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【お尻トレ革命】岡田隆監修!大殿筋徹底解剖&尻トレQ&Aで明かす驚きの効果と正しい鍛え方

尻トレを極めるならば、背景にある科学的な要素についても理解しておきたいところだ。殿筋の解剖や、効率良く鍛えるためのポイントについて、Q&Aも交えながら八角卓克氏に解説していただいた。

取材・文:舟橋位於 大会写真:中島康介

鍛えられたお尻の見た目

男性と女性で異なる部分もありますが、共通するところとしては、お尻を鍛えるときれいなS字を描くヒップラインが手に入ります。そして、今の流行りであるようなヒップアップによって、お尻が高い位置に来る効果もあります。加えて、骨盤が広くお尻が大きく発達すると、相対的にウエストが細く見えるといった効果もあります。以前は「小尻」というように、小さいお尻が好まれたこともありましたが、最近では真逆の方向に進んでいるように感じますね。

男性と女性のお尻の違いは、骨盤の形状によるものもあります。女性は、男性よりも扇状に広い形をした骨盤を持っています。そのため、そこに付着する筋肉が発達していくと、より一層サイズが目立つようになります。男性の場合は女性よりも骨盤が小さいため、引き締まった印象を与える形になっていくと思います。

お尻を鍛えていくと、視覚的な脚の長さも変わります。骨盤が立ち、発達した筋肉があると姿勢が良くなって、脚が実際よりも長く見えます。逆にお尻の筋力が不十分で骨盤が後傾すると、猫背になって脚が短く見えてしまうことになります。

一方で、鍛えられていないお尻は、のぺっとして垂れている印象を与えます。加齢に伴って筋力や筋量が低下することが主な原因として挙げられますが、逆に言えば、筋力や筋量が足りていないと、若くてもそのように見られてしまうということです。

お尻の筋肉の解剖と働き

※大殿筋は表層にあり、中殿筋・小殿筋はそのやや深部にある。

お尻の筋肉は「殿筋群」と総称し、お尻がいくつかの筋肉から構成されていることを意味します。一番有名で表層にあるのが大殿筋で、そのやや深部にあるのが中殿筋と小殿筋です。さらに深部に行くと、深層外旋六筋と言われる、梨状筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、大腿方形筋、上双子筋、下双子筋が存在します。

大殿筋の働きとしては、股関節を後ろに引く股関節伸展と、股関節を外に開く外転があります。また、大殿筋はその形状から股関節を閉じる内転にも関わっており、一つの筋肉で拮抗する2種類の働きを持つという面白い性質があります。中殿筋と小殿筋は、外転が主な動作となり、股関節を捻る内旋や外旋の作用もあります。外旋六筋はその名前の通り、外旋の働きを持っています。

ヒトは他の四足歩行動物と比べた際に、特に大きな大殿筋を持っています。このことは、ヒトが直立二足歩行を獲得したことと強く関係しています。大殿筋が大きく発達したことで、立った状態で歩いたり走ったり坂を登ったりということが可能となったと言えます。

お尻の筋肉と現代人の姿勢

姿勢を決定する要素には、さまざまな要因が関係しますが、その一つとして骨盤の傾きが挙げられ、お尻の筋肉も関係してきます。例えば、デスクワークの多い現代人について言うならば、骨盤が後傾してお尻の筋肉の機能が落ちているということはよく見受けられますし、反対に骨盤が前傾して反り腰になっている方も多くいます。時代をさかのぼると日本では椅子には座らず、正座が多かったと思いますが、正座の姿勢は骨盤が立ちやすく、腰部への負担は小さいです。一方で、背もたれのある椅子に座りっぱなしの状態で、股関節が屈曲する姿勢は、骨盤が後傾しやすく、それによって姿勢が悪くなり、腰痛を引き起こしてしまうことも考えられます。

こういったデスクワークから来る腰痛への対策としては、お尻の筋肉に対しストレッチの実施や、股関節を伸展させるエクササイズを実施することが挙げられます。また、椅子の上に置いて座る姿勢を改善するためのグッズ等を用いてみても良いでしょう。

効率良くお尻を鍛えるために

お尻をうまく発達させるために意識したいのは、股関節は多軸性の関節であり、三次元の動作を担う点です。まず、三次元のそれぞれの方向(矢状面、前額面、水平面※図1参照)を抽出した種目を行ってみるのが良いでしょう。サイドウォーク・クラムシェル・ヒップリフトなどが実施しやすいと思います。また、1種目で全ての方向の動きを網羅できる種目はありませんが、片足の種目であるブルガリアンスクワットは、体重を片足で支持し、姿勢を制御するため、殿筋群はもちろん、普段意識しない箇所にも刺激が入る種目ですのでお勧めしたいです。
また、お尻の感覚という観点であれば、筋肉の「収縮感」や「伸張感」が得られているかを意識することも重要です。収縮感は前述した種目で、殿筋群に力が入っているかどうか。伸張感はストレッチをして、伸びているかどうかになります。特に伸張感を意識するのが難しい場合は、股関節屈曲筋である腸腰筋や大腿四頭筋をストレッチしてみると、相反抑制によって殿筋群にも伸張感が得られやすくなると思います。このようにお尻の収縮感と伸張感を理解した上でトレーニングに臨むと、効率良くお尻を鍛えていけます。

その他のポイントとしては、トレーニング中に骨盤が立ったニュートラルな姿勢で腹圧が入りやすい状態をとれること、足裏の感覚を適正化し、スクワットのようなしゃがむ種目の際に足裏に体重が乗り、しっかりバランスを取れるようになることも、お尻を効率良く鍛えるには重要になります。

階段が楽に!? 腰痛にも関係!?
気になる殿筋のギモンをQ&A!

Q.お尻を鍛えると見た目はどう変わりますか?
A.姿勢が良くなりヒップラインも美しく見えます。

お尻の中で一番表層にあって大きな筋肉である大殿筋が発達すると、お尻の位置が高く見えます。いわゆるヒップアップですね。さらに、お尻が発達していると、相対的にウエストが細く見える効果もあります。また美しく正しい姿勢を取るためには、大殿筋をはじめ、骨盤に付着する筋肉が的確に働くことが大事です。筋力を獲得したり、ストレッチによって緊張を取ったりすることで、骨盤を正しい位置に保持し、良い姿勢が取れるようになります。

Q.日常生活に与える良い効果はありますか?
A.転倒防止や歩行、階段の昇段がスムーズになる可能性があります。

お尻の筋肉の代表である大殿筋は、単一の筋肉で見た場合には、人体で最も大きな筋肉です。そのため発揮できる力も大きいです。そして大殿筋は他の筋肉と連動して働くことで、足が地面についた際にブレーキをかけて地面の衝撃を受け止めたり、地面を蹴って前方への推進力を生み出したりする働きを持ちます。こういったことから、お尻のトレーニングで大殿筋を大きくかつ強くできると、転倒防止や、歩行、階段の昇段がスムーズになるといった効果が狙えると考えられます。

Q.お尻の筋肉と腰痛には関係がありますか?
A.腰痛の原因の一つにお尻の筋肉の機能低下が挙げられます。

腰痛が発生する原因は、多岐にわたるため一概には言えませんが、臨床上多くみられる腰痛のパターンに殿筋群の筋力低下や短縮が見られます。例えば、殿筋群の筋力が低下し、大腿四頭筋や腸腰筋が強く働けば骨盤が前傾し、反り腰になることで痛みが誘発されます。また、デスクワークが長く、殿筋群が短縮し、骨盤が後傾した状態になると、円背姿勢になり、こちらも痛みが誘発されてしまいます。これを防ぐためには、殿筋群に対して適宜ストレッチや筋トレを行っていくことが大切です。

Q.アスリートにもお尻の筋肉は大切ですか?
A.走る・飛ぶ・投げるなど爆発的動作の全てにおいて重要です。

身体の後ろに位置する筋群をポステリオールチェーン(殿筋群・ハムストリング・下腿三頭筋など)と呼びます。ポステリオールチェーンは、運動において質の良いアクセルやブレーキの役割を担います。これらの筋肉群が一緒に活動すると、足関節・膝関節・股関節の瞬間的な伸展活動である「トリプルエクステンション」を作り出し、とてつもないパワーを生み出します。例えば、短距離走のクラウチングスタートの姿勢や、垂直跳びでしゃがんだ姿勢では、足関節・膝関節・股関節が屈曲しており、これらの関節を同時に伸ばす際には、強い力発揮が起きています。お尻の筋肉を鍛えることはアスリートにとって必須です。

Q.BIG3の種目とお尻の関係性を教えてください。
A.それぞれに良い影響を及ぼすことがあります。

スクワットに関しては、殿筋群の硬さに問題がある場合に、「ボトム付近で股関節の前側が詰まる」といったインピンジメントの症状が出ることがあります。この場合は、大殿筋を緩めるストレッチなどで、股関節の前後の硬さを調整することが有効になるケースがあります。ベンチプレスでは、ブリッジを組んだ際に、殿筋群などの下肢筋群で踏ん張ること(レッグドライブ)により、フォームが安定して「より強度の高い負荷」を与えることが可能になります。そして、デッドリフトでは大殿筋が主働筋にもなるので、発達すれば1RMの記録も伸びると思われます。

Q.お尻を鍛える際に注意することは?
A.股関節には様々な動きがあるのでトレーニングも工夫が必要です。

骨盤の周りには複数の筋肉が存在します。それらが協調して機能することで、股関節を中心としたさまざまな動きが可能となります。前述しましたが、実際にトレーニングでお尻を狙う際にも、複数の方向へ刺激を入れてあげると良いです。具体的には、前額面(左右の動き)・矢状面(前後の動き)・水平面(捻る動き)をうまく組み合わせられると良いです。それに加えて片足の種目であるブルガリアンスクワットやステップアップなどで、重量を加えながら鍛えることができると良いでしょうね。

岡田隆(おかだ・たかし)
1980年1月6日生まれ、愛知県出身。日本体育大学体育学部教授。日本体育大学体育学部卒業、日本体育大学大学院体育科学研究科修了(体育科学修士)、東京大学大学院総合文化研究科単位取得満期退学。ボディビルダーとして活動しつつトレーニングを指導。自身がプロデュースするジム「STUDIOBAZOOKA」、ボディケアスタジオ「ACTIVERESET」を運営。

八角卓克(はっかく・たかよし)
1991年11月15日生まれ、千葉県出身。日本体育大学大学院体育科学研究科博士前期課程健康科学・スポーツ医科学系修了(体育科学)、柔道整復師、健康運動指導士、JSPO-AT、NSCA-CSCSなど数々の資格を有する。株式会社LIFEBUILDINGフィットネス総合研究所上席研究員、日本健康医療専門学校などで講師を務める。第59回神奈川県クラス別ボディビル選手権60kg級優勝

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