「家族が起きる前の早朝しか、自分の時間はないんです」
そう話すのは、2月28日に開催された『マッスルゲート大阪高槻大会』ウーマンズフィジークに出場した加藤実佐子(かとう・みさこ/50代)さんだ。加藤さんが舞台に登場すると、「え!?すごい身体!!」「女性でもこんなカッコ良い身体になれるの!?」という声とともに歓声が上がった。
加藤さんは会社員として技術系専門職に就きながら、家庭を優先し、そのうえで早朝の限られた時間だけを使って身体をつくってきた。そんな加藤さんのトレーニング歴は8年になり、ダイエット目的で始めた筋トレは、いまや国内外のコンテストで結果を残すまでになった。
加藤さんは『NABBA(全米アマチュアボディビル協会)』の国際大会でも実績を残しており、韓国で開催された大会ではMs.Classic Modelのプロ戦で日本人初のオーバーオール優勝も果たしている。
「垢抜けたね」のひと言がうれしかった
加藤さんが身体づくりを始めたきっかけは、ボディコンテストではなくダイエットだった。
「最初は本当に、痩せたいなと思って始めただけなんです。まさか自分が大会に出るようになるとは、そのときは全然思っていませんでした。ただそのときに通っていたジムのトレーナーさんが大会に出場されていて、勧めてもらったんです」
そこからトレーニングを重ねるうちに、見た目も少しずつ変わっていった。周囲の反応で印象に残っている言葉を聞くと、加藤さんはこう振り返った。
「ママ友から『垢抜けたね』って言われたのが、すごく印象に残っています。体重がどうこうというより、全体の雰囲気が変わったのかなと思って、うれしかったです」
筋トレによる変化は、単に体重が減った、身体が締まったというだけではない。姿勢や表情、服の着こなしまで含めて、人の印象そのものを変えることがある。加藤さんにとっても、そのひと言は、自分の積み重ねが外見にも表れていたことを実感した瞬間だったのだろう。
家庭も仕事もあるからこそ、早朝だけに絞る
加藤さんの生活の中で、優先順位ははっきりしている。
「家庭、仕事、トレーニング。その順番です。だから、トレーニングで家族に負担をかけることはしたくないと思っています。トレーニングができるのは、子どもたちが起きる前の早朝だけ。朝は4時起きですね。そこから家のことをしてからトレーニングをすると決めているので、それ以外の時間に無理してねじ込むことはあまりないです。家族が寝ている間にやっているので、私がどれくらいトレーニングしているのか、家族はあまり認識していないと思います(笑)。ただ無理はせずに、できる範囲で、そのときできることをやるようにしています。『今日はこれしかできない!』という日があっても、それで良いと思っています」
普段の食事で意識していることは、とてもシンプルだ。
「脂質を取りすぎないようにしています。実際によく食べているのは、鶏胸肉、キャベツ、ほうれん草、バナナ、納豆、卵、ライスケーキなど。ほぼ毎日このメニューですね。結局、そういうシンプルなものが一番続けやすいと思います」
身体づくりによって変わったのは、見た目だけではない。
「趣味で始めた筋トレでしたが、大人になってから新しいコミュニティができたのは大きかったです。仕事以外の場所で人とつながれるのは、すごくありがたいことだと思います」
大人になると、新しい仲間ができる機会はどうしても減っていく。だが筋トレやコンテストの世界には、年齢や職業の垣根なくつながれる面白さがある。加藤さんにとっても、それは大きな財産になっているのだろう。
「筋トレは頑張り過ぎないことが大切です。頑張らなきゃ、と思いすぎると続かなくなることもあるので、無理をせず、自分ができる範囲でやっていけば良いと思います」
華やかな実績の裏側にあったのは、派手な方法ではなく、生活に合った続け方だった。家庭を大切にし、仕事もこなし、そのうえで早朝の短い時間を積み重ねる。
「完璧じゃなくても、やれることをやるだけです」
その言葉通りの歩みが、50代となったいまも加藤さんをステージへと押し上げている。必要なのは、無理を重ねることではなく、続けられる形を見つけることなのだろう。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材・文:柳瀬康宏 写真撮影:岡暁
『月刊ボディビルディング』『IRONMAN』FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。保有資格は、NSCA-CPT,NSCA-CSCS,NASM-CES,BESJピラティスマット、リフォーマー。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動もしており、2019年よりJBBF、マッスルゲート、サマースタイルアワードなどのボディコンテストに毎年挑戦している。











