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「クリーンバルク vs ダーティバルクの違い」管理栄養士が解説する"健康的に筋肉を増やす"ために必要な考え方とは?

一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手の“食”をサポートする管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)が、増量期に取り組むべき「クリーンバルク」の考え方について解説します。

増量期(バルクアップ期)になると、筋肉を増やすために食事量を増やす選手が多くなります。その中でも特に議論されるのが、「クリーンバルク」か「ダーティバルク」か?というテーマです。

実際、ボディビルダーの嶋田慶太選手もインタビューでこう語っています。
「バルクアップは筋肉を増やすことなので、クリーンな食事を年間通して続けて、適切なトレーニングを行うことを意識しています。必要なタイミングで必要な食事量を取ることがクリーンバルクには大切だと思い実践しています。」

嶋田慶太のおすすめバルクアップ法「クリーンな食事を続けて脂肪を乗せ過ぎないよう筋肉を大きくする」 | FITNESS LOVE(フィットネスラブ)

トップ選手の多くがクリーンバルクを支持する理由を、管理栄養士の視点から分かりやすく解説します。

クリーンバルクとは

余計な脂質や加工食品を避けながら、総摂取カロリーを適度に増やして筋肉量アップを狙う増量方法です。
・高たんぱく+適度な炭水化物
・脂質は「質」を選ぶ(不飽和脂肪酸中心)
・消化に優しく、胃腸の負担を減らす
・体脂肪を必要以上に増やさない
筋肥大を目指しながら、脂肪の増加を最小限にできるのが特長です。

ダーティバルクとは

食べるものを気にせず、とにかくカロリーを多く取る方法。
・揚げ物
・菓子パン
・ジャンクフード
・お菓子・アイスクリーム
・加工肉・揚げ物
など、脂質や塩分が多い食品も制限せずに食べます。
短期間で体重は増えますが、筋肉より脂肪が急増するリスクが高く、健康面にも悪影響が出やすい方法です。

ダーティバルクの健康リスク

① 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の取りすぎ

ダーティバルクの中心となる揚げ物・ファストフードは、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸が非常に多いのが特徴。
これらは
・循環器疾患のリスクの上昇
・血中LDLコレステロール増加
・血中HDLコレステロール減少
など、健康に大きな悪影響を与えます。

参考:脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響:農林水産省

② 塩分過多による血圧上昇

外食・加工食品は塩分が極めて多いため、
・血圧上昇
・腎結石や骨粗鬆症、胃がんなどのリスク
といった問題が起こります。

厚生労働省が推奨している日本人(成人)の食塩摂取量の目標値は、男性は7.5g/日未満、女性は6.5g/日未満です。
例えばカップヌードル1個とチーズバーガー1個の塩分は合計で6.6g、他の食品を含めると必要以上に塩分を取ってしまう可能性があります。

参考:減塩食について|栄養・食事について|循環器病について知る|患者の皆様へ|国立循環器病研究センター 病院
参考:日本人の食事摂取基準(2025年版)
参考:日本食品標準成分表(八訂・増補2023年)

③ 加工食品に多い「リン」による骨への悪影響

加工品・インスタント食品に含まれる「リン」は、過剰摂取で
・カルシウム吸収を阻害
・骨密度低下のリスク
を高めることが報告されています。筋力トレーニングで骨に負荷をかける人ほど注意が必要です。

④体脂肪の増加→テストステロン低下

体脂肪の過剰な増加は、男性ホルモン(テストステロン)を低下させる可能性があるため、筋肉を増やしたい増量期でも10%前後を維持できると良いとされています。

⑤エンプティカロリー→栄養不足でパフォーマンス低下

ダーティバルクで多く取られる食品は“カロリーだけ高く、栄養が空っぽ”のエンプティカロリー食品です。その結果、
・ビタミンB群(代謝に必須)
・ミネラル(亜鉛・鉄・マグネシウム)
・食物繊維
・抗酸化物質
などが不足しやすくなります。

さらに、摂取エネルギーが増えると代謝に必要なビタミン・ミネラルの需要も増えますが、供給が追いつかなくなり“隠れ栄養不足”状態になります。その結果、
・疲れやすい
・筋肥大しにくい
・免疫低下
・肌荒れ・睡眠の質低下
など、トレーニーに深刻な悪影響が出ます。

管理栄養士が推奨する「クリーンバルク」の考え方

PFCの比率は「個人差」が大きく、固定した数値を万人に当てはめるのは適切ではありません。
(過去の記事で解説した通り、たんぱく質比率20%以上の過剰摂取は腎臓や体への負担が生じやすいため注意が必要です。)

参考:「タンパク質を取ればすぐに筋肉はつきますか?」アスリートも知るべきタンパク質の落とし穴【管理栄養士が答えるタンパク質のQ&A】 | FITNESS LOVE(フィットネスラブ)

そのため、今回は比率よりも“考え方と食材選び”を中心にした内容を推奨します。

クリーンバルクの実践ポイント

①余計な脂質を避け、必要な脂質だけ取る

・魚(サバ・鮭・マグロ)
・オリーブ油・アマニ油
・ナッツ
→不飽和脂肪酸中心

避けたい:揚げ物、菓子パン、スナック、加工肉

②たんぱく質は食品が中心(20%前後におさめる)

・鶏胸肉
・赤身肉
・魚
・卵
・大豆製品
過剰摂取は腎臓への負担や脱水につながります。

③ 炭水化物は「質」を選ぶ

・白米
・うどん
・パスタ
・芋類
→多糖類中心で、消化に優しくエネルギー源として優秀。

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④ 1日の総カロリーは「少しだけプラス」に設定

メンテナンスカロリー(体重維持カロリー)+200〜400kcal程度の上乗せが目安。急激に増やさないことが、脂肪の増加を防ぐポイント。

まとめ

・ダーティバルクは体重は増えるが、健康リスクが大きい
・飽和脂肪酸、塩分、加工食品の取りすぎは控える
・クリーンバルクは「筋肉を増やしながら、健康を守る」増量法
・PFC比率は“人によって異なるため幅を持たせる”のが現実的
・大切なのは「質の良い食材」と「少しのカロリーオーバー」

筋肉を増やすうえで、体重だけでなく“健康”を守ることも欠かせません。ぜひクリーンバルクという考え方を取り入れながら、理想の身体づくりに活かしてください。

■著者プロフィール

申泰鎮(シン・テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。現在はボクシングジムや大学ラグビー部で、増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを実施。競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・身体づくりに関する実践的な支援を行う。執筆や講演活動も多数。

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