昨年の日本クラス別選手権では4位に終わり、その結果には「悔しさしかなかった」という。「より重く、より多く、より正しく」という自身の原点に立ち返り、筋肉量を増して迎えた今大会で80kg以下級を制覇。トップ選手たちとの距離が縮まった手応えと、国内外の頂点を見据える思いを語った。
[月刊ボディビルディング2026年11月号より]

2026年日本クラス別ボディビル選手権80kg以下級優勝の井上貴文
――まずはこのたびの結果を、どのように受け止めていますか。
井上 今シーズン、私のなかで確実に勝たなければいけないと思っていた試合が、日本クラシックボディビルと、この日本クラス別選手権だったんです。無事に優勝することができ、ほっとしています。
――昨年は須山翔太郎選手、喜納穂高選手、嶋田慶太選手に次いでの4位という結果に終わりました。試合後には悔しさを口にしていました。
井上 私は勝つつもりで臨んでいたので、(ファイナリストの選手たちと)並んで見てもらえる場所までできたという実感はあったものの、結果には悔しさしか感じなかったです。ただ正直なところ、優勝した須山さんには「すごいな」という印象を抱きました。昨年の段階ではまだ追いつけていない部分があったのは事実だと思います。ですが、追いつけないことはない、とも感じました。
――具体的には、それはどういった部分ですか。
井上 ステージ上で比較された際の筋肉量です。そこを追いつくために、今シーズンに向けてのトレーニングでは、もともと私が大事にしてきた「より重く、より多く、より正しく」というところに立ち返りました。
――原点回帰するきっかけになったんですね。
井上 例えば、それまで120kgで組んでいたベンチプレスを140kgで、160kgで組んでいたスクワットを180kgで行うといった感じです。デッドリフトも、床引きでしっかりと行うようにしました。
「扱えるようになっていくにしたがって重量を上げていく」ではなく、「先に重量を設定して、それをどう扱うか」という考え方で取り組みました。毎回いいトレーニングができていますし、実際にサイズも増しました。
――いいトレーニングですか。それは何よりですね。
井上 はい、そう思います。やはり何事もミクロでとらえてしまうと、どうしても理屈が先行する考え方に陥りがちになります。そうではなく、「まずはやってみよう」という気持ちでトレーニングと向き合えています。今は本当の意味でボディビルが好きになり、目指しているところにつながる階段の1段目に足をかけているような感覚があります。
――その「目指しているところ」というのは、日本選手権のファイナリストでしょうか。
井上 日本選手権のファイナリストになることが、私がボディビルをやっている上での本懐です。一方で、国際大会にチャレンジして表彰される場所まで行きたいという強い思いもあるんです。その二軸で取り組んでいきたいです。
ただ、私はこれまで試合数が多くなると、体調を崩してしまうことが多かった。今年は日本選手権は見送って、世界選手権に照準を合わせていきたいと思っています。
――日本選手権には、来年以降改めて挑戦するということですね。
井上 私はまだ10年くらいは競技を続けられると思っています。今も筋肉量は増えていますし、扱える重量も伸びています。トレーニングへの理解も深まり、感覚的にもすごく良くなっています。
失礼のない範囲で言うと、自分よりも上位の選手を見て驚かなくなってきたんです。以前は、圧倒されるような感覚がありました。それが今は、少しずつ薄れてきています。私自身も大きくなり、身体の大きさに対する空間把握の感覚が変わってきたのかもしれません。
――トップ選手たちとの距離が縮まっているという手応えもあるのですね。
井上 私はどの大会でも、目指すべきは1位だと考えています。世界選手権でも、アジア選手権でも、そして日本選手権でも、1位を目指していきます。
PROFILE|井上貴文(いのうえ・たかふみ)
1991年10月10日生まれ/35歳/福岡県出身/身長175cm/体重78kg(オン)、90kg(オフ)/パーソナルトレーナー/2024年IFBB男子ワールドカップクラシックボディビルオーバーオール優勝。2025、26年日本クラシックボディビル選手権オーバーオール2連覇。2025年日本クラス別ボディビル選手権80kg以下級4位。2026年日本クラス別ボディビル選手権80kg以下級優勝
取材・文:藤本かずまさ 撮影:中原義史











