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バルクアップのための食事では何が大切?(実践編)

バルクアップ前回の記事では、バルクアップのための食事基礎知識編として、カロリーと三大栄養素について解説しました。効率良くボディメイクを進めるためには、正しく基本を押さえた上で、自分にあった応用をしていくことが大切です。今回は基礎知識編を踏まえた上で、実際にどのようなことを考えながら計画を立てれば良いかを解説します。

目次)
バルクアップにおける食事で意識したいポイント
 自分に必要な栄養の量を正しく把握する
 クリーンバルクとダーティバルク
サプリメントの活用
バルクアップする期間を決める
まとめ
引用

バルクアップ中の食事で意識したいポイント

筋肉を増やして身体を大きくしたいと考える場合、トレーニングと同じくらい大切なのが食事です。いくらハードにトレーニングしていても、栄養面に不足があれば筋肉の発達は理想的にはならないでしょう。バルクアップのために意識したいポイントを複数紹介しますので、自分の現在の状況と照らし合わせて、改めて内容を見直すきっかけにしていただければと思います。

自分に必要な栄養の量を正しく把握する

バルクアップ基礎知識編でも触れましたが、人によって必要な栄養素の総量は変わります。必要なエネルギー(カロリー)は、体重や年齢、活動量等によって大きく異なります。また、三大栄養素であるたんぱく質・炭水化物・脂質も、その人の状態によって必要量が変わります。トップ選手の食事から学べる部分は多いですが、全てを真似するのではなく、自分に合いそうな部分から取り入れていくのが良いでしょう。摂取カロリーを例に挙げると、トップ選手は4000から5000キロカロリーを摂取している場合があります。しかしながら、自身の筋量がそれらの選手に及ばないのであれば、いきなりこのカロリーの摂取を目指すのではなく、少し抑えた量から始めて様子を見るのが得策です。三大栄養素に関しては、その総量だけではなく、どのような食品から摂取するかということも大切になります。色々な食材を試して、自分の体質に合った組み合わせを見つけることもボディメイクでは重要です。

クリーンバルクとダーティバルク

バルクアップ余分な脂質の摂取を抑えた、”clean” すなわち「綺麗な」食事内容でバルクアップを狙うのがクリーンバルクの考え方です。それに対して、油物の制限等をせずに体重を増やしていくことを考えるのがダーティバルクです。クリーンバルクの食事内容は簡素なものになるため、人によっては継続が難しく感じられることもあるかもしれません。一方のダーティバルクは、厳しい食事制限がないためストレスなく取り組めますが、クリーンバルクと比べると体脂肪が増えやすい特徴があります。

クリーンバルクとダーティバルクのどちらが良いかについては、トップ選手でも意見が別れます。2022年日本ボディビル選手権2位の嶋田慶太選手は、「脂肪がつくとトレーニングの質が落ちてしまうので、クリーンな食事を続けて脂肪を乗せすぎないよう筋肉を大きくすることが理想だと思います。」と述べています(1)。一方で、2019年日本ボディビル選手権7位入賞の髙梨圭祐選手は、「食事は脂肪のことは気にせずに、好きなものを好きなだけ食べていました。タンパク質をしっかり摂るということは気を付けていましたが、他は気にせず好きに食べていました。」と言っています(1)。

クリーンバルクとダーティバルクのどちらが良いかを決めつけるのではなく、自分の体質を考えながら方針を決めると良いのではないでしょうか。代謝が高く、食べてもなかなか太れないならば、ダーティバルクでカロリーを稼ぐやり方が合っているかもしれません。逆に、脂肪が付きやすいタイプであるならば、食事の内容は吟味した方が良いでしょう。

サプリメントの活用

サプリメントを活用することで、食事だけでは不足する分の栄養素を効率良く摂取することができます。サプリメントを過信して食事が疎かになるのは良くないですが、サプリメントに無知であるために有効な手段を逃すことも避けたいです。今回は、バルクアップに効果がある代表的なサプリメントを紹介します。

>>プロテイン

バルクアッププロテインは牛乳や大豆等からたんぱく質を抽出して粉末状に加工したサプリメントです。たんぱく質は筋肉の材料そのものであるため、バルクアップを考えるならば豊富に摂取することが必要な栄養素です。プロテインを活用することで、食事だけで必要量を摂取できない場合のサポートをすることができます。

>>炭水化物サプリ

吸収しやすい形に作り替えられた炭水化物がサプリメントとして販売されています。効能としては、運動中や運動後の速やかなエネルギー回復が期待できます。また、糖質を吸収する際に放出されるホルモンであるインスリンは、筋たんぱく質の合成を促すとされています(2)。プロテインに炭水化物サプリを混ぜて摂取することで、筋肥大の効率を高められる可能性があると言えるでしょう。

>>ビタミンミネラル

バルクアップビタミンミネラルのサプリメントは、ドラッグストア等でも簡単に手に入れることができます。ビタミンやミネラルの種類によって機能は様々ですので、今回はバルクアップに関係する代表的なものをいくつか紹介します。筋肉を増やす働きのあるテストステロンの合成には、ビタミンDや亜鉛の十分な摂取が必要とされています(3)(4)。また、食事から摂取したエネルギーを効率よく代謝するためには、ビタミンB群が重要です(5)。普段の食事が偏っている場合は、ビタミンミネラルのサプリを積極的に活用すると良いです。

バルクアップする期間を決める

バルクアップ最後に、バルクアップは期間を決めて行うべきである点を解説します。体重が増えるにつれて使用重量も伸びていくことがほとんどであるため、その楽しさから際限なく増量を続けてしまう方もいるかもしれません。しかしこれは、ホルモンの観点ではあまり効率の良いやり方ではない可能性があります。腹部の脂肪量が増えるにつれて、分泌されるテストステロンの量が低下したとする報告があるため、体重の増やし過ぎは控えた方が良いと言えます(6)。増量する期間や増量幅に期限を設けることで、この体重の増やし過ぎは防止できます。コンテストに出場している方ならば、オフシーズンとオンシーズンの線引きが一つの目安になります。コンテストに興味がない場合は、冬は身体を大きくし、露出する機会が増える夏には体を絞るようなサイクルを作ってみてはどうでしょうか。

まとめ

バルクアップの実践編として、いくつかの観点から解説をしました。基礎知識編にあるような内容を確実に理解した上で、自分に適した方法を探っていくことが実践では重要です。トップ選手の情報を参考にしつつ、自分の状態に合わせて適宜調整するのも良い戦略です。闇雲にバルクアップを考えるのではなく、ある程度計画的に進めることができると、今よりさらに高い効果が得られるかもしれませんね。

執筆者:舟橋位於(ふなはし・いお)

1990年7月7日生まれ
東京大学理学部卒(学士・理学)
東京大学大学院総合文化研究科卒(修士・学術)
NSCA認定パーソナルトレーナー
調理師

東京大学在学中に石井直方教授(当時)の授業に感銘を受け、大学院は石井研究室で学ぶ。団体職員等を経て、現在は執筆業務および教育関連事業にて活動中。得意な執筆ジャンルは、運動・栄養・受験学習。

引用

(1)アイアンマン2022年2月号「一番デカくなったトレーニングと食事法」

(2) Tipton KD, Wolfe RR. Exercise, protein metabolism, and muscle growth. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2001 Mar;11(1):109-32.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11255140/

(3)Monson NR, Klair N, Patel U, Saxena A, Patel D, Ayesha IE, Nath TS. Association Between Vitamin D Deficiency and Testosterone Levels in Adult Males: A Systematic Review. Cureus. 2023 Sep 24;15(9):e45856.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37750061/

(4)Xiao L, Yang C, Gu W, Liu R, Chen D. Associations between serum copper, zinc, selenium level and sex hormones among 6-19 years old children and adolescents in NHANES 2013-2016. Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Sep 12;13:924338.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36171898/

(5)厚生労働省|ビタミン

(6Han S, Jeon YJ, Lee TY, Park GM, Park S, Kim SC. Testosterone is associated with abdominal body composition derived from computed tomography: a large cross sectional study. Sci Rep. 2022 Dec 29;12(1):22528.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36581676/

 


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