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筋肉は一日にして成らず!サプリメントマスター 桑原流・ボディメイキングの鉄則 ~ボディメイクのための抗異化のススメ~

ボディメイクにおいては、筋肉を「つける」だけではなく「減らさない」ことも大切です。
今回は、大切な筋肉を分解させない「抗異化」について、その仕組みと効果的な対策をお伝えします。

※Woman's SHAPE&Sports vol.28に掲載された「筋肉は一日にして成らず!サプリメントマスター 桑原流・ボディメイキングの鉄則 ~ボディメイクのための抗異化のススメ~」をWEB用に編集したものです。筋肉は一日にして成らず!サプリメントマスター 桑原流・ボディメイキングの鉄則 ~ボディメイクのための抗異化のススメ~

 

POINT1.異化とは? その仕組みを知ろう

異化とは? その仕組みを知ろう

ボディメイクをしている読者の皆さんは、筋肉をつけたくてトレーニングに日々励んでいることと思います。プロテインやアミノ酸を飲んで、トレーニングをして、筋肉は「つける」イメージですよね。しかし、筋肉は「つける」のも大事ですが、「減らさない」ことも同じくらい大事なんです。特に女性は、筋肉を減らさないことを意識してほしいと思っています。

体の材料になるのは、20種類のアミノ酸です。アミノ酸は、体内で使われるのには優先順位があり、例えば髪の毛と内臓だったら内臓が優先されます。皮膚よりもやっぱり内臓が大事。では筋肉はというと、残念ながら優先順位は必ずしも高くありません。内臓を動かす筋肉や歩く筋肉といった、日常生活のために最低限の筋肉は優先されますが、ボディメイクのための高負荷をかけて作る骨格筋は、生物としての優先順位は意外にも低いんです。

私はよく、筋トレのことを「重力の錯覚」と呼んでいますが、重力に抗うための筋肉は最低限つくけれど、それ以上は体に錯覚を起こさせる、つまり体が必要性を感じないとつかないもの。それがウエイトトレーニングです。そうやってついた筋肉は、本来なくても生きていけるので、優先順位は低い。つまり逆に言えば、筋肉は犠牲になりやすいのです。

一方で、筋肉のなかでは同化(合成)と異化(分解)が綱引きをした状態にあります。同化とは、小さな(単純な)物質が大きな(複雑な)物質に変わっていくことで、異化は大きな物質が小さい単純な物質に変わること。例えば、光合成は二酸化炭素や光や水といった小さな物質がブドウ糖という大きな物質になるので、同化です。ものを食べると、体内で分解されてアミノ酸になるので、これは異化。両者は常にセットでバランスをとっています。骨格筋的には、同化が優位だと筋肉は大きくなるし、異化が勝っていると筋肉は減る。この綱引きの状態を、体全体で1日200~300gの間で繰り返しています。

同化は体や筋肉を作ることで、必ずATPが必要になります。逆に異化は、エネルギーを生み出している。つまり、異化によって作られたATPが、同化によって使われているのです。

同化の材料は3つあり、ひとつは食事です。栄養を外から摂っています。2つ目は、体内で合成すること。非必須アミノ酸がつくられて、必要な材料を取り入れています。最後の大事な供給源は、体の分解です。食事は大事ですが、実は食事由来よりも、体の分解から取り出すほうが多いんです。ですから、ここをコントロールすることは、異化を抑えることにもつながります。

また体タンパクの分解には大きく2種類あります。オートファジー(自食作用)と、もうひとつはユビキチンプロテアソーム系という分解のプロセスです。オートファジーは、飢餓状態のときに全身の細胞が分解してエネルギーをつくること。ユビキチンプロテアソームは酵素の名前で、体内で不要なものができたときに、それを分解するもの。どちらも大事な機能です。ただ、先ほどから強調しているように、筋肉は分解しやすい器官です。同化と異化の綱引きのなかで、骨格筋の異化を抑えるためにはどうしたらいいでしょうか。これが今回のテーマです。

POINT2.抗酸化のために大切な基礎

抗酸化のために大切な基礎

圧倒的な抗異化の効果をもつ栄養素は糖質です。糖は、体が動くためのエネルギーど真ん中といえる栄養素。糖質が体内にあるということは、「これでATPを作ればいいから体を分解しなくていい」という合図にもなります。

しかし、減量のときは糖の摂取を抑えることもあると思うので、そのバランスが難しいところです。そこで、減量時の糖質摂取の提案としては、トレーニングに絡めること。トレーニングは、生命維持のためなら本来やらなくてもいいことであり、そこでATPを消費しているのだから、骨格筋を材料としないようにするために、糖を入れてあげるのです。

おすすめなのはCCDのようなハイポトニック系の糖質飲料です。運動中に糖をとってしまうと脂肪が燃えないと思っている人も多いと思いますが、トレーニング中にCCDをとるのは、筋肉を守るためにかなり効果的です。

あとは、トレーニング直後にバナナやゼリー、マルトデキストリンといった良質な糖を摂取してください。EAAやグルタミンといったサプリメントも活用して、筋肉を分解させないようにすると、ひいては筋肉を大きくすることにつながります。糖質に関しては、相当優先順位を上げて、トレーニング中と直後に補給したほうがいいでしょう。減量期であっても、糖質補給は最後までがんばってほしいところです。

もうひとつ大切なのは、ビタミンの摂取。ビタミンはいろんな代謝の過程で使われていますが、特にB群はマルチでとってほしいビタミンです。疲労回復でいうと大切なのはB1ですが、あえて抗異化を考えると、マルチでとる前提で、B6が重要。ピリドキサールリン酸といって、タンパク質の代謝に必要不可欠なものです。抗異化でいうと、いかにアミノ酸の代謝をスムースにするかもカギになるので、B6が足りないとブレーキがかかってしまうのです。

また、水分も基本的にはしっかり補充しないと、反応が鈍くなります。異化は決して悪いものではないのですが、エネルギーを作るために簡単に進んでしまうので、骨格筋の異化を抑える発想では、大前提として水はおさえておいてください。

筋肥大にしても減量にしても、ATPを作る効率は落ちます。いかにエネルギーがスムーズに作られるか。まずはそれをしっかり確保することが、抗異化を進める上でも重要です。骨格筋の異化のスタートは、ATPを作るために起こります。つまり、異化を起こさないためには、体内で本来の材料からATPを作られやすくすることが大事なのです。

そのために、まずは食事のPFCバランス、微量栄養素(ビタミン・ミネラル)の充足を見直してみてください。さらには、電子伝達系を意識して、ヘム鉄、CoQ10。これらを整えてATPを作られやすくした上で、抗異化対策をスタートさせましょう。

POINT3.抗酸化のための対策とは

抗酸化のための対策とは

では、抗異化にはどんな対策が必要なのでしょうか。ひとつは、血中アミノ酸濃度を維持すること。血液中のアミノ酸が高ければ、まずはそこからアミノ酸が利用されるので、筋肉の分解は後回しになります。血中アミノ酸濃度は一定になるように保たれているので、外からとるものが少ないと、体を分解して維持することになります。

そのときに、優先順位でいうと、筋肉が真っ先に分解されてしまいます。なぜなら、髪の毛も皮膚も内臓よりは優先順位が低いのですが、アミノ酸構成率が低く、利用されるアミノ酸が少ないからです。筋肉は栄養価の高いアミノ酸で構成されているので、ある意味アミノ酸の倉庫のようになっています。そうさせないようにするために、血中アミノ酸濃度をどう保つかが抗異化のポイントになるのです。

血中アミノ酸濃度を高く保つためにできる対策のひとつは、食事でタンパク質をしっかりとること。食事でまかないきれない部分は、プロテインやEAAといったサプリメントを利用しましょう。サプリメントはここで価値を発揮します。注意点として、EAAは血中アミノ酸濃度をすばやく高めますが、そのぶんだけすばやくなくなります。そのため、食事でのタンパク質補給を大前提としたうえで、足りない部分はプロテイン、さらにEAAといった順番で摂取してみてください。

2つめの対策としては、グルタミンの摂取です。グルタミンは、体内の6割を占めるアミノ酸。なぜたくさんあるかというと、それだけ利用されるからです。ほかのアミノ酸と大きく異なる特徴は、グルタミンはアミノ基(―NH2)を2つもっていること。アミノ基を2つもっているということは、1つをほかのアミノ酸をつくるために使えるということです。

グルタミンは、ほかのアミノ酸をつくるのに利用されるなど、体内のあちらこちらで使われるので、消耗度も激しい。非必須アミノ酸なので体内でも作られますが、筋肉の細胞のなかで最も活発に作られています。そして血中のグルタミンを保つために、筋肉から血液中に放出されます。つまり、筋肉で作るグルタミンが足りなくなると、筋肉自体が分解され血液中に取り込まれるということ。これはまさに異化作用であり、とてもよく起こります。グルタミンを飲むと抗異化にいいのは、そういう理由からなのです。

実際、血液中と筋肉内とでグルタミンの濃度を比較すると、筋肉内のほうが低くなるケースがよく起きています。よって、体内のグルタミンが足りなくならないように補充するのは、抗異化によいといえます。

3つ目はBCAA。どちらかというとアナボリック、つまり同化に必要なアミノ酸というイメージがあるでしょう。事実、ロイシンは筋肉を作る上で非常に大切なアミノ酸ですし、BCAAが筋肉を作る上で効果的であることは間違いありません。

しかし、同化と同等、もしくはそれ以上に異化を抑えるのにも大切なアミノ酸でもあります。なぜなら、BCAAは非常にエネルギーになりやすいアミノ酸だから。BCAAの代謝酵素が筋肉に存在していて、筋肉を使うほど代謝されて筋肉に存在して、筋内にしかない酵素にいくと代謝されるという、エネルギーになりやすい仕組みをもっているので、エネルギー、つまりATPが足りなくなるとBCAAは優先してエネルギーになってしまいます。

これは特に筋肉を動かしているときに起きやすい現象です。運動していると、BCAAが代謝されてATPの材料になってしまう。そこで、グルタミンと同じで、そうさせないために、トレーニングに絡めてBCAAをとると、筋肉の分解を抑えてくれます。

最後はHMBです。HMBは、ロイシンから作られるアミノ酸の一種。HMBまで代謝されていればもはや筋肉の材料にはなりませんが、HMBには強い同化作用があります。骨格筋を作る流れを強くしてくれるので、アナボリックを求める人が飲むサプリメントとして知られていますが、意外に知られていないのが、強い抗異化作用ももっていること。同化が強いと異化が弱まるのですが、それとは別の抗異化作用をもっていて、ユビキチンプロテアソームシステムを弱めます。つまりHMBをとると、ユビキチンプロテアソームが抑制されるので、筋肉分解が抑えられるのです。特に、ボディメイクでダイエットや減量をすると、異化が優位になってしまうため、HMBの抗異化作用が機能しやすい環境ともいえます。

HMBをとるとそれが抑えられます。サプリメント的には少々マニアックな感じかもしれませんが、活用するとさらに骨格筋の異化を抑えられるので、気になる人は試してみてください。

筋肉を大きくすることは大切ですが、異化に意識を向けることで、さらに効果的にボディメイクが進みます。トレーニングと併せて、ボディメイクの際には、是非抗異化にも目を向けてみてください。

桑原 弘樹

桑原 弘樹
Kuwabara hiroki

1961 年4月6日生まれ 愛知県出身。
立教大学卒業後、江崎グリコに入社。スポーツサプリメント事業を立ち上げ、スポーツフーズ営業部長などを歴任し、現在はアドバイザー。桑原塾を主宰し、100人以上のトップアスリートのコンディショニング指導も行っている。

取材・構成=飯塚さき Illustration = JUNKO(小泉純子)

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