日本でもフィットネスが盛んになってきたが、どの情報を信用すればよいのか迷っている人も多いのではないだろうか。そこでIRONMANのネットワークを生かし、フィットネスの本場・アメリカの耳寄り情報をお届けする。これを読んで、諸君のボディメイクに生かしていただきたい。
※IRONMAN 2024年8月号に掲載された「PICK UP from IRONMAN USA」をWEB用に編集したものです。
水こそ筋発達の源!こまめな水分補給を
The Importance of Hydration and Exercise from Iron Man Magazine 2024 Spring
水の役割
関節の潤滑、有毒物質の除去、栄養素の運搬、エネルギー供給のための消化サポート、代謝プロセスの維持
水分補給(ハイドレーション)とは、体に水分を補給して体内水分量を適切に保ち、身体を正常に機能させて健康な状態を持続させることを指す。ちなみに、ここでの水分とは普通の水のことだ。
水は私たちの体を潤す主要な構成要素だ。平均すると、私たちの身体の60%は水でできており、筋肉だけでなく脳や循環器系に至るまで、ほとんどすべての身体システムに影響を与えている。結局のところ、水がなければ私たちの身体は機能しないのだ。
トレーニングでの水分補給の目安
1日に必要な水分摂取量は、その人の年齢、体重、活動レベル、健康状態、さらに気候などの影響も受ける。
定期的に運動を行うアスリートの場合、運動中の発汗によって多くの水分が失われるため、必要な水分摂取量は平均的な人よりも多くなる。
水分摂取目安量 ※米国運動評議会推奨
運動の2、3時間前
17~20オンス(503~591ml)
ウォームアップ中または運動開始の30分前
8オンス(236.5ml)
運動中
10~20分ごとに7~10オンス(207~295.7ml)(強度による)
運動終了後
30分以内に8オンス(236.5ml)
※水分を多く消失してしまう病気(糖尿病や心臓病、のう胞性線維症など)の患者については医師のアドバイスに従うようにしよう。
脱水症とは
脱水症は、体内に取り込んだ水分量よりも多くの水分が失われたときに起こる。水分が失われるのは発汗だけでなく排尿、呼吸、排便なども影響する。
脱水症は、トレーニング・競技中は特に警戒しなければならない。というのも、運動中の水分補給を怠ると発汗するための水分が不足し、体温を調整する機能がうまく働かなくなるからだ。
もちろん、汗とともに電解質も失われるため、様々な身体機能が停滞することになる。最悪の場合は意識不明に陥ることもあるのだ。
体温上昇による疲労、腎臓の機能不全、熱中症、発作、そして昏睡状態などを予防するためにも、アスリートは人一倍多くの水分補給を心がけなければならない。
何を飲む?
一切の風味や物質が添加されていない水が理想だが、ハーブティーやココナッツウォーター、果物などからの抽出水(インフューズドウォーター)、もしくは水分量が多い野菜やスイカなどを摂取することも水分補給になる。
味のついていない水ばかりを飲み続けるのがつらいなら、ときどきはそれ以外の水分を飲んでも問題ない。研究によると、水分補給をしっかり行うためには、全体の80%を水やその他の水溶液(前述したような飲料)から摂り、残りの20%は水分量が多い食物から摂るようにするのが良いということだ。
脱水症の7つの症状
尿の色が濃くなる、排尿回数が減る
水分の不足によって腎臓に蓄えられている水分量も少なくなるが、体外に排せつされる老廃物の量は変わらない。つまり、少ない水にたくさんの老廃物を溶かして排せつするから尿の色が濃くなるのだ。
また、トイレに行く回数がふだんより明らかに少ないと感じるときも、やはり脱水症に陥っている可能性が高い。そういう場合も積極的に水を飲み、体内水分量を増やすといいだろう。
運動中に発汗量が減少する
運動中に発汗するのは、運動によって上昇した体温を調整するためだ。発汗しないと体温はどんどん上昇してしまい、そのまま下がらなければ身体機能の多くが停滞してしまうことになる。
もちろん、発汗したらその分の水分(あるいはそれ以上の水分)を確実に補給する。とはいえ、どれだけ発汗したかはわからないので、日頃から汗をかいたら水を飲むという習慣をつけておくようにしたい。
喉の渇き
喉が渇いたと感じたら、それは身体が脱水症に陥る合図なのですぐに水分を補給しよう。そのまま放っておくと脱水症になる可能性が高くなる。
国民保険サービス(NHS)によると、塩分が多い食物を食べたり、運動を行ったり、お酒やカフェイン飲料を飲んだりすると、多くの人が喉の渇きを感じるそうだ。どんな理由であっても喉が渇いたと感じたら、それは身体が発する緊急事態と考えたほうがいいだろう。
口中や唇の渇き&乾燥
脱水症に陥ると、身体は生体維持に不可欠な水分を温存しようとする。その結果、唾液の分泌量が減少するので口中の渇きが強まり、同時に口中のpHバランスも崩れてくる。
口の中や唇がやたら渇いて不快に感じ始めたら、脱水症の始まりと考えていいだろう。本来ならそうなる前に水分補給をすることが必要なのだが、もしそういう状況に陥ったなら何よりも先に水を飲んで渇きを解消することを優先してほしい。
疲労感の増加とエネルギーレベルの低下
水分摂取を怠ると身体的にも認知的にも機能が低下し、疲労感や脱力感が増し、エネルギーレベルが低下してしまう。
適切な栄養を摂取しながら計画的なトレーニングを行っているにもかかわらず、疲労感が抜けない、思ったような結果が得られないという場合は、トレーニング中、もしくは日頃の水分摂取が十分かどうかを確認してみよう。実際、水分の不足が不調の原因になっているケースは少なくないのだ。
骨・関節への負担、筋肉のけいれん
骨や関節を保護する軟骨は衝撃を吸収する役割を担っており、その80%は水でできている。つまり、体内が潤っていれば、軟骨は衝撃吸収の役割を果たすことができる。
しかし、脱水症で体内の水分が低下すると、軟骨までもがその機能を十分に果たせなくなってしまう。そんな状況のときに高重量の種目を行ったらどうなるだろうか。想像しただけで恐ろしい話だ。
また、鉄分、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは汗とともに失われる。脱水症になり、体内のイオン物質が不均衡な状態になると、筋肉の機能にも異常が見られるようになる。代表的な例が筋肉のけいれんだ。筋肉のけいれんは不快感を伴うだけでなく痛みが起きることもあるので十分な注意が必要だ。
頭痛
脱水症になると頭痛が起きたり、あるいはすでにあった頭痛が悪化したりする。これは、脱水症が起きると身体は血管を収縮して血流量を制限しようとするからだ。脱水症による血流制限は、筋肉周辺だけでなく脳内でも起きる。
血流量が制限されるということは、血液による酸素や栄養物質の運搬が制限される一方で、老廃物の除去は停滞してしまうことを意味している。つまり、痛みを起こしている物質も体内にとどまることになってしまうのである。
スポーツ飲料のメリットとデメリット
メリット
ナトリウムやクロライド(塩化物)、マグネシウムのような電解質が含まれている。これらは体内水分量のバランスを整えたり調整したりする役割を果たす。
デメリット
素早くエネルギー源として利用できる物質も含まれている。つまりカロリーも含まれている。
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運動の程度によって利用するタイミングをあらかじめ決めておく。炭水化物の含有量が少ないものを選べば、トレーニング中に胃腸の不快感に悩まされることはない。うまく活用すれば、高強度ワークアウトや持久系トレーニングの疲労を遅延させることができるはずだ。
身体を潤すのに最適な飲料は水だが、高強度トレーニングや持久系運動を行う際はスポーツ飲料も選択肢に入れていいだろう。一般的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウムが含有されているスポーツ飲料を選択する。発汗によって失われるこれらのミネラルをしっかり補えれば、筋機能の低下を防ぐのに役立つはずだ。
運動中のNG飲料は?
甘い清涼飲料水やエネルギー飲料
砂糖が多く含まれる飲料は避けよう。甘い飲料は血糖値を急速に高め、その後、急速に低下させてしまう。そのため、運動中に飲むと集中力が失われてしまう可能性も考えられる。また、脱水症の原因にもなりやすいので注意しよう。
カフェイン飲料
カフェインには若干利尿作用があるため、体内の水分が失われやすくなる。
フルーツジュース
フルーツジュースには天然の糖がたくさん含まれており、しかもカロリーが高い。このような飲料をたくさん飲んでしまうと血糖値の急上昇と急下降を招くので、運動中は敬遠しよう。
アルコール
運動中にお酒を飲むのはもちろん論外だ。説明するまでもないが、アルコールを飲むと排せつされる尿の量が増える。
つまり、体内の水分が抜けやすくなり、脱水症になる可能性が高まるので、運動中の飲み物としては完全に不適切であると言えるのだ。
参考文献
https://www.ironmanmagazine.com/the-importance-of-hydration-and-exercise/
文:IRONMAN編集部