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“弱点克服 ”の鍵はコンディショニングにあった!ボディビル選手権3位の刈川啓志郎が伝えたい「身体を育てる前に、整えることの大切さ」

「強い部位ばかりが育つ身体には、理由がある──」2024年日本男子ボディビル選手権3位の刈川啓志郎が語る、“弱点克服 ”の鍵はコンディショニングにあった。自身の猫背や扁平足と向き合いながら、マッサージガンとナボソニューロボールを使った独自のアプローチで、全身のバランスを整えてきた日々とは。若い選手にこそ伝えたい、「身体を育てる前に、整えることの大切さ」。

取材・文:舟橋位於 Web構成:中村聡美

刈川啓志郎
2024年日本男子ボディビル選手権では3位入賞。初出場で表彰台に立つという快挙を成し遂げた(撮影:IRONMAN編集部)

コンディショニングとの出合いと重要さへの気づき

コンディショニングについて知り、自分のトレーニングの中に取り入れ始めたのは2023年です。その年の学生大会に出場した後、鈴木雅さんのコーチングを受けるようになり、その中でコンディショニングについても指導していただきました。初めてボディビルコンテストに出場したのが2022年なので、キャリアのほぼ最初からコンディショニングに取り組んでいることになります。

自分の身体の特徴として、猫背であること、なで肩であること、扁平足であることを雅さんから指摘されました。そのため、それらを改善してより良い身体を作っていくことを狙ってコンディショニングを実施しています。

刈川流コンディショニンググッズ活用法

現在メインで使っているコンディショニンググッズは、マッサージガンとナボソニューロボールです。マッサージガンは以前から使っていて、ナボソは雅さんの勧めで使うようになりました。マッサージガンは主に、固まっている部位をほぐす意味で使っています。自分は身体が凝りやすいのですが、マッサージガンを使うことで、動きが良くなる感覚があります。振動によって血流が促進され、それによって不活性になっている部分を活性化する狙いもあります。ちょうど、マイナスの状態にあるところを0にリセットするようなイメージです。

愛用しているuFitのマッサージガン。固まっている部位をほぐす狙いと、振動によって血流が促進され、それによって不活性になっている部分を活性化する狙いがある(写真提供:刈川啓志郎)

ナボソニューロボールは、足部の感覚改善のために使います。
自分の身体は重心が前側にあり、そのために足底の前部で床を踏んでいました。そうすると、身体の前面にある筋肉には負荷がかかりやすい反面、背面の筋肉は刺激しづらくなります。その結果として、強みである大腿四頭筋の発達に対して、背面の筋肉の遅れを指摘される結果にもなりました。

この問題点を解決するために、ナボソをかかとの下に置いて、その上で真っすぐ立つというエクササイズを行っています。これにより、前側に偏り過ぎていた重心を正しい位置に戻すことを狙っていて、実際にその効果は身体の変化で感じつつあります。

1日のルーティンとコンディショニング

コンディショニングはトレーニング前にだけやるのではなく、1日の生活の中に落とし込んで継続することが重要です。

まずは起床後なのですが、ここでは、筋肉痛のない部位にマッサージガンを当ててほぐすことをします。基本的には全身くまなく当てていき、筋肉痛がある部分に関しては、彼女に徒手でマッサージをしてもらいます。また、ナボソニューロボールもこのタイミングで使います。足裏のいろいろな部分で踏んだり、かかとの下に置いてその上に立ったりします。前述の通り、重心を整えることがナボソを使う目的です。

続いてはジムに到着してからです。メインのトレーニングに入る前にもコンディショニングがあります。マットエリアで20分から30分、ベンチ等に移動してから15分くらい、さらには、各種目の合間にも必要な部位には時間を取ります。全て合わせると、トレーニング中のコンディショニングは40分から50分程度だと思います。トレーニングが終わって帰ってからやることも決まっていて、まずはシャワーを10分ほど浴びてリラックスします。それからまたナボソを踏んで重心を整えます。自分の場合は大腿四頭筋の外側に特に刺激が入りやすいので、そこを修正して、内側広筋や中間広筋にも刺激が行くようにするのが狙いです。徒手によるマッサージも彼女にお願いして実施します。

最後は寝る前です。このタイミングではグッズは使わず、徒手によるマッサージをまた彼女に行ってもらいます。副交感神経が優位な状態を作り、そのままリラックスして睡眠に入るのが理想です。

コンディショニングの実施で見えてきた身体の変化

これまでの自分のトレーニングでは、身体の機能のアンバランスゆえに、強い部分だけを使ってウエイトを挙げるような場面が見られました。大腿四頭筋を例にすると、外側広筋や大腿直筋はよく活動して刺激が入るものの、内側広筋や中間広筋にはあまり効かないといった具合です。自分のように、得意な部位はとことん強いが、苦手部位は弱点という悩みがある場合は、コンディショニングの実施が勧められます。

実際に雅さんの指導を受けてコンディショニングに取り組むようになって、全身の発達と完成度の上昇を感じています。これまで特定の部位に偏った動きをしていた部分が改善され、全体を上手く動かしながらトレーニングできている実感があります。トレーニングシーンでの悩みも減っていっているように感じますね。

鈴木雅さんに使用を勧められたNabosoのニューロボール。足で踏むことで前側に偏り過ぎていた重心を正しい位置に戻すことを狙っている(写真提供:刈川啓志郎)

一番大きな変化として挙げられるのが、肩の動きです。コンディショニングを行う前は、トレーニング動作中に肩関節が摩耗するような感じがして、全力でトレーニングできないことがありました。それがコンディショニングを取り入れてからは、動きの角度が改善された結果として、痛みなく動作できるようになりました。このように、特定の筋肉が活性化されていなかったり、そのために機能的な動きができていなかったりする場面では、コンディショニングが効いてくると思います。

若い選手にこそコンディショニングが必要

コンディショニングと聞くと、怪我の予防のためのプログラムと思われる方もいるかもしれません。もちろんその側面もあるのですが、これからさらに自分の身体を改善させたいと考える若い選手には、特にコンディショニングを勧めたいです。

どんな選手にも、得意な部位と苦手な部位があると思います。そのようなときに、「なぜこの部位は得意なのか」、「逆に、なぜ別の部位は苦手なのか」ということに意識を向けてもらいたいです。全身の中で特に発達する部位がある場合には、その部位が過剰使用されていることを疑ってみると良いです。その理由としては、姿勢に由来するものだったり、拮抗筋の不活性が原因だったりすることもあるでしょう。そういった問題をそのままにせず、改善のための一つの手段としてコンディショニングを取り入れられると良いのではないでしょうか。

過剰使用が起こっている部分は適度に抑えてあげ、逆に不活性な部分は刺激を入れてあげるようなことをすると、身体のアンバランスを修正していくことができます。そうすると、結果として怪我の防止もできるはずです。そういった意味では、ベテランであろうが若手であろうが、どのような人でもコンディショニングを取り入れる価値があると思います。

最後に、コンディショニングを行ったほうが良いかを判断する一つの方法を紹介します。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとされる、丸い円の中で男性が手を広げて直立しているイラストがあります。この姿勢をきれいに取ることができるかどうかを、ぜひご自身で試してみてください。

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとされる、丸い円の中で男性が手を広げて直立しているイラスト。この姿勢を取れるかどうかが刈川選手のコンディショニングを行った方が良いかを判断する一つの方法だという(写真:Shutterstock)

左右・前後に偏りなく真っすぐ立つためには、重心が正常な位置にある必要があります。また、その姿勢で両腕を挙上するためには、肩関節のコンディションが整っている必要があります。そして、姿勢を維持しながら直立し続けるためには、胸椎や腰椎の屈曲・伸展のバランスが取れていることも重要になります。

このポーズが自然に取れれば身体に問題はないですが、逆に難しいのであれば、一度見直す機会を作ってみると良いでしょう。

かりかわ・けいしろう
2001年12月27日生まれ。福岡県出身。身長175.5㎝ 、体重83㎏(オン)、96㎏(オフ)。学習院大学4年生。2022年マッスルゲート東京ベイ大会ボディビル75㎏超級優勝、2023年全日本学生ボディビル選手権優勝、2024年日本男子ボディビル選手権3位

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