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「効かない…」は才能のせいじゃない!筋トレ初心者が覚えるべき感覚の磨き方【筋トレ初心者よくある落とし穴❸】

「筋トレしてるのに効いてる気がしない…」「やっぱり自分にはセンスがないのかも?」そんなふうに悩んでいませんか?
でも安心してください。“効かせる力”はセンスではなく、後天的に身につけられるスキルです。
元世界王者・鈴木雅さんと指導歴17年の本橋直人さんが、筋肉にしっかり刺激を入れるための“正しい動作学習”と“感覚の磨き方”を解説。初心者が誤解しやすい「効く・効かない」の正体に迫ります!

筋トレ初心者の落とし穴③

“効かせられない”のはセンスがないからだ…と誤解してしまう

「効く」・「効かない」、「効かせられる」・「効かせられない」はよく聞かれるワードだ。使いやすい言葉ではあるが、その意味するところはやや漠然としている。

「運動経験の土台があると、体性感覚(※)などの感覚器が鋭敏であることがあります。そうすると、身体を思い通りに動かすのが容易になり、結果的に刺激が対象筋に効きやすいことはあります」(鈴木)

※「体性感覚とは、皮膚・筋紡錘に表層感覚として備わり、また深部感覚として関節面である骨頭に備わる感覚のことです。特に動きの操作という意味では、筋紡錘ではなく、関節面に備わる感覚器が重要になってきます」(鈴木)

どうやら、筋肉に正しく効かせるためには、動作学習をする中で、筋肉を適切に動かせるようにすることが鍵となるようだ。

トレーニング種目の選択も重要だ。身体が固定されてバーベルやダンベルが動くオープンキネティックチェーンよりも、身体そのものが動くクローズドキネティックチェーンの方が、より関節への刺激を与えやすいと言う。

「クローズドキネティックチェーンの種目としては、プッシュアップやチンニングがあります。これに加えて、体幹部のトレーニングなどを行うのも良いです」(鈴木)

運動連鎖の分類とその種目例について

キネティックチェーン(運動連鎖)
複数の筋肉や関節が連動することでパフォーマンスを発揮すること

オープンキネティックチェーン(開放運動連鎖)
身体が固定されてバーベルやダンベルが動く動作(チェストプレス、レッグプレス等)

クローズドキネティックチェーン(閉鎖運動連鎖)
身体そのものが動く動作(プッシュアップ、チンニング等)

動作学習(フォームの確立)には筋肉を適切に動かせるようにすることが重要。その状態にするためにはクローズドキネティックチェーンの種目が効果的!

あまりにも抽象的である「効く」・「効かない」という言葉であったが、このように分解して理解すると、解決のための糸口も見えてきそうだ。すなわち、正しい姿勢や動作学習によって感覚を磨いていき、筋肉に刺激を与える正しい身体の動きを学ぶことが重要だと言えるのではないだろうか。

ジムを見渡すと、あえて使用重量を落として、ゆっくり動作したりフォームを特に意識して行ったりしている姿も見られる。果たして、このようにして「効かせる」ことを考えたトレーニングは、本当に有効なのだろうか。

「2018年に発表された研究によると、ウエイトを爆発的に挙げる意識を持って動作すると、ベンチプレス中に全ての筋肉の活動が高まりそうだということが示されています。まずは『フォームを崩さず、力強く挙げる』ことに集中しましょう。そうすれば、特定の筋肉を意識しなくても、対象筋をしっかり使えるはずです」(本橋)

この結果を踏まえると、あえて制限をかけたフォームでトレーニングするよりも、自分が最大限に力を出せるやり方で取り組んだ方が良いと言えるだろう。

ウエイトを挙げるスピードが速いほど筋力が向上する?

20名の参加者が6週間、週3回の頻度でベンチプレスを行った。挙上する速度が速いグループとゆっくりなグループに分かれ、最大筋力(1RM)や乳酸値などを比較した。結果、挙上速度が速いグループの最大筋力は20.8%増加し、ゆっくりグループの9.7%に大きく差を付けた。挙上する速度がゆっくりよりも速い方が筋力向上の効果が高い可能性があるということが示された。
(出典:JuanJoséGonzález-Badilloetal.,2014)

よくある別の悩みとして、ベンチプレスで胸よりも腕に効いてしまうというものがある。

「フォームがある程度固まった上で、腕に効いてしまうようであれば、腕の筋肉の力がまだ追いついていない可能性も原因の一つとして考えられます。トレーニングを継続して筋力が伸びてくれば、自然と胸にも刺激が入るようになると思われます」(本橋)

「効く」・「効かない」ということは過度に意識しすぎず、正しいフォームを身につけることで筋肉に適切な刺激が入っていくと理解できると良いだろう。

回避法!

動作学習で感覚を磨き、筋肉に刺激が入る正しい身体の動かし方を習得しよう

すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2010~2019年日本選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。現在トレーナーとしては主にアスリートやボディビル競技者のトレーニング、栄養指導にあたる。他にもアスレティックトレーナーや理学療法士に対して身体の原理原則をいかにトレーニングに落とし込むかといった指導にも携わる。

もとはし・なおと
1982年11月1日生まれ。埼玉県出身。AthleteBody.jpで活動中のパーソナルトレーナー。トレーナー歴17年であり、ここ10年は体組成改善に専門で取り組む。特にここ5年はボディビルやフィジークといった競技者のクライアントを多く指導している。久野圭一選手や昨年の日本クラス別で活躍した藤井貫太郎選手も指導を受け、指導前後の変貌振りがSNSで話題となった。

取材・文:舟橋位於 撮影:北岡一浩、舟橋賢、中島康介 Web構成:中村聡美

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