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10代~20代の筋トレ女子を応援!ビキニフィットネス元日本代表・吉田夏芽のトレーニング勉強会「答えを教える」よりも「判断力」を育てたい

若い世代のフィットネス人口が増加してきている昨今。様々な情報が溢れる中、適切な情報を選び取る力も必要になってくる。自ら学生時代に世界選手権を経験し、競技で結果を残してきた吉田夏芽さんが定期的にジュニア世代(10代~20代)向けのトレーニング勉強会を開く背景には、若い世代への熱いメッセージがあった。

[初出:Woman'sSHAPE vol.30]

取材・文:Woman's SHAPE編集部 撮影:中島康介(大会) Web構成:中村聡美

「現在、東京や東北で、ジュニア世代の女子トレーニーたちを対象にしたトレーニング勉強会を開いています。これは、単に技術を教える場ではなく、“どう考えればいいか”といった自分で判断できる力を一緒に育てる時間にしたいと思って取り組んでいます。

勉強会の参加者は、競技者志望の学生もいれば、トレーナーを目指す子、最近トレーニングを始めたばかりの初心者もいます。内容はポージングや減量、トレーニング技術に限らず、学校との両立、メンタル面の悩み、情報の扱い方など多岐にわたります。形式は講義型ではなく、問いかけと対話をベースにした少人数制。自分で考えるプロセスを大切にしています。一人ひとりの声にじっくり向き合える、そんな場づくりを心がけています」

「答えを教える」よりも「判断力」を育てる

「参加してくれるのは、10代〜20代の若い選手たち。競技歴や目標はバラバラですが、共通しているのは『もっと成長したい』という気持ちです。その想いに寄り添うために、私は『答えを教える指導』ではなく、『考え方を育てる場』をつくることを大事にしています」

トレーニング勉強会の様子。少人数ならではの個々に寄り添った指導を行う

「最近、ジュニア世代の子たちからトレーナーとの関わり方について相談を受ける機会が増えました。『月額でサポートをお願いしているのに返信が来ない』『この人のアドバイス、本当に正しいんですか?』そんな声をよく耳にします。よく聞くのが、有料でチャットのサポートを受けているはずなのに、返信は3日に一度だったり、誰でも返せる、一言だけの相槌のような返信だったり。『これは本当にその子のための指導なのか?』と疑問に感じるケースもあったりするので驚きです。

このようなことが実際に起こっている現状から、参加者たちには『誰かに言われたことをそのまま受け入れるのではなく、自分で考えることが大事だよ』と伝えるようにしています」

普段の指導の様子

「たとえば、勉強会ではポージングの取り方を教えるのではなく、『どうやって自分のフォームをチェックするか』を教えます。動画を撮影し、線を引いて左右差を見る。自分で修正点を見つけられるようになれば、その力は競技だけでなく、日常の判断にも活きてくるからです。

私自身も学生時代は、誰かに教わるより自分で徹底的に調べて試すことが好きでした。でも今は、情報が溢れていて、時間も限られている。そのなかで『正しい情報に最短でたどり着きたい』というニーズがあるのも理解できます。ただその〝効率〞ばかりを優先してしまうと、大切な『考える力』や『判断力』を育てる機会を逃してしまうのではないかと感じています」

2020年ゴールドジムジャパンカップでビキニ初代女王に輝く。このときはまだ日本体育大学の学生だった

「おしゃれさ」か「勝ちたいか」
━━選手としての覚悟

「最近のジュニア選手たちは、減量にも工夫を凝らしています。SNSで調べたおしゃれな減量食を作り、美味しくストレスを抑えて絞る。私が学生のころは、節約第一で、鶏むね・ブロッコリー・米ばかりでしたから、そのような減量方法は純粋にすごいなと感じます。

でも、だからこそ伝えたいこともあります。『かわいく』『快適に』減量することと、『競技で勝つこと』は、時に両立しない。覚悟を持って"快適さ"を一時的に手放す必要がある時もある。そうしたリアルな部分にも、きちんと向き合っていってほしいと考えています」

メンタル面の悩みなども相談に乗っている

「とはいえ、私の減量方法ややってきた苦労をそのまま伝えることには慎重です。なぜなら、それを聞いたジュニア選手が『自分も同じようにしなければ』とプレッシャーを感じてしまうかもしれないから。伝えたいのは、あくまで『自分はどうしたいのか』『どこまでやる覚悟があるのか』を、自分で決めてほしいということです。

また、身体の使い方についても、基礎が作りきれていない子に対しては、派手なテクニックよりもまず『重さを支えられる身体』『自分を守れるフォーム』をつくることを伝えています。どんな目標であっても、結局は“土台”がものを言います」

視野を広げ、経験を自分のものに

「今、私は東北の岩手県を拠点に活動しています。地方では情報が届きにくく、環境の差もあります。ですが、『地方だからこそできること』があるとも感じています。SNSだけでは拾えない、埋もれた才能を見つけ出すこと。そして、若手トレーナーたちとつながりながら、未来の指導者の芽も育てていく。そんな場をつくるのが、今後の目標です。

最後に、ジュニア世代のみんなに強く伝えたいことがあります。

1つ目は、『大人の言うことを鵜呑みにしないこと』。
2つ目は、『自分の優先順位をしっかり持つこと』。
そして3つ目は、『視野を広げ、積極的に経験を重ねていってほしい』ということです。

『私はこのカテゴリーだからBIG3はやらない』『(トレーナーとして)マシンを指導するだけだからフリーウエイトは必要ない』。そう思ってしまう気持ちもわかります。でも、その考えが、成長のチャンスを狭めているかもしれません。

実際には、遠回りに思える経験のなかにこそ、本質が隠れていることも多いと思っています。私は心理学や営業の勉強をしてきましたが、それが今の指導や仕事の場面でとても生きています。

何に対しても、『これは自分にどう活かせるか?』と考える姿勢を持っていてほしい。セミナーに参加して『思ってたのと違った』と感じたときも、『じゃあこの中から何を学べるか』と考えること。もし何も得られなかったとしたら、それは情報のせいじゃなく、受け身になっていた自分の責任かもしれません。

私もそうやって自分に言い聞かせながら、毎日の仕事や指導に向き合っています。

だからこそ、ジュニア世代のみんなにも、最短距離を急ぐのではなく、広く・深く、経験を重ねていってほしい。それが、きっと自分の未来を強く支えてくれる。そう信じて、この取り組みを続けていきます。

よしだ・なつめ
1999年8月10日、東京都出身。身長168cm。日本体育大学に入学後、ウエイトトレーニングを開始。3年時、バーベルクラブ入部と共に本格的な身体づくりと競技人生をスタートさせた。2021年のゴールドジムJAPAN CUP ビキニカテゴリーで総合優勝を果たすなど躍進。2024年のオールジャパンではビキニフィットネス163㎝超級で4位入賞。現在は東京と岩手を拠点に、個人での指導者活動とトレーニング指導者協会としての取り組みにも努める

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佐藤奈々子選手
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