「やる気になれば痩せられる」。ダイエッターの多くが言いがちな台詞だが、過酷な減量を必要とする競技の世界でも本当にやる気のみが結果を左右する選手がいる。
「いきなりスイッチが入るんです。そうするとどんな暴食も勝手におさまって、トレーニングの質も上がって身体がみるみる絞れていくんですよ」
そう語る八賀明日香(はちが・あすか)さんはサマー・スタイル・アワードで活躍中のビキニ選手であり、地方戦では階級無差別での総合優勝の戦績も持つ。現在は12月8日(日)のFINAL(決勝大会)に向けて最後の追い込み中だが、そのボディメイクスタイルは非常に個性的だ。
「毎年、大会に出るか出ないかはスイッチが入るまで自分でも分かりません。減量の時期になってもスイッチが入らないと、諦めてそのままということもありました」
今年も減量の時期に入ってさらに1カ月で10kgの体重増を起こし、仲間からは半ば見放された言葉をかけられていたという。
「ある日、突然『よし、やるか』という気持ちになりました。そうしたら1カ月で9kg体重が減って、仕上がりまであと1kgまでもう来ました。トレーニングは大嫌いなんですが、理想の自分になるためにオンでもオフでも毎日欠かさず1時間半以上行ってます。明らかに集中度が変わっています」
一旦切り替わると、今度は「勝つ」以外の思考がなくなるのだという。それでも、全ての根源は「テンションとやる気」しかないと語る。
「たとえば有酸素だと、たとえ大会直前で晴れていても今日は歩きたくないと思ったら絶対に歩きません。逆に、どんなに雨が降っていても今日は歩こうと思ったらフードを被って歩きます。トレーニングはライティングが一番盛れる場所と決めています。そうじゃないとテンションが上がらないので」
緻密なボディメイクプランが求められる世界でも独自の世界を保ち続ける八賀さんだが、その破天荒でも実績を残し続けるのはトレーニングへの異様ともいえる集中力の成せる技かもしれない。得意の背中はアタッチメントを全て使い尽くし、どの種目も潰れて動かなくなるまで行うのが恒例だ。
「今年は自分の下半身の形が気に入らなかったので、脚トレに注力しています。ハムストリングを集中的にやる日を作って、片手14kgずつのダンベルデッドリフトをメインに組んでみたら、いい感じに成長しています」
全国戦に向けては、優勝以外は見ていないという。「そろそろ東海帝王と呼ばれるのは飽きたので、日本帝王になりにいく」と強気の姿勢を見せた。
勝利への最短経路を走るための知識や方法論が先行しがちな競技界で、「したいからする」「やると決めたからやる」という動機を第一に持ち続けることは難しい。だが、実はトップに登る選手こそこういうシンプルな情熱が芯を支えている。熱中することは、時に緻密な計算を超えた規格外の成長をもたらすのかもしれない。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマー・スタイル・アワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
取材:にしかわ花 撮影:上村倫代
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用も行うマルチライター。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。
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