コンディショニング ストレッチ

なぜ朝のストレッチは身体によいのか?一日を最適化するための科学的根拠とおすすめストレッチ5選【前田修平のまいにちセルフケア連載】

ストレッチを中心とした身体のセルフケアを学べるYouTubeチャンネル「前田のまいにちセルフケア by GronG」を運営する前田修平さん(NASM-PES、はり師・きゅう師)が科学的な根拠をもとに、健康的な身体づくりのためのセルフケア方法をわかりやすく伝える本連載。第8回のテーマは「朝のストレッチ」です。

【動画】朝ストレッチの効果|毎朝のおすすめメニュー


スマートフォンのアラームをかけて目覚めても、何度も何度もスヌーズボタンを押して、出かけるギリギリまでベッドで過ごしているのはあなただけではないはず。私もかつてはそんな過ごし方をしていたひとりだった。

転機は身体の勉強をしはじめた十数年以上前のこと。自律神経に関して学ぶうちに、朝に身体を動かすことのメリットを体験したいと思い、ストレッチを習慣に取り入れた。目覚めが悪く、一日を快適かつ健康的に過ごせていなかった私にとって、朝のストレッチは単なる運動ではなく、ある種の扉が開けた瞬間だった。

モーニングルーティンを紹介する動画が流行しているが、身体にとって朝のストレッチは科学的根拠に基づいた立派なセルフケアのひとつだ。今回は、朝のストレッチがもたらす心身への生理学的効果と、日常に取り入れたい具体的なストレッチを紹介する。

朝のストレッチの生理学的効果

自律神経とは?

そもそも自律神経とは何だろう。自律神経は意思とは関係なく、心臓の拍動・呼吸・食べ物の消化・発汗・血圧など、身体のさまざまな機能を調整する神経のこと。交感神経と副交感神経の2つがあり、活動時には交感神経が、リラックス時には副交感神経が優位に働く。私たちが生きていくために欠かせない働きを自動でコントロールして、健康な状態を維持してくれている。

では、朝のストレッチは身体にどんな効果をもたらすのだろうか。

自律神経系の活性化

睡眠中は副交感神経が優位な状態で、活動を開始するためには交感神経への切り替えが必要になる。

朝のストレッチは穏やかな運動で交感神経を活性化し、心拍数と血圧を上昇させ、活動モードへの移行をスムーズにしやすくする。

血流促進と酸素供給

ストレッチによる筋肉の伸張は血管を拡張し、血流を促進しやすくなる。筋肉への酸素と栄養素の供給が向上し、代謝が活性化する。

柔軟性と関節可動域の向上

睡眠中に硬くなった筋肉や関節をストレッチすることで、柔軟性と可動域が向上する。日中の動きの質が向上し、怪我のリスクが低減する。

神経系の活性化と認知機能向上

ストレッチによって身体のセンサーが活性化し、脳への血流を増加させる。集中力、記憶力、判断力などの認知機能が向上しやすくなる。

ストレスホルモン低減と気分の向上

ストレッチによる心身のリラックスは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を抑制し、セロトニンやエンドルフィンなどの幸福ホルモンの分泌を促進する。結果として、ストレスが軽減され、気分が向上しやすくなる。

日常に取り入れよう!!朝のストレッチルーティン

起床時に取り組むストレッチは身体への負担が少ないシンプルな動作がおすすめだ。背骨と骨盤周辺を中心に大きな筋肉を無理なく伸ばそう。

伸びストレッチ

息を大きく吸い、両手を頭の方へ上げ、足をつま先の方へ伸ばす。

息を吐きながら、手足を遠ざけるように大きく伸ばす。

腰ひねりストレッチ

片膝を立て、反対側の足と交差させる。

手でサポートしながら、膝を床の方へ倒し腰をひねって伸ばす。

お腹のストレッチ

うつ伏せになり、手を胸の横に置く。

手で床を押しながら、上体を反らせてお腹を伸ばす。

背中のストレッチ

よつばいになり、手を肩の真下、膝を股関節の真下に置く。

おしりをかかとに近づけて、背中を丸めて大きな呼吸を繰り返す。

❺ 胸のストレッチ

座った状態で両手を後ろで組む。

胸を張りながら、肘を伸ばし肩甲骨を寄せる。

朝ストレッチの効果を高めるためのポイント

適切なタイミング

起床後30分以内におこなうことが望ましい。ベッドや布団の上でOK

カーテンを開けて朝日を浴びてから、ベッドサイドにコップ1杯の水(200ml250ml)を用意しておき、ゆっくり飲んでからストレッチをおこなおう。

適切な強度

特に朝は筋肉の温度が下がっていて、こわばりやすい。痛みを感じない程度の強度で、筋肉が心地よく伸びる感覚を重視しよう。

適切な時間

各ストレッチを60秒程度保持しよう。呼吸を止めず、ゆっくりとしたペースでOK

継続性

毎朝継続することで、脳と身体が朝に活動するリズムを学習する。習慣化するために、動きたくなくてもまずは身体を動かしてから振り返るのがよい。

まずは2週間継続して、自分のリズムを上書きしよう。

まとめ

朝のストレッチは穏やかな運動で交感神経を活性化し、心拍数と血圧を上昇させ、活動モードへの移行をスムーズにする。

ストレッチによる筋肉の伸張は血管を拡張し、血流を促進しやすくなる。

睡眠中にこわばった筋肉の柔軟性と可動域が向上し、日中の動きの質がよくなる。

身体のセンサーが活性化し、脳への血流を増加させる。集中力、記憶力、判断力などの認知機能が向上しやすくなる。

ストレッチによる心身のリラックスは、ストレスが軽減され、気分が向上しやすくなる。

朝のストレッチは、科学的な観点から見ても非常によいセルフケアのひとつだ。紹介したストレッチを参考に、毎朝の習慣に取り入れてみよう。終わりははじまり。スヌーズボタンを押す自分にサヨナラをして、新たな自分に出会ってみよう。

著者:前田 修平(まえだ・しゅうへい)
NASM-PES、はり師・きゅう師。ストレッチを中心とした身体のセルフケアを学べるYouTubeチャンネル『前田のまいにちセルフケア by GronG』を運営。登録者は29万人以上(※2025年2月時点)。科学的な根拠をもとに、健康的な身体づくりのためのセルフケア方法をわかりやすく伝えている。

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