昨年、日本で開催された世界フィットネス選手権のビキニフィットネス部門では、16歳から18歳の海外ジュニア選手が活躍を見せた。しかし日本では「成長期にボディメイクはよくない」「高校生がビキニでステージに立つのは恥ずかしい」といった声が根強く、挑戦する若者はまだ少ない。そんな固定観念に一石を投じるのが、静岡県の高校1年生・片山あうらさん(かたやま・あうら/16)さんだ。
【写真】当時15歳・片山あうらさん、初めてのビキニフィットネス
初挑戦で2位、全国大会への飛躍
あうらさんが初めてステージに立ったのは、5月に行われた「マッスルゲート浜松大会」。ビキニフィットネス一般の部で2位を獲得し、堂々とした姿で観客を魅了した。スポーツ経験はなかったが、母・くるみさんからの「やってみたら?」という勧めが背中を押した。
8月には「日本ジュニアフィットネス選手権」に出場。お正月から続いた減量生活は体重停滞やプレッシャーで「やめたい」と思う瞬間もあったが、憧れの選手と同じ舞台に立つ喜びが勝った。
「番号を呼ばれた瞬間から“次はこうしよう”と考えていました」と振り返る姿は、すでにアスリートそのものだ。
支える母と、高校生活との両立

左から母のくるみさん、あうらさん
母・くるみさんもビキニフィットネス競技経験者。娘の挑戦を喜びつつ、成長期特有のリスクに配慮した。
「体重停滞や生理不順があったときは脂質を上げたり食事内容を調整し、健康を最優先しました」
親子二人三脚で臨んだ日々は、家庭の協力なくして成り立たなかった。
一方で高校生活との両立は簡単ではない。入学直後の減量期には友人との外食を断らざるを得ず、気を遣わせる場面もあったという。それでも「理解して応援してくれた」と感謝する。
努力の成果は見た目だけでなく心も変えた。
「服が似合うようになったり、友だちから“きれいになったね”と言われるのがうれしいです」
「楽しむことが一番」──16歳のメッセージ

左からあうらさん、母のくるみさん
片山さんは同世代に向けて「競技は日常生活の延長。勉強や生活を犠牲にしてまでやるものではなく、楽しむことが大切」と語る。
筋トレ自体についても「今は楽しい気持ちの方が大きい」と前向きだ。
将来は「お母さんと一緒に大会に出てみたい」という夢もある。
海外では10代半ばからビキニフィットネス競技に挑戦する国もあるが、日本ではなかなか広まっていない。だが片山さんの姿は、正しい知識とサポートがあれば成長期のボディメイクは健全であり、自己肯定感を高めることを示していく可能性を秘めている。
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取材・文:FITNESS LOVE編集部 撮影:上村倫代 写真提供:片山くるみ