ボディコンテストにおいて、年々競技人口が増えているメンズフィジーク。引き締まった肉体と、サーフパンツや水着などを含めたトータルでのかっこよさや美しさを競うフィットネス競技のカテゴリーのひとつだ。2025年4月6日(日)の『マッスルゲート大阪』でもメンズフィジークは非常にハイレベルな戦いとなった。その中でも176cm超級・新人の部と一般の部にダブルエントリーし、どちらも4位に入賞したのが柏木佑祈(かしわぎ・ゆうき/28)さんだ。初挑戦ながら堂々としたポージング、引き締まった身体と落ち着いた立ち居振る舞いが印象的だった。
爽やかな好青年フィジーク選手に見える柏木さんだが、職業は現役の外科医。白衣を着て手術室に立つかたわら、日々のトレーニングと食事管理を積み重ね、フィジーク初挑戦に至ったという。医師としての観点からのボディメイクを伺っていく。
柏木さんは医学生のころからトレーニングを行っており、「頑張った分だけ自分の身体が変わっていく感覚が楽しかった」と語る。解剖学の知識を日常的に扱う外科医という立場も、ボディメイクにおいて大きな武器になったという。
「筋肉がどこからどこに付いているのかという、起始・停止や、関節への負担を考えたトレーニングを意識しています。ただやみくもにトレーニングをするのではなく、人体の構造を理解していることが、怪我の予防になりますし、効率的な身体作りにつながっていると思います」
医師という職業は、不規則な勤務時間や突発的な対応がつきもの。だからこそ、柏木さんはトレーニングの時間を朝に固定するようにした。
「夜に予定が伸びることが多いですね。なのでできるだけ朝の時間を自分の時間として確保することで、無理なく継続できています。また、会食の頻度も減らすように心がけています。次第に出会う人も変わっていき、筋トレをしているアクティブで前向きな人たちと過ごすようになり、限られた人と密な時間を共有することが増えました」
忙しい日々の中でも、ボディメイクをするために合理的に栄養を摂取することを心がけているという柏木さん。
「普段の食事で意識しているのは、栄養バランスと調理の時短ですね。その両方を叶えるメニューとして、炊き込みご飯が定番です。炊飯器にお米、鶏胸肉や銀鮭、キノコ類を一緒に入れて炊くだけ。まとめて作れて、小分けにすれば忙しい日も安心です」
柏木さんは減量期でも炭水化物を極端に制限せず、「お米は身体を動かすエネルギー源」として重視。必要な栄養はしっかり摂ることを推奨している。
ボディメイクにおいて大切な要素は「トレーニング・栄養・休養」の3つ。その中でも、日本人に最も不足しがちな睡眠にも注目している。
「いい身体作りは、いい生活習慣からです。筋トレや食事以外にも、睡眠の質や量を整えることが、トレーニングの効率にもつながっていると感じます。日々の体調やパフォーマンスにも直結する睡眠を見直すことが、遠回りなようで近道です」
マッスルゲート大阪では、メンズフィジークで真の日本一を決める大会で3連覇している伊吹主税さんによるポージングセミナーも受講。姿勢や見せ方の重要性、そして『審査員にどう見られるか』という視点を学んだ。これからも、医師としての知識に競技の知識を学んでいき、『フィジーク外科医』として、さらに高みを目指していく。
「医師として感じるのは、運動は誰でも今すぐ始められる最高の趣味であり最高の処方箋だということです。20分の軽い散歩でも、生活習慣病の予防、睡眠の改善、ストレスの軽減、うつ病や不安障害の症状緩和まで、幅広い効果があると言われています。まずは朝の散歩からでも、始めてみませんか?」
今後もボディコンテストに挑戦するという、フィジーク外科医の柏木さんの活躍が楽しみだ。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材:柳瀬康宏 撮影:上村倫代
執筆者:柳瀬康宏
『IRONMAN』『月刊ボディビルディング』『FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。NSCA認定パーソナルトレーナー,ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、NASM認定コレクティブエクササイズスペシャリスト。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動。2019年より毎年ボディコンテストに出場中。