世界的に話題のフィットネスレース「HYROX」で活躍する選手に迫るコーナー。第3回は、2025年4月に『クロスフィット世田谷』をオープンした森田さんご夫妻を紹介する。
※「HYROX(ハイロックス)」とは、ランニングとフィットネス種目を組み合わせた新しいスタイルの競技。1kmのランニングと、8種目のファンクショナルトレーニング(機能的全身運動)を交互に繰り返すことで、筋力や持久力だけではなく、さまざまなフィットネスに関する能力が問われる。
夫婦で同じゴールを目指す
夫の森田太郎(もりた・たろう/42)さんと妻の光希(みき/40)さんは8月に開催されたHYROX YOKOHAMAにミックスダブルスに挑戦し、40〜44歳カテゴリで見事2位。
さらに妻の光希さんは、ウィメンズリレーでオーバーオール(全年代の総合)優勝も成し遂げた。光希さんは国内女性初のHYROXパフォーマンスコーチの資格も取得しており、選手としての挑戦だけでなく、指導者としても新しい可能性を切り開いている。
「最初はそれぞれがシングルで出場するつもりでした。しかし、フィットネス界で注目を集めるご夫婦がダブルスに出ると知って、『同じ舞台で勝負したい』という気持ちが芽生えて、エントリーを変更しました」
こうして、夫婦で力を合わせて挑む新たな挑戦に踏み出した。
補い合う強みと戦略
レースに向けての役割分担は明確だった。
「夫はクロスフィットトレーニングで培ったストレングスが強みですが、スピードやスタミナはやや苦手。私はランニングコーチという職業柄、走力には自身がありましたが、パワーが課題でした」
ランは妻がリードし、スレッド種目など力強さが求められる局面は夫が担当。得意種目もそれぞれ異なり、太郎さんはロウイングやウォールボールを担当、光希さんはサンドバッグランジで持ち味を発揮した。
「唯一、お互いに苦手だったバーピーブロードジャンプは、こまめに交代しながら乗り切りました。交代の素早さは練習の成果で、息もピッタリ合ったと思います(笑)」
トレーニングは個別、ゴールは共に
普段のトレーニングは基本的に別々。太郎さんは光希さんのランニングメニューを取り入れつつ、クロスフィット世田谷で鍛え、光希さんは、同ジムのMasayaヘッドコーチによる特別メニューでストレングス強化に励んだ。
「レース前1カ月は、毎週のように短めのシミュレーションレースを行い、連携を徹底的に確認しました。夫がランニングをサボらないように監視の目を光らせていたのも大きかったかもしれません(笑)」
しかし、本番では思わぬアクシデントも。終盤、太郎さんが足を攣ってしまい、ピンチに陥る。
「得意だったサンドバッグランジはほとんど私がやったと思います。夫も『あのときは完全に無双状態だったね』と笑っていました」
HYROXの先に広がる夫婦の絆
結果は2位と、満足の成績と同時に、夫婦の絆もさらに深まった。
レース後は自然と夫婦の会話にHYROXが増え、振り返りや次のトレーニングの話題で盛り上がる毎日が続いている。
「数ヶ月間のトレーニングを経て迎えるレースは本当に楽しいし、当日を想像するだけでワクワクしました。本番ではパートナーだけでなく、仲間の声援も大きな力になるので、迷っているなら絶対挑戦してほしいです」
そして二人は次のステージへ。
「1月の大阪大会は60分切りを達成してオーバーオール優勝を目指します!」
一緒に暮らしながら、同じゴールを目指して本気で挑む──その体験は、誰にでも開かれた、HYROXならではの特別な時間なのかもしれない。
文:林健太 写真提供:森田太郎、森田光希
パーソナルトレーナー、専門学校講師、ライティングなど幅広く活動するマルチフィットネストレーナー。HYROX横浜はシングルプロで出場。
-筋トレ, フィットネス
-HYROX, ハイロックス, HYROX WARRIORS, ★★HYROX WARRIORS, ★★★HYROX WARRIORS