「正しく食べて、正しく運動する。健康的に痩せるためには、これ以外に方法はないです」
そう力強く語るのは、研修医2年目の藤川真莉子(ふじかわ・まりこ/28)さん。藤川さんは今年、ボディコンテスト『サマースタイルアワード名古屋予選大会』に初挑戦。しなやかな筋肉をまとった女性美を競うビューティーフィットネスモデル部門で新人戦2位に輝いた。
医師としての知識を生かして自身で「正しいボディメイク」を実践
藤川さんがトレーニングを始めたのは22歳の秋。医学部で人体の仕組みを学ぶなかで、巷の無謀なダイエットや怪しげな痩身法への疑問を強めたことがきっかけだった。また、生活習慣病で若くして亡くなる患者を目にすることも健康への意識を強めたという。
「正しいボディメイクは筋トレを行っている人たちの栄養管理に詰まっていると感じ、自分自身での実践を決意しました。ボディコンテストへの挑戦は、『食事と運動を完全にコントロールしたら人体はどこまで変わるのか』を試したいという好奇心からです」
糖質と脳の関係に気づき
藤川さんは、理論通りのPFC(たんぱく質・脂質・炭水化物)バランスを徹底するなかで興味深い発見をした。
「摂取カロリーが消費カロリーより少なければ少ないほど痩せる、というのは必ずしもあてはまらないんです。特に炭水化物を極端に減らしたときに、体重の停滞が顕著に表れました。脳は糖質をエネルギー源とするので、不足するとストレスが生じ、痩せにくくなるのではと仮説を立て、糖質量の調整をしました」
特に頭脳労働が多い職種では、脳に必要な糖質量が増える可能性があるとし、「自分の職種に合わせた糖質量を体感で把握することが大切」と話す。
トレーニングでは、昨年夏にコンテスト出場を決意後、健康維持から「ステージ映えする筋肉の造形」へと目標をシフト。
「背中なら広背筋や脊柱起立筋から、大円筋や小円筋にアプローチする種目に変えました。また、効率的な運動だと感じたので懸垂も取り入れました。最初はぶら下がるだけだったのが、補助なしで12回を挙げられるようになりました」
こうした努力で、以前より引き締まったアウトラインが生まれたという。
医業と筋トレの両立、その先に
研修医の多忙な生活とボディメイクの両立は簡単ではない。早朝に勉強し、6:50に出勤、7:30には回診という目の回るような勤務後にジムへ。
「周囲からは『大変だね』とよく言われましたが、減量に関してはもともと食べる時間があまりなく動き回っているため、空腹が苦にならなかったです」
増加したジム通いの習慣化には工夫を凝らした。
「職場の異動に合わせて、ジムの近くに住まいを選び、毎日通える環境を整えました。筋肉は動かさないと分解されやすく、全身の筋量を残しながら痩せるために毎日鍛えることを前提としてスケジュールを組みました」
こうして迎えた初のステージでは、学生時代の『ミス・ジャパン』出場経験が役立ったという。
「舞台に立った経験があるということが緊張を和らげてくれました。ひさしぶりのスポットライトを浴びて自己表現する場は、普段の地道な仕事とは対極ということもあり、とても楽しかったです。ただ、2位に終わったのは悔しいのでリベンジしたいです」
藤川さんの最終目標は、プロの競技者と医者を両立し、日本一になることだ。
「日本一の人が見る景色を見てみたいという、これも好奇心からです(笑)。来年からは研修期間を終えて専攻医となるため、さらに過酷なスケジュールになりますが、そのときに応じて臨機応変に打開策を見つけていきたいです」
エネルギーに満ちた精神は、どんなに困難な環境でも可能性を見つけ出す。藤川さんの飽くなき挑戦心と実行力は、ルーティンに忙殺されがちな心にもうひとふんばりの発破をかけてくれる。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマースタイルアワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
取材:にしかわ花 撮影:上村倫代
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーとエクサイズでボディメイクに奮闘している。
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