8月6日から9日までの4日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)で「AirAsia HYROX Chiba」が開催された。
HYROX(ハイロックス)は、8回の1kmランと、スキーエルゴ、スレッドプッシュ、スレッドプル、バーピーブロードジャンプ、ローイング、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールという8種目のファンクショナルワークアウトを交互に行うフィットネスレースである。

日本では2025年の横浜、大阪に続く3回目の開催。今回は日本で初めて4日間にわたって行われ、主催者発表では約1万2000人の参加を見込む国内最大規模の大会となった。前回の大阪大会は8,087人で、千葉大会ではそこから約48%増加する見通しとされていた。
会場ではシングル、ダブルス、リレー、プロカテゴリーに加え、障害のあるアスリートが参加するアダプティブ部門も実施。4日間を通して多くの参加者がフィニッシュラインを目指した。
日本で急速に規模を拡大するHYROXは、これからどこまで大きくなるのか。大会期間中、HYROX Japanのスティーブ氏に話を聞いた。
日本在住者の参加が大幅に増加
スティーブ氏が今回の千葉大会で特に驚いたというのが、日本国内から参加する選手の増加である。
「横浜大会では日本国内からの参加者は半分未満でした。大阪では半分を少し超え、今回は日本在住者が非常に多くなりました」
海外で急速に成長したHYROXが、日本にも着実に浸透してきていることを感じさせる変化だ。
カテゴリーではダブルスの人気が高いという。
「ダブルスだけに出場する人は多いです。一方で、シングルに出る人がダブルスにも挑戦するケースもあります。全体的にはダブルスの人気が高いと感じています」
また、4人で競うリレーについても「これまでの日本大会と比べても盛り上がっていた。みんなワクワクしていて、非常に楽しかった」と振り返った。
「もっと大きな大会をやりたい」

一方、HYROXの日本大会ではエントリー開始後に枠が埋まり、参加したくてもできなかったという声も少なくない。
世界では数万人規模の大会も開催されている。日本でもさらに参加人数を増やすことはできるのだろうか。
スティーブ氏は「より大きな大会をやりたい」と明言する。その最大の課題が会場だという。
「主に会場次第です。施設のサイズや面積、使用できるホールの数、そして空き状況があります」
日本上陸当初は約1年先の大会を準備するようなスケジュールだった。しかしHYROXの人気拡大を受け、状況は変わり始めている。
「今はすでに2028年、2029年の大会についても準備を進めています。会場は早い者勝ちのような状況でもあるので、かなり前からやり取りをしています」
さらに今後は、開催日数を柔軟に増やせるよう会場側との契約方法も工夫していくという。
日本でも将来的に5日間、あるいはそれ以上の大型イベントへ発展する可能性がありそうだ。なお最大規模となったHYROXニューヨークは10日間開催された。
将来は日本でも「HYROX HOUSE」を
単純にレースの参加人数を増やすだけではない。
スティーブ氏が描くのは、HYROXそのものを一日楽しめるイベントへの進化である。
海外大会では、競技エリアだけでなく、パートナー企業のブースや物販などを楽しめる空間が設けられているケースがある。
「会場にもう少しスペースの余裕があれば、フェスのような雰囲気にしたいと思っています。レースの隣に物販やPUMAの商品、パートナーが出店できるスペースなどを作りたい」
その一つが「HYROX HOUSE」構想だ。
シンガポールや香港などでは、レースだけを目的に会場へ入り、競技終了後に帰るのではなく、HYROXというカルチャーそのものを楽しめる空間が作られているという。
「日本でも将来的にHYROX HOUSEをやりたい。会場に来て、すぐコースへ行くのではなく、フェスのような場所で時間を過ごしてからレースへ向かう。もっと総合的なイベントにしたいと思っています」
HYROXはなぜ世界中で急成長したのか
2017年にドイツで創設されたHYROXは現在、世界30カ国以上へと拡大している。
なぜ、ここまで急速に成長したのか。
スティーブ氏が大きな要因として挙げたのは、意外にも大規模な広告戦略ではなかった。
「一番大きいのはユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ(UGC)だと思います。コミュニティに愛情があって、参加者が自分たちでSNSに投稿してくれる。それによってオーガニックに注目が集まっています」
大会に参加する。その体験をSNSに投稿する。それを見た誰かがHYROXを知り、次の大会にエントリーする。そして次のレースへ向けてトレーニングを始める。
その循環が世界各地で起きているという。
「大会を楽しんだ人が『また参加したい』『次のHYROXのためにトレーニングしたい』と思ってくれる。コミュニティが育つことで、HYROXへの情熱も大きくなっていきます」
もちろんHYROX側もメディアコンテンツの制作や情報発信を行っている。しかし、それだけに頼ることなく「参加者本人の力で自然に成長している部分がある」と語る。
日本人選手が世界へ挑戦する機会も増やす
競技人口の増加とともに期待されるのが、日本人トップ選手の世界での活躍である。
スティーブ氏は日本人選手について「かなり強いと思う」と評価する。
「熱心に頑張っている選手がいますし、新しい選手もどんどん入ってきています。すでに競技を続けている選手がさらに強くなり、新しい人も加わる。お互いにレベルを高めていくような状況になっていると思います」
HYROX側ができることとして挙げたのが、国内で競技する機会そのものを増やすことである。
「日本国内で大会をもっと開催できれば、挑戦するチャンスが増えます。私たちがそうした機会を作ることで、日本のアスリートのレベルアップにも貢献できると思っています」
実際、日本での開催は今後も続く。公式スケジュールでは、2027年1月に大阪、同年4月には名古屋での開催も予定されている。そして2027年6月には、アジア初となる「PUMA HYROX World Championships」が香港で開催される。
日本でHYROXはどこまで大きくなるのか
2025年に日本へ上陸し、横浜、大阪、そして千葉へ。
千葉大会は約1万2000人の参加を見込む、日本最大規模のHYROXとなった。
さらに日本国内ではHYROXと提携するジムやコーチも増加しているという。
それでもスティーブ氏は、日本市場にはまだ大きな成長余地があるとみている。
HYROXを知らない人もまだ少なくない。しかし、海外でも最初から現在の規模だったわけではない。
「すでにアフィリエイトしているジムやコーチ、アスリートの皆さんには大きく貢献していただいています。そのコミュニティの力で、日本でもHYROXへの認知をさらに高めていけると思います」
4日間にわたった「AirAsia HYROX Chiba」は、日本におけるHYROXの一つの到達点であると同時に、まだ通過点なのかもしれない。
すでに2028年、2029年を見据えた大会準備が始まり、より大きな会場、開催日数の拡大、HYROX HOUSEをはじめとするフェス化も構想されている。
わずか数年で世界的なフィットネス競技へと成長したHYROX。その熱狂が、日本でも本格的に広がり始めている。次回の日本開催は2027年1月21日から24日を予定している。
文:FITNESS LOVE編集部 写真:HYROX公式










