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「トレーニング女子は尿もれリスクが高い?」骨盤底筋、整っていますか?理学療法士に聞く一生モノの身体を作る「運動とケア」の新ルーティン

フィットネストレーナー・小倉シエカ×筋調整セラピスト/理学療法士・半田瞳

「体幹はとにかく固めて安定させるもの」その思い込みが、実は骨盤底筋のトラブルを招いているかもしれません。フィットネストレーナーのシエカさんが、骨盤底筋と尿もれ研究のスペシャリスト・理学療法士の半田瞳さんにインタビュー。女性ホルモンなど人生の波を乗りこなし、一生もれない・たるまない身体を作るための、新たな「運動とケア」の正解に迫ります。

[初出:Woman'sSHAPE vol.31]

取材・文_藤村幸代 撮影_中原義史 Web構成_中村聡美

トレーニング女子は尿もれリスクが高い?

シエカ 半田先生は理学療法士として、まだ骨盤底筋が広く注目される以前から大学院で研究されてきた骨盤底筋のスペシャリスト。今日は読者のお悩みについて色々伺いたいのですが、まず先生がこの分野に着目された経緯は何だったのでしょう?

半田 元々は腰痛の研究で、背骨を支える多裂筋を調べていたんです。研究を進めるうちに、多裂筋とお腹の腹横筋は前後でセットで動くことが分かり、さらに海外では骨盤底筋も腹横筋と協調して活動する可能性が報告され始めていました。それで「これは骨盤底筋を抜きにしてはインナーマッスルを本質的に理解できないぞ」と。

シエカ 本誌読者の皆さんのようにウエイトトレーニングに取り組む女性たちの間にも「インナーって大事だよね」という認識が浸透してきました。ただ、骨盤底筋が具体的にどんな働きをしているかを知らない方もいると思うので、改めてその役割について教えていただけますか?

半田 まず1つ目は「骨盤内臓器を支える」こと。膀胱、子宮、直腸といった大切な臓器を、下からハンモックのように支えています。2つ目は「排泄のコントロール」。尿道、膣、肛門という3つの穴を、必要な時に締め、緩める働きです。3つ目は「性機能への関与」。性行為の際の感覚にも深く関わっています。そして4つ目がトレーニングに直結する「骨盤の安定性」です。

シエカ どれも女性のQOL(生活の質)に直結するものばかりですね。

半田 そうなんです。トレーニーの方なら、骨盤底筋は動き出す前に体幹を安定させる「動きの源」なので、ここが機能しないと正しく動けません。腹圧のコントロールも担うので、きれいなボディラインやウエスト作り、さらには呼吸を通じたリカバリーにも深く関わります。

シエカ 最近は「フェムケア」の言葉も浸透してきて、尿もれや、入浴後に膣からお湯がもれ出てくる「湯もれ」に悩む方の声も届くようになりました。

半田 膣は通常、周囲の筋や組織によって閉鎖性が保たれていますが、骨盤底筋の支持機能が低下すると、お湯が入りやすくなる可能性があります。こうした変化も、骨盤底筋の機能と無関係ではないと考えられます。

シエカ ええ。でも、皆さん「これは年齢のせい、産後だから仕方ない」と諦めている気がします。

半田 尿失禁というと高齢の方をイメージしがちですが、実は私のところに相談にいらっしゃる方は30代、40代中心。産後の方や運動している方も多いので。運動で言えば、一部の研究では、「高負荷トレーニングを行っている群で尿失禁の訴えが多い」という報告があります。ただし、これはフォームや腹圧コントロールが適切でない場合に起こりやすいと考えられています。

シエカ 鍛えているはずのトレーニーのほうがリスクが高いとは……。重いものを扱う分、それなりの知識を持って守ってあげないといけないんですね。

「体幹を固める」が不調を招く?
骨盤底筋の意外な落とし穴

シエカ 一口に「尿もれ」と言っても、原因は一つではないですよね。トレーニング中にもれてしまうのは、どんなメカニズムなんですか?

半田 尿失禁にはいくつかのタイプがあるとされています。覚えておいていただきたいのは、代表的な2つです。一つ目は「腹圧性尿失禁」。ジャンプや重いウエイトを挙げた瞬間など、腹圧が急激に高まった際に、骨盤底筋がその圧に十分対応できず漏れてしまう状態です。もう一つが「切迫性尿失禁」。急に強い尿意に襲われ、我慢が難しくなるタイプです。トイレに着いた瞬間に少量漏れてしまうケースも含まれます。これらは原因や背景が異なりますが、骨盤底筋機能の評価と適切なトレーニングが有効とされる場合もあります。

シエカ その改善策として、体幹を常に締めて安定させておこうという人はとても多いですよね。

半田 そこが盲点というか、体幹を固める意識が強すぎる場合、骨盤底筋がうまく連動していないケースを多く見てきました。ピラティスで日頃からお腹を凹ませたり、吸引したりする方たちのエコーをたくさん撮ってみたのですが、正しい指導を受けていない場合、ほとんどの方が上手く使えていませんでした。

シエカ これはショックというか……。体幹を固めている、締めている、イコール骨盤も締まり骨盤底筋も使えているとは限らないんですね。

半田 必ずしも一致するとは限りません。イメージとしてはマヨネーズの容器です。容器を強く握ると、圧が逃げ場を探しますよね。腹部を過度に固めると、腹圧が下方へ伝わり、骨盤底筋が押し下げられる方向に働くことがあります。望ましいのは、腹圧を全方向にバランスよく分散できる状態です。

骨盤底筋の構造
「膀胱、子宮、直腸といった大切な臓器を、下からハンモックのように支えています。また、尿道、膣、肛門という3つの穴を、必要な時に締め、緩める『排泄のコントロール』の役割などがあります」(半田さん)

シエカ 良かれと思って締めているのが、実はキャップを飛ばそうとする力になっていたんですね。そうなると、尿もれ以外にもどんなトラブルが起きてくるのでしょうか。

半田 まず体幹や骨盤が不安定になるので、腰痛や股関節痛が出やすくなります。また、膣のコントロールが効かなくなって性交痛が出たり。ご本人が違和感を覚えたり、パートナーとの関係性の中で違和感を指摘され、不安を感じて来院される方もいらっしゃいます。性機能の低下は、女性としての自信にも関わる大きな問題ですよね。

シエカ 実はデリケートな悩みを持っている方は本当に多くて。私自身、若い頃にお風呂上がりの湯もれを経験しています。私の場合、トレーニングで改善しましたが、知識を得るまでは不調のサインだと知らずに過ごしていました。

半田 トレーニングをしているのに下腹部だけがぽっこりする場合も、一つのサインかもしれません。腹筋不足と考えてさらに固めると、腹圧のかかり方が偏り、骨盤底筋に過負荷がかかる可能性があります。また「足のむくみや張り」も関係しています。下肢のトレーニングで硬くなったまま放置すると、筋膜の連続性を通じて、骨盤底筋の動きが制限されやすくなって、本来の引き上げる動きができなくなるんです。

シエカ インナーの弱さを補うために、お尻をギュッと固めて代償してしまう人も多い気がします。お尻を鍛えすぎて骨盤底筋に悪影響、なんてこともあるのでしょうか。

半田 あると思います。特にお尻の後ろ側が硬すぎると、圧が逃げ場を失って、前方の尿道や膣から漏れやすくなります。

シエカ 本当は風船みたいに全方向に膨らんでほしいのに、お尻やお腹をガチガチにして壁を作ってしまうと、もう漏らすしかない。

半田 大切なのは、お尻で〝押さえ込む〞ことではなく、骨盤底筋を適切に機能させ、腹圧を均等にコントロールできる状態をつくることです。

臓器のたるみは顔と同じ
女性ホルモン減少に備えたケアを

シエカ 骨盤底筋と女性ホルモンの関連についてもぜひ伺いたいです。

半田 関連は深いと考えられています。女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨盤周囲の組織の弾力性や血流維持に関与しています。エストロゲンが低下する時期には、骨盤底筋周囲の組織変化が起こりやすくなることが報告されています。また、月経周期によって靭帯の弾性や筋機能に変化がみられる可能性も指摘されており、傷害リスクとの関連が研究されています。

シエカ 人生においてエストロゲンが急激に降下する更年期などは、やはり骨盤底筋にも大きな影響が?

半田 大きく変わりますね。まず、臓器自体の肉厚な厚みが減ってしまうんです。よく「コラーゲン線維が減る」と言いますが、それは顔だけの話ではなくて(笑)。本来、膣や尿道にはしっかりとした厚みと弾力があるからこそ、骨盤底筋が収縮したときにシュッと閉じることができるんです。でも、エストロゲンの低下により、骨盤周囲の結合組織の弾力や支持力が変化し、閉鎖機能が弱まりやすくなります。

シエカ 顔のたるみと同じことが、身体の中でも起きているんですね。ショックですが、すごくイメージしやすいです。

半田 比喩としては近い部分もあります。さらに厄介なのが、エストロゲンが低下するとコラーゲン線維やエラスチン線維が硬くなってしまうことです。骨盤底筋だけでなく全身の筋肉に言えることですが、筋肉を包む筋膜が硬くなると、筋肉そのものも収縮しにくくなります。実は筋膜の中には、筋肉の伸び縮みを察知する筋紡錘や、痛みの受容器が筋肉の10倍も存在しているんです。そこがガチガチに硬くなると脳へのフィードバックがうまくいかず、「収縮させる感覚」そのものが分かりにくくなってしまう。

シエカ センサーが鈍くなるから、加齢と共に動きも鈍くなる。ホルモンの影響って本当にすごいですね。でも、これって女性特有の問題なんですよね?

半田 そう、男性も加齢による変化はありますが、女性ほど急激ではありません。

シエカ 女性の急激な変化は、よくジェットコースターに例えられますが、そのメカニズムがよく分かりました。顔のコラーゲン不足は鏡を見てすぐ気づきますけど、同じことが骨盤底筋や子宮、膀胱にも起こって、緩んで、たるんで、硬くなっている。だとしたら、顔のお手入れと同じ感覚で、骨盤周りの「運動とケア」を当たり前の健康維持のルーティンとして持っておくべきなのでしょうね。

半田 そうですね。閉経後は変化に時間がかかりやすくなるため、若い時期からの積み重ねが助けになります。だからこそ、今のうちから筋膜を整えてセンサーを磨き、症状を和らげる準備をしておくべき。まずは負荷のない状態で、自分の骨盤底筋が今どこにあるのか、そのセンサーを取り戻すケアから始めていきましょう。

骨盤底筋センサーを呼び覚ます
厳選7メソッド

どのエクササイズもお腹を無理に膨らませたり、お尻に力を入れすぎたりせず、楽な呼吸のなかで骨盤底筋のエリアだけを収縮させるのが正解です。やってみると意外に難しい ! だからこそ、丁寧に向き合ってみましょう。

Method❶ 骨盤底筋の「感度テスト」

まずは自分の骨盤底筋が動いているかをチェック。

あお向けになり背骨と骨盤を床にしっかりつけ、両ひざを曲げて鼻からゆっくり息を吸う。吸ったときにパンティラインの辺りを押し返す感覚、逆に吐いたときにその圧が戻る感覚があるか確認。この感覚がない人は骨盤底筋が硬くなっている可能性大。次の骨盤底筋ストレッチへ!

ココがポイント

脊柱をまっすぐ保つため、頭の下に枕やクッションを入れるのがベター。

 

Method❷ 360度膨らます「骨盤底筋ストレッチ」

お腹まわりを全方位に膨らませ、骨盤底筋をしなやかに広げます。

①あお向けになり背骨と骨盤を床にしっかりつけ、両ひざを曲げる。両手はお腹まわりに添える。

②息を吸い、前・脇腹・背中も360度膨らませながら、同時にお尻の穴を広げる意識で骨盤底筋をストレッチ。

ココがポイント

背中に添えた親指にも膨らみが伝わるよう、全方位を意識しましょう。

 

Method❸ 連動を養う「あお向け骨盤底筋トレーニング」

お腹を固めず、呼吸を止めずに脚を動かす「連動」の練習です。

①あお向けで両ひざを軽く立てる。息を吸いながらお腹を360度膨らませる。

②お腹の膨らみをキープしたまま、呼吸を止めずに片脚ずつ上げて、下ろす。

ココがポイント

上げた瞬間にお腹を固めたり、息を止めたりしないこと。スクワットでいきむ癖がある人は特に注意!

 

Method❹  座位での「引き上げトレーニング」

座面(椅子)との接地感を利用して、引き上げる感覚を掴みます。

骨盤をニュートラルの状態に立てて座り、両手を軽く腰に添えてゆっくり呼吸。吸ったときに腹部が360度膨らみ、座面に会陰が当たる感覚、吐いたときに引き上がる感覚があるか確認。

ココがポイント

息を吐くときにお尻の穴を締めるようにすると、骨盤底筋が引き上がる感覚を得やすくなります。

 

Method❺  内転筋の「筋膜リリース」

骨盤底筋とつながりの深い「内もも(薄筋)」を緩め、動きを解放します。

椅子に座り片脚をもう片方の脚に乗せる。太腿の内側を三等分し、上部と下部を肘の平たい部分で滑らせるように優しくマッサージ

ココがポイント

指先や肘の尖った部分で押すと、筋肉はゆるむが筋膜が動かないのでNG。一定の圧で縦・横・斜めに筋膜を滑らせるのがコツです。

❌NG

 

Method❻  左右差を整える「片脚立ち回旋」

左右非対称な状態でも骨盤底筋を働かせる、ハイレベルな種目です。

①腰に軽く手を添え、骨盤底筋を引き上げて片足立ちになる。

②軸足は固定し、上げた脚の股関節も動かさないように、骨盤底筋を引き上げたまま体幹だけを小さく回旋させる。

ココがポイント

腰を反ると骨盤底筋が抜けてしまいます。お腹に力を入れず、お尻も柔らかいまま、骨盤底筋だけを締めるのが理想。

 

Method❼  トレーニング前に!「骨盤底筋ジャンプ」

トレーニング本番前に行うことで、負荷に負けない骨盤底筋を作ります。

①骨盤をニュートラルにして両脚を揃えて立ち、骨盤底筋を締める。

②その状態をキープしたまま、ジャンプするようにすっとかかとを上げる、あるいは軽くジャンプし瞬時に着地。

ココがポイント

ウエイト中、骨底は締めっぱなしにせず「呼気(吐く息)」で締めること。ヒップスラストなら持ち上げる瞬間にキュッと締めるイメージです。

こちらもチェック!
半田瞳さん著書 『ハンモック筋を鍛えて尿もれ・便秘・ぽっこりお腹を解消 !きゅきゅっと体操』 出版社:飛鳥新社
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しえか
1979年生まれ。フィットネストレーナー/運動経験ゼロであったが、体型の崩れをきっかけに2007年、27歳で筋力トレーニングを開始。JBBFボディフィットネスに出場し、東京・関東(初代)・東日本(初代)大会チャンピオンとなる。2010年に全日本大会準優勝、11年東アジア選手権代表に選出。現在はピラティス、ウエイトトレーニング、筋緊張抑制などを組み合わせたコンディショニング&ボディメイクを行うパーソナル指導を中心に活動中。

はんだ・ひとみ
福島県会津若松市出身。理学療法士・保健医療学博士。骨盤底筋と体幹機能を専門とし、臨床と研究の両面から女性の身体づくりを探究してきた。研究論文「中高年女性における腹圧性尿失禁とインナーユニット機能との関係性」では、骨盤底筋群の機能と尿失禁リスクとの関連を検討し、「理学療法学」第9回学術優秀論文賞優秀賞を受賞。現在は株式会社TRIGGERにて、骨盤底筋チェック、骨盤底筋トレーニング指導、筋膜マニピュレーション®を取り入れたコンディショニングを実施。医療知識をベースに、競技者から一般女性まで幅広くサポートしている。尿失禁ケアセラピスト養成コースを主宰し、専門家育成にも力を注ぐ。

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