サマスタ選手 コンテスト

26歳・2児のママが「産後うつ状態」を乗り越え作り上げた曲線ボディ 学生時代からの体型コンプレックスを克服

「細い子しか履けないと思ってたブランドのSサイズのデニムが、スルッと履けたんです」

そう語るのは、パーソナルトレーナーとして働きながら、2児の母としても奮闘する伊藤紀子(いとう・のりこ/26)さんだ。

【写真】伊藤紀子さんの曲線ボディ美しいステージフォト

2021年と2022年に『サマースタイルアワード』のビューティーフィットネスモデルショート部門に出場し、今年6月には久しぶりにステージに復帰予定だ。仕事も育児、そしてボディコンテスト出場と一見するとパワフルな印象な伊藤さんだが、背景には産後の孤独、身体のコンプレックス、そして心の葛藤があった。

自信がないからこそ、筋トレで自分を変えたかった

初めてジムに入会したのは、19歳で長男を出産した直後。

「思春期からずっと自分の体型にコンプレックスがあったんです。いわゆる骨格ストレートで、食べたらその分太ってしまっていたので、周りの細い子と比べていつも『私だけ太って見える』って感じてました」

追い打ちをかけたのは、学生時代の何気ない言葉だった。

「学生のときに『太った?』と言ってくる男の子がいて、そのときは笑顔で誤魔化していたのですが、内心はあまり良く思っていなかったです。この経験でコンプレックスが加速したと思います」

さらに、出産後には産後うつのような状態に。

「初めての育児で必死でした。楽しそうな友達の投稿を見るのがつらくて、インスタグラムも消して、次第に誰にも会いたくなくなっていきました。気がついたら怒ったり泣いたり、自分で自分をコントロールできなくなってて……」

そんなときに伊藤さんを支えてくれたのが、ジムでの時間だった。

「妊娠出産を経て改めて体型の変化で焦りを感じ、自宅近くのジムに入会してトレーニングを始めました。YouTubeで筋トレのやり方を調べたり、モチベーションを上げるためにボディコンテストに出場しているようなキレイな人を見るようにしていました。自分の身体が変わっていくと、気持ちも少しずつ前向きになっていき、『どうせやるなら、私もいつかコンテスト出場までいきたい!』って火がつきました(笑)」

「次男の妊娠中から25kgくらい落としました」。74kgから49kgまで(身長160㎝)の驚異的なダイエットに、周囲は「痩せたね!」と声をかけてくれた。だが、伊藤さんが強く印象に残っているのは周りの反応ではなかった。

「正直、以前は周りの目をずっと気にしていたんです。でも、自分に少し自信がついてくると、不思議と気にならなくなって。反応をどう受け取るか、その自分の心の変化の方が大きかったです」

心の余裕は、家族や仕事にも良い影響を与え始めた。

「今は、自分の調子が悪いときって大抵、生活や食事が乱れているって気がついたんです。だからちょっと最近しんどいなって思ったら、自分を整える時間を意識して取るようにしてます」

パーソナルトレーナーという仕事と子育てとの両立も簡単ではないはずだが、「両立って感覚すらない」と笑う。

「元気に生活するためにトレーニングをしてる感覚なんです。だから頑張ってるって意識はあまりないです(笑)。1週間の予定をざっくり決めて、仕事・家事・トレーニングをパズルのピースみたいに組み合わせてます。夜中のトレーニングも昔はしてたけど、睡眠や自律神経が乱れるのを感じてやめました。今は家でもできるストレッチや自重トレを取り入れてます」

減量中やコンテスト前でも、伊藤さんの食事スタイルは極端な制限とは無縁だ。

「PFCだけでなく、リアルフードでの栄養補給を心がけてます。例えば酵素玄米、じゃこ、ごま、塩とスパイス、旬の野菜。食べたときに元気になるものを基準に選んでます」

例えば、ある日のメニューは、酵素玄米(じゃこ+ごま)、鮭、納豆、ズッキーニ、スナップエンドウ、トマトなど。

「好きなものしかないけど、全部栄養価が高くて調理も簡単。だから毎日続けられるんです」

フィットネスを通して人生に良い影響が出たという伊藤さんは「まず自分が満たされていないと、誰かにエネルギーは分けられない」という言葉を大切にしていると語る。

「完璧じゃなくていいんです。できることからで大丈夫。少しずつ、自分のペースで、健康的でハッピーな毎日を楽しんでほしいです。フィットネスって、身体を変えるだけじゃない。心も、人生も、変えてくれるんです」

今年の6月、再びコンテストのステージに立つ伊藤さん。その姿は、コンプレックスに悩む誰かの背中を押してくれるに違いない。

伊藤紀子さん

【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマー・スタイル・アワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。

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取材:柳瀬康宏 写真提供:伊藤紀子

執筆者:柳瀬康宏
『IRONMAN』『月刊ボディビルディング』『FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。NSCA認定パーソナルトレーナー,ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、NASM認定コレクティブエクササイズスペシャリスト。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動。2019年より毎年ボディコンテストに出場中。

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