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筋トレのやる気が起きない、重量が伸びない ボディビル世界王者・鈴木雅が教える食事・睡眠・呼吸の整え方

「リカバリーに目を向けたことで、身体をさらにレベルアップさせられた」と話すボディビル元世界王者の鈴木雅氏。「そもそもリカバリーの目的は?」「不足している兆候は?」。栄養や睡眠、呼吸で身体をうまく回復させるための考え方を聞いてみた。

文:舟橋位於 大会写真:中島康介 トレーニング写真:岡部みつる Web構成:中村聡美

リカバリーは広い視野で考える

ウエイトトレーニングをしていると、筋肉だけに目が向きがちです。短絡的なのは、「筋肉を休めよう」という考え方です。もちろん筋肉も疲れているんですけど、それと同時に脳も疲れているんです。疲れを感じ取る部分である中枢をどう回復するかを考えられると良いでしょう。

強度の高いトレーニングで中枢疲労が蓄積すると、セロトニンの分泌が増えて、眠気・倦怠感・やる気の低下などが引き起こされます。また、逆にドーパミンの産生量は低下し、モチベーションや集中力の低下につながります。

そうなってくると、「ただ休む」、「筋肉を休ませる」ということではなく、生活全体を見てあげることが大事になります。例えば、仕事や日常生活なども包括的に見てあげるということですね。

よく考えてみると、トレーニングは、1日のうち1〜3時間の出来事なんですね。1日が24時間あることを考えると、それ以外の部分の疲労も大きいはずですが、その部分を無視しがちな人もいるのが実際のところです。

現役時代のリカバリー

競技歴の晩年からリカバリーを意識するようになりました。最初は理論というよりは、しっかり身体を休ませることから始めました。トレーニングを休んで、睡眠の時間や質を改善させるというのがその例ですね。

当初は身体に対する考え方を疎かにしていて、「ガンガントレーニングして休んでおけば良いだろう」くらいにしか思っていませんでした。そこから身体についての知識が入るにつれて、リカバリーというものに目を向けられるようになりました。

疲労管理=フィットネスというように、トレーニングの量に回復が追いついていることが重要です。トレーニングの量を調整して管理する方法もありますが、リカバリーの質についても考えないといけないと思います。先ほども申し上げた睡眠時間や質、規則正しい生活、バランスの良い食事などを取り入れるということですね。

私の場合は、リカバリーに目を向けてから、トレーニングの強度を上げられるようになりました。以前は疲労がある中でトレーニングすることも多かったですが、リカバリー導入後は、そういう状況も減っていきました。

リカバリーはここを意識しよう

栄養 マイナスが出ないように

まずは栄養についてお話しします。栄養素が取れているならまず大事なのは食べるタイミングです。その次に重要なのは、毎日規則正しい時間に食事をすることです。もう一つは血糖値の安定です。血糖値が高まるとインスリンが分泌されて血糖値が安定するのですが、その際に自律神経にも影響があります。あとは栄養のバランスです。タンパク質・脂質・炭水化物の三大栄養素に加え、ビタミン・ミネラルも大事です。栄養不足は筋肉の回復力を落とします。トレーニングをすれば、普通の人よりも必要量が増えるので、その場合はサプリメントも使えると良いでしょう。
大切なのは、何かを取ってプラスにするという考えではなく、マイナスになっている部分を埋めてあげることです。

睡眠 短い睡眠はフォーム習得に悪

睡眠には、質と長さの2つの要素があります。質の良い深い睡眠が取れていると、身体や脳をしっかりと回復させることができます。また睡眠の長さは、記憶の形成に関わるとされています。我々ならば、トレーニングの動きを身体に定着させるタイミングだと言えるかもしれません。トレーニングでは、筋肉だけでなく関節も動きます。それら全ての情報を整理する意味でも、睡眠の長さは大切です。睡眠時間が短いと、覚えたはずの良い動きが元に戻ってしまうこともあるかもしれません。トレーニング効果を最大化するなら、注意しないといけないポイントと言えるでしょう。

自律神経 リカバリーで最も重要視

自律神経を整えることは、全ての回復の鍵になります。自律神経が乱れると、必要な場面で交感神経・副交感神経が働かなくなります。自律神経がうまく調整できなければ、それだけリカバリーに悪影響が出てしまうでしょう。

自律神経を無意識のうちにコントロールすることは難しいのですが、呼吸や姿勢に関するコンディショニングを介して、間接的にアプローチする方法はあります。

呼吸が浅く早い状態では、交感神経が優位になります。逆に、副交感神経が優位だと呼吸数は少なくなります。これを踏まえて、意図的に呼吸をゆっくり行い、換気量や呼吸数を整えることで、自律神経の調整が狙えます。

姿勢が悪いことも自律神経に影響します。どこかの筋肉が過緊張し、どこかが緩んでいるという状態だと、身体の特定の部位だけに負荷が乗りやすく疲れやすいです。そういった悪い姿勢が重なると、副交感神経の代表である迷走神経の働きが悪くなります。

姿勢を正すには呼吸も重要で、正しく腹圧をかけるためには横隔膜の動きがキーポイントになります。深い呼吸ができると横隔膜がしっかり動くようになり、それに応じて、姿勢に関わる脊柱の緊張を取ることにもつながります。姿勢が整えば、関節が正しい位置に来るようになり、筋肉の張力も一定に保たれやすくなります。

リカバリー不足の兆候に注意

身体は動くんだけど、集中力がいまいちないときは、リカバリー不足の可能性があります。やる気やモチベーションの不足も同じような意味ですね。自律神経の不調という意味では、睡眠が浅い、排せつ機能に不調がある、身体が冷えるなども当てはまると思います。

こういった症状が起こる原因としては、やはり睡眠がなかなか取れないことがあると思います。生活リズム的に長い睡眠時間の確保が難しいならば、睡眠の質を高めることを考えたいです。就寝1〜2時間前から部屋を暗くしたり、入浴は就寝の2時間前に行ったりなどが取り入れやすいでしょう。

あとは、トレーニングのやり過ぎもありますね。トレーニング量が多い、トレーニングを休めないなどで、細かく言えば、コンパウンド系種目が多いことなんかも原因になると思います。ガンガンやっている人の中には、スクワットだけで3バリエーションやって、そこにブルガリアンスクワットやルーマニアンデッドリフトも加えてなんてこともありそうですが、こういう場合は注意が必要です。コンテスト前ほど休めない人もいそうですが、休むのもトレーニングのうちだと思うと良いでしょう。無意識のうちにトレーニングをやること自体が目的になっている人は注意が必要です。あくまでも、総合的に筋肉を発達させることが目的なんだと見失わないようにしたいです。

逆に良いリカバリーができている人は、トレーニング中の悲壮感がないですね。減量中でも元気かつハードにトレーニングできていれば、リカバリーはうまくいっているのではないでしょうか。

リカバリーをうまく行うために

今回は、リカバリーで重要となる呼吸にアプローチするエクササイズを8種紹介します。ぜひ挑戦してみてください。

呼吸以外では、感覚入力もおすすめです。足部や手のひらの感覚入力を増やすグッズは有名ですが、あえて感覚器が少ない部分にもアプローチしてみてほしいです。例えば背中は感覚器が少ないのですが、それゆえに疲労感が出やすい部位でもあります。フォームローラーやマッサージガン等を用いて、圧や振動の刺激を入れると良いと思います。大事なのは、単にほぐすためにやるのではなく、感覚入力を行うということです。感覚入力を行ったら、改めてその後に動かすことも大事です。

少し番外編ですが、眼球にも着目したいです。目が緊張すれば疲労はたまってきますし、逆に疲労がたまると視野が狭くなるということもあると思います。今の時代は、スマホの見過ぎやデスクワークによる眼球の疲労はよくあることです。そうすると、目が身体全体に与える影響というのは無視できないはずです。

私の場合は、眼球の運動を日頃から行うようにしています。顔を動かさないで目だけを動かしたり、動くものに対して目だけで追っていったりがその一例です。こういったことを呼吸のエクササイズに入る前にやると、身体が楽になる感じがありますね。

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すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINKフィットネス外部顧問。2010年~2018年日本男子ボディビル選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。現在はトレーナーとして主にアスリートやボディビル競技者のトレーニング、栄養指導にあたる

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