筋トレ トレーニングメニュー

身体が変わる人たちは知っている!トレーニングメニューの正しい組み方【喜納穂高編(前編)】

トレーニングメニューとは身体づくりの原点と言っても過言ではない。どのような考えで組めばいいのか。何となくのメニュー作りから脱却するきっかけにしてほしい。

※IRONMAN 2024年8月号に掲載された「身体が変わる人たちは知っている!トレーニングメニューの正しい組み方」をWEB用に編集したものです。

中・上級者への指導実績から紐解く
現状打破のためのメニュー構築

喜納穂高

トレーニングを続けていると、壁にぶつかり成長を感じにくくなることもあるだろう。今回は、安井友梨選手や横川尚隆選手といったトップ選手への指導経験のある喜納選手に、伸び悩みの出る中級者以降のトレーニングのポイントについてお話していただいた。

2023年日本男子ボディビル選手権5位
喜納穂高

喜納穂高

きな・ほだか

沖縄県出身。身長173㎝、体重78(オン)86㎏(オフ)、フリーパーソナルトレーナー。クラシックフィジークでは2021年・2022年ジャパンオープン選手権175㎝以下級優勝、2022年はオーバーオールでも優勝。ボディビルでは2022年東京選手権優勝、2023年日本選手権5位、ジュラシックカップグランドクラス優勝

中級者と上級者の基準

ある動作について、自分が正しくできているのかできていないのかが分かるかどうかが中級者の基準だと思います。トップ選手のフォームと初級者のフォームの差が理解できて、それらのフォームと自分のフォームの違いを分析できるかどうかとも言えます。トップ選手のフォームが分かってくると、自分のフォームを客観視して、下手な部分があると感じ取ることができるようになります。このタイミングが、初級者から中級者に成長したタイミングです。自分のことを理解し始めるのが中級者でしたが、さらに上級者になると、できないところを理解した上で、そこに対するアプローチが正しくできるようになります。そうして改善ができると、結果的に競技の成績向上にもつながっていくのではないでしょうか。

中級者や上級者の指導について

指導で一番多いのは、クライアントがどのような動きができていないかを見極めることです。そのため僕のパーソナルでは、トレーニングそのものを見て「追い込む」ことを手伝うというよりは、苦手な種目に対する意見を聞いて、そこから苦手な動きを見つけてあげることが多いです。そして苦手な動きがどのようなものか分かったところで、改善のためのエクササイズの提案やフォームの修正を行います。肩の効きが悪いという相談を受けて改善をする中で、動きが良くなった結果として、他の部位にも良い影響が出てくることもあります。指導で目指しているのは、僕なしでも、クライアントが習ったことを自分で実践できるようにすることです。そのために、まずは動きのベースを整えてあげるという意識も大切にしています。

トレーニングのレップ数やセット数に関しては、自分が実践しているやり方について説明はしますが、基本的にはクライアントが実際に行っているものをベースとして、それを元に考えを膨らませることが多いです。そのため、クライアントが変わればその人たちに対する処方もまるで変わってきます。トレーニングを行ってもらいながら、ピンポイントでフォームや身体の使い方を修正することもあれば、コンディショニングの説明だけで終わる方もいるくらい指導内容には差があります。

最適な分割法を考える

安井友梨選手などトップ選手の指導もする喜納選手

安井友梨選手などトップ選手の指導もする喜納選手

1部位に対する種目数が増えると、どうしてもトップ選手の多くが採用する5分割になっていきます。さらに細かく、胸の上部・中部・下部、収縮種目・ストレッチ種目・ミッドレンジ種目などを考え出すと、その分だけ鍛え分ける必要が出てきます。逆に言えば、上級者は自分の身体を理解しているからこそ、鍛え分けが可能になって種目数も増えるというわけです。

その点を踏まえると身体の動きを完璧に理解しきれていない中級者であれば、5分割以外の分割法でも良いと言えます。部位を基準に分割を考えてみても良いですし、プッシュ・プルのように動作に着目してメニューを組んでも良いでしょう。

フリーウエイトとマシン

クライアントには、フリーウエイトができた上でマシンを行う手順が良いと勧めるようにしています。フリーウエイトにもマシンにも当然それぞれのメリットとデメリットがあると思います。その中で、フリーウエイトの場合は、重力を理解した身体の動かし方を身につけられる点が良いところです。重力のことを考えると、ダンベルプレスやダンベルショルダープレスでは、前腕は地面に対して垂直でなければいけません。この部分が正しく理解できていないと、三頭の張力で支えることになったり、握りが強くなってしまったりして、負荷が別の部位に逃げることになりかねません。この点をデメリットと言う方もいるかもしれませんが、僕の場合は、できるようにならないといけないポイントだと考えています。それが習得できることがフリーウエイトのメリットだと言えます。マシンのプレスは軌道が安定している分、押せば自然と効くイメージですが、正しい身体の使い方の習得には結びつきにくいです。

中級者・上級者の改善のために

トレーニングでエラーを起こさないためにコンディショニングは大切な要素だ

トレーニングでエラーを起こさないためにコンディショニングは大切な要素だ

指導を始めるにあたり、まずは姿勢や身体の動きを確認することから始めるのは前にも述べました。そこから、必要な可動域を有しているかというようなこともチェックします。胸であれば、胸椎の伸展や呼吸がうまくできているかなども調べるポイントです。そうして実際にフォームを見ていくと、その人がどのようなエラーを抱えながら動作しているかも見えてきますので、その原因を探るのが処方の一つとなります。

中級者や上級者がステップアップのために獲得したいのは、ヒップヒンジ動作やトリプルエクステンション・トリプルフレクション、腹圧などです。

メニューの構築という観点では、フリーウエイトは必ずメニューに組み込むようにしたいです。さらにそれに加えて、ディップスのような末端が止まっている状態で身体側が動くような種目も、身体の機能面を考えると入れた方が良いかなと思います。僕の場合は、ベンチプレス、ダンベルフライ、ディップスがメインの3種目となっています。背中で言えば、チンニングも自分の身体が動くタイプの種目だと言えます。

脚のトレーニングに目を向ける場合は、フィジーク選手であっても、ルーマニアンデッドリフトやブルガリアンスクワットは取り入れるべきだと思っています。これらの種目が良いフォームでできるように訓練していくと、股関節が正しく動かせるようになります。ブルガリアンスクワットは、股関節、膝関節、足関節が関与しますが、これをしっかりと股関節主導で行えるようにしたいです。そうすると、後に他の種目でチーティングを取り入れる際にも生きてきます。膝の動きもチーティングの中にはありますが、あくまでも動きの主体は股関節からだと考えています。股関節をうまく動かせない人は、チーティングもうまくできないというイメージはあります。ブルガリアンスクワットのような片足重心の種目はより地面を知覚しやすくなるため、感覚的な部分もより発達させやすくなるのではと思っています。基本的で正しい動きを覚えるという中級者の課題を考えると、ルーマニアンデッドリフトとブルガリアンスクワットの2種目は非常に良いのではないでしょうか。

どの種目でも大切になる腹圧に関しては、座った状態で息を吐いたら鼻から大きく吸い、その状態でお腹を「ぐっ」と固めるような意識を持つイメージを持つ練習が始めやすいと思います。まずは座った状態でこの呼吸ができると良いでしょう。

取材・文:舟橋位於 写真:IRONMAN編集部、田中郁衣、Ap,inc.

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佐藤奈々子選手
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