這い上がるところをお見せできたらと思います」
大会、フィットモデル163cm超級。ラウンド1ではブルーのワンピーススイムスーツ、ラウンド2ではブルーのイブニングドレスで登場した安井。結果は、2位に14点差を付けての完勝で階級優勝、オーバーオールも制し、涙を流した。
「大会は毎回、皆様に一年の成長をお見せしたい、どんなステージにしようかと楽しみなものでした。そのステージが、今までとは全く違うものになり、ポージングも手が震え、ものすごい緊張感で恐怖でした」
大会直後、安井はこう振り返った。
「ステージで並んでいるとき、どういう顔で立てばいいかわからず、不安でした。今日は今までの積み重ねが無意識に出ていただけで、とてもステージに立てる状況ではなかったです。結果をいただけたこと自体が驚きで、本当にありがとうございます」。
笑顔でフィットモデルのステージに立っていた安井だったが、心中は不安でいっぱいだった。
「6日間、暗い扉の中で、一筋でも光が射すのならばと、もがいてきました。今回ステージに立たせていただいたことが本当に幸せで、私はフィットモデルに救われました。棄権せず、チャレンジして本当によかったと思います」
安井はビキニフィットネスでの敗戦直後、こんな言葉も残している。
「失敗からしか学べないものがあります。失敗を糧として、自分の力に変え、ここから立ち上がります。世界一に向けた挑戦のチャンスをグラチャンでつかんで、這い上がるところをお見せできたらと思います」
フィットモデルで優勝し、安井は立ち上がった。さて、2週間後に迫ったグランドチャンピオンシップスのビキニフィットネスでは、這い上がるところを目撃できるだろうか。
PROFILE|安井友梨(やすい・ゆり)
1984年1月13日生まれ/42歳/愛知県出身/身長172cm、体重52kg(オン)・60kg(オフ)/主な戦績 2015〜25年オールジャパンビキニフィットネス163cm超級優勝。2019〜2025年グランドチャンピオンシップスビキニフィットネス6連覇。2018年アジアビキニフィットネス優勝。2023年アーノルドヨーロッパフィットモデル優勝。2023年フィットモデルワールドカップ優勝。2024年世界ビキニフィットネス選手権40〜44歳優勝。2026年オールジャパンビキニフィットネス163cm超級2位。2026年オールジャパンフィットモデル163cm超級&オーバーオール優勝
執筆者:あまのともこ
主に『FITNESS LOVE』で執筆中。2021年~2025年JBBF登録選手。JBBF京都府オープン大会ビキニフィットネス(身長別)3位。マッスルゲート四国大会ビキニフィットネス2位。
取材・文:あまのともこ 撮影:中原義史











