トレーニング科学の分野では、さまざまな理論やメソッドが日々開発されているが、アスリートやボディビルダーにとって、自身の目的や環境に最適なメニューを見極めるのは容易ではない。
だからこそ、多様な選択肢の基本特性を正しく理解し、自らに適したものを取捨選択していくことが重要である。
そこで本記事では、米国の著名フィットネス誌が紹介した「PHAトレーニング」に関する報告をもとに、その画期的な仕組みと効果について分かりやすく解説する。
(IRONMAN2026年6月号「from IRONMAN USA」より転載)
PHAトレーニング法とは
血流を整え、循環を良好に保つことは非常に有用なことだ。健康維持だけでなく疲労回復の促進、アスリートの競技能力向上、そしてボディビルダーが筋発達を促す際にも血流(循環機能)はとても大切な要素になる。血流量を増やすには「湯船に浸かる」「サウナに入る」「有酸素運動行う」といった方法が思い浮かぶが、今回は血流を全身へ効率的に巡らせる方法としてPHAトレーニングを紹介したい。
PHAとはPeripheral Heart Action(末梢循環型運動)を略した言葉で、PHAトレーニングは、できるだけ身体の抹消まで血流を行き渡らせるための運動法のことを指す。この運動法は高い強度を伴うため、別名デスサーキットと呼ばれることもある。PHAトレーニングの起源をたどると、20世紀中頃に運動生理学者のアーサー・スタインハウス博士によって考案されている。
その後、1960年代にミスター・アメリカのボブ・ガジャ(Bob Gajda)氏がボディビル界に紹介したことで、アメリカやカナダを中心に急速に普及した。
しかし、PHAトレーニングは非常に強度の高い運動法なので、本格的にトレーニングに取り組む人には導入されたが、一般的なフィットネスレベルの層にはあまり受け入れられなかったため、これまで商用フィットネス施設で実践されている風景を目にすることはほとんどなかった。

PHAトレーニングは、心臓から強い拍出力で血液を送り出し、全身に勢い良く血流を巡らせることを目的とする複数の種目を組み合わせたサーキットトレーニングである。脂肪燃焼や心肺機能の向上をサポートするのはもちろんのこと「循環器系への適切な負荷による機能向上」という点において、PHAトレーニングは単なるサーキットトレーニングとは一線を画している。
その他にも、体脂肪の減少への寄与、心肺機能の向上、疲労回復能の改善、エネルギー供給持続時間の延長、さらには運動能力の向上といった効果が期待できる。
PHAトレーニングが効果的である理由
PHAトレーニングの運動強度は、選択した種目で扱う重量は1RMの50~70%に設定するのが標準的だ。また、上半身と下半身の種目を交互に行うのも特徴の一つだ。
さらに、4~6回程度のサーキットを繰り返すのが一般的で、休憩時間も短く制限される。そのため、トレーニング強度は必然的に高くなり、全身の血流量を増やし、勢い良く血液を身体の末端にまで送り込むことができる。その結果、対象筋では短時間で乳酸が蓄積し、それに刺激されて成長ホルモン分泌の促進も期待できると考えられている。
PHAトレーニングのやり方
PHAトレーニングは、実施方法の基本をマスターすれば自分なりにアレンジすることも可能だ。トレーニングで意識することは「十分な負荷をかけること」「上半身と下半身の種目を交互に行うこと」「可能な限り連続して動作を続けること」「最小限の休息にとどめる」ことが挙げられる。

一般的には4~8種目を選択して一つのサーキットメニューをつくるが、慣れてくればレップ数、使用重量、種目数、総サーキット数などを増やすことで強度を高めることができる。初めて行う場合はいずれも少なめに設定し、慣れるにつれて強度を少しずつ上げていくようにするといいだろう。
【PHAトレーニング例】
| ①スタンディング・バーベルグッドモーニング | 8~10レップ+休憩60秒間 |
| ②ワイドグリップ・チンニング | 8~10レップ+休憩60秒間 |
| ③レッグプレス | 20~25レップ+休憩60秒間 |
| ④バーベルミリタリープレス | 10~12レップ+休憩60秒間 |
※①~④の種目を1セットずつ行って1サイクルとし、合計で4サイクル行ってワークアウトを終了する。
編集注
本稿で紹介したプロトコルでは休憩時間が60秒となっているが、末梢への血流を絶やさないよう種目間の休息を最小限(15~30秒程度)に抑えるのが一般的であることが多い。
PHAトレーニングの組み込み方

ワークアウトのたびにPHAトレーニングを行う必要はない。ボディビルディングで生かしていくなら減量期、もしくはディローディング期(高強度トレーニングを一定期間にわたって続けてきた人が、次のレベルにステップアップするための準備として運動強度を少しだけ下げて、身体に蓄積した疲労を完全に回復させる期間のこと)に限定すると良いだろう。
もし、PHAトレーニングを普段のトレーニングプログラムに組み込むなら、週1回程度に限定し、有酸素運動を行う日の代わりにPHAトレーニングを行うと良いだろう。くれぐれも連続した日にPHAトレーニングを行わないように注意したい。
加えて、PHAトレーニングは、できるだけパートナーとペアを組んで行うことをおすすめしたい。強度の高いトレーニング法なので、万一のときはパートナーの助けが必要になるからだ。また、心血管系に既往症がある場合は、実施前に必ず医師に相談してほしい。
HIITとの違い
HIT(High-Intensity Interval Training)との違いはどこにあるのかと思っている人もいるかもしれない。確かにHITも高強度であり、同様のエネルギー代謝や心肺機能への刺激も期待できるが、強いて言えばPHAのほうが強度はやや低めだ。そのため、HITは過酷すぎて敬遠しているトレーニング愛好者でも、PHAならできる可能性がある。
本稿ではアスリート向けのPHAトレーニングを紹介したため、トレーニング歴が浅い人には推奨しないと述べたが、PHAトレーニングを低負荷にして、高齢者やリハビリ用途にアレンジして採用しているケースもあり、トレーニング強度を自分のレベルに合わせて調節すれば幅広い層で活用を検討できるトレーニング法なのである。

PHAトレーニングを行う際の注意事項と心がけるポイント
循環・心血管を刺激するためのPHAトレーニングは、全身の隅々にまで血液を行き渡らせるため心肺機能向上のサポートはもちろんのこと、疲労回復、代謝機能の向上、脂肪燃焼を助ける効果なども期待できる。
ただし、トレーニング歴が長い人であってもPHAトレーニングはかなりきついと感じるはずだ。そのため、最初からいきなり高重量やハイレップで行う、サーキット数を増やしすぎるといったことがないように、レベルは徐々に上げて効果を引き出していきたい。
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