ボディメイク競技は、筋肉量や絞り込みを競う性質上、露出度の高い衣装が特徴だ。フィットネス文化の広がりとともに人気が高まっているが、地域や年齢層によっては理解を得にくいのが現状である。
「『40歳を超えて人前でお尻を丸出しにするなんて恥ずかしい』と出場し始めたころから、家族に言われていました」
そう語るのは、ボディコンテスト『サマースタイルアワード』の2024年決勝大会で3位の実績を持つ渡邉貴美(わたなべ・きみ/48)さん。9月20日(土)に開催された『2025東海帝王予選大会』では、年齢別・身長別でダブル優勝を飾るなど、輝かしい戦績を重ねている。
渡邉さんは自身の活躍や生き方を通じて、従来の価値観に縛られない自由な生き方を広めたいと願う。
上京とコロナ禍での転機
「名古屋は地元で完結する人生を送る人も多く、安定志向がとても根強いです。上京を考えた際も、『今さら東京に出てどうするの?』と心配されました。でも、自分の人生だからやりたいことに挑戦したい、さまざまな可能性を試したいと決意しました」
32歳で名古屋から上京した渡邉さん。現在は金融企業に勤めながら、フリーランスのトレーナー兼セラピストとして活躍の幅を広げている。
「コロナ禍でトレーニングに出合い、身体の構造や栄養学の知識を増やしていくにつれて、今まで自分の身体をなんて粗末に扱ってきたんだろうと人生を振り返りました」
40歳半ばからのボディメイクだったが、「それは伸びしろ」と前向きに捉えた。日常生活を一変させ、移動は徒歩やシェアサイクルを活用。雨の日でもカッパを着て自転車通勤を貫いた。外食と飲酒の毎日からPFC管理の食事に切り替えた結果、体重49.9kgだった身体は、大会出場時には43kgにまで変化した。ストイックな自己管理が大会での活躍を支える。
家族の初観戦 異なる価値観結ぶ、新たな希望
「コンテストを通じて、勤め人だけをしていたころとは全く違う世界観を持つ人たちにたくさん出会えました」
コンテスト出場を機にトレーナーの資格である『NSCA-CPT』を取得し、トレーニングの知識を深めるとともに、整体を学びトレーナー兼セラピストの副業にも生かしている。また、雑誌『Tarzan』への掲載をきっかけに格闘技関係者と交流が生まれ、現在の恋人でありトレーニングパートナーでもある総合格闘家との出会いもあった。
「トレーニングを通じて、人生が全く予測していなかった刺激にあふれるものになっています」
今年、地元名古屋で開催された大会に家族を招待。渡邉さんの破天荒な生き方に難色を示していた家族も、ステージで輝く姿を見て「いいね」と初めて褒めてくれたという。
「そうは言ってくれたものの、内心ではどうだろう(笑)。でも、これからは自分の生き方について、家族ともっと話してみようと思う機会になりました」
40歳以上の世代は、「安定した仕事、早い結婚、子育てが女性の幸せ」とされた旧時代と、個人の自由や多様性が尊重される現代の狭間を生きる。渡邉さんの挑戦的なライフスタイルは、社会が求める自分と自分がなりたい自分との間で悩む誰かの希望となるだろう。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマースタイルアワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
取材:にしかわ花 撮影:上村倫代
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』『Womans'SHAPE』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーとエクサイズでボディメイクに奮闘している。
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