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ナチュラルボディビルディングを語る①:「INBA/PNBA」の創設者であるデニー・S・ケイコス氏が「WADAの薬物検査にこだわる理由」とは

フィットネスブームの加速とともに、「ナチュラル」を掲げるコンテストは増加の一途をたどっている。また、日本においてもボディビルやフィジークといったボディメイク競技の人気が高まり競技人口が増える中で、フィットネス大国のアメリカと同様にアンチ・ドーピングへの対策についても重要度が増している。

そこで本記事では「ナチュラルボディビルディングを語る①」として、世界的ナチュラルボディビル団体「INBA/PNBA」の創設者兼世界会長のデニー・S・ケイコス氏によるレポートから重要なトピックをまとめて紹介する。華やかなステージの裏側で、公正さの基準が揺らぎ始めている。検査のない「自称ドラッグフリー」や、曖昧な基準で運営される大会の乱立。そんな現状に対し、「INBA/PNBA」創設者であるケイコス氏が警鐘を鳴らす。

(IRONMAN2026年3月号「from IRONMAN USA」より転載)

著者プロフィール

Denny S. Kakos
『Iron Man Magazine』オーナーであり、世界的ナチュラルボディビル団体「INBA/PNBA」の創設者兼世界会長。約40年にわたり「ナチュラルアスリートに奉仕する(Serving the Natural Athlete)」を不動のモットーとし、薬物汚染のない真正な競技環境の構築に尽力している。オリンピックと同水準の厳格なドーピング検査を導入し、違反者を公表する透明性を確立した。その信頼性の高さから、世界中のナチュラルアスリートから絶大な信頼と敬意を集めている。

 

「ナチュラル」はブランドではない

本誌(※)9月号では、ナチュラルコンテストを実施する団体が増えてきたことに触れた。そして、検査を行わない団体による大会を本当に信頼できるのか、読者に問うた。私からすれば、信頼に足る検査なき「ナチュラル」など、単なるマーケティングのスローガンに過ぎない。

そもそも、薬物を使わないナチュラルアスリートの身体づくりは一夜にして行われるものではないし、ましてや薬物を一時的に断てば良いというものではない。「ナチュラル」や「ドラッグフリー」はブランドではないのだ。そこには透明性や説明責任が求められ、揺るぎない誠実さをもって「一切の薬物を使っていない」ということが証明されなければならない。

本来あるべき薬物検査とは何か。そして、なぜINBA/PNBA が40年近くにもわたり、最高基準の薬物検査の実施にこだわってきたのか。今回はその核心について語ろう。

INBA/PNBAでは、ステージに立つ全ての選手に対して、「公平な条件で戦える」ことを約束してきた。そのため、大会当日の薬物検査以外にも、さまざまな抜き打ち検査も設けられている。

これらはWADA(世界アンチドーピング機構)認定の検査機関で実施されている。WADA ははその精度、独立性なども含めて最高水準を誇っている。

WADA では、禁止物質や禁止されているドーピング方法についてのリストを毎年更新・公表している。例えば、2025 年1 月1 日からは、2024年9月12日に承認された最新リストやモニタリングプログラムが適用された。

編集注

※『IRON MAN USA』 2025年

INBA/PNBAによる薬物検査

●大会時の検査
INBA/PNBAの全大会
●大会時以外での検査
期間や日時を発表しない
●抜き打ちのランダム検査
検査漏れ防止
●ターゲット検査
不審な点や薬物使用の疑念がある場合

「恥の殿堂」にようこそ

以上のようなことから、WADAの検査結果は疑いようがなく、ナチュラルアスリートを守ることができる。

では、検査で陽性になった選手はどうなるのか?

INBA/PNBA の場合、「NaturalBodybuilding.com」にある「恥の殿堂」に公開され、最低1年間、最悪の場合は永久追放の処分を受けることになる。もちろん、Bサンプルによる再検査を通じて異議を申し立てる権利はあるが、最終的な判断が下るまで処分が解除されることはない。

 

オリンピックレベルの高水準検査を提供

中には、WADAにこだわる必要があるのか、他の検査機関でも同じではないかと言う人もいるだろう。しかし、全ての検査が等しく管理されているわけではない。その違いを明らかにするために、米国の検査事情を例に挙げて解説しよう。

■WADA認定検査機関

オリンピック選手やエリートスポーツ向けに設計されたドーピングテストを行う。検査では、ステロイド、成長ホルモン、マスキング剤、利尿剤、血液ドーピング、新種のデザイナー化合物、そしてSARMs(選択的アンドロゲン受容体調節薬)、さらにPEDs(パフォーマンス向上薬物)などの検出が可能だ。

検査には、世界最先端の質量分析と同位体比技術が使用される。また、「チェーン・オブ・カストディ」と呼ばれる保管&引き渡しの管理体制、ブラインドテスト手順が整備され、独立性と偽装防止が保障されている。

■USADA(米国アンチドーピング機構)

これは検査機関ではなく、米国内のオリンピック競技の検査プログラムを統括する組織だ。独自のラボを運営しているわけではなく、SMRTL(スポーツ医学研究検査ラボ)やUSLA オリンピック・アナリティカル・ラボといった「WADA 認定ラボ」と契約を結んでいる。USADAは方針を策定しサンプルを収集するが、実際の科学的な分析は依然としてWADAのラボが行っているのである。

■レッドウッド・トキシコロジー&アボット

米国内では、薬物検査の対象はアスリートだけではない。これらの組織は主に職場、裁判所、リハビリ施設向けに特化し、マリファナ、コカイン、オピオイド、アルコールといった「娯楽用薬物(ストリートドラッグ)」の検出を主目的としている。対象となる検査項目もエリートスポーツを対象にしたものとは違い、無作為のPEDs 検査には適していない。

ポイント

雇用目的の薬物検査
職務への適正や安全性の確認

WADAのアンチ・ドーピング検査
ステージ上の公平性を証明

選手やコーチの声

●バーデール・ベンソン
(PNBAプロエリート・ナチュラルアスリート)

「私がINBA/PNBA を選んだのは、ここで行われている薬物検査がWADA 基準に則っているからだ。オリンピック選手と同じレベルで実施されるので抜け道はない。逆に言えば健康を重視する考えが選手たちに求められているということでもある。INBA/PNBAで戦うということは、このモットーを尊重する姿勢を示すことなのだ」

●クリスチャン・シュナイダー
(PNBAプロエリート・ナチュラルアスリート)

「ここで採用されている薬物検査の厳密性や信頼性は、どこにも引けを取らない。これは、ナチュラルアスリートである私が最も重視していることだ。薬物検査が厳密であれば、どの選手も公正で公平なステージが約束される。それは同時にボディビルの完全性、安全性、そしてプライドを守ることにもつながる。だからこそ、私は今後もこの団体の選手として活躍していくつもりだ」

●Jマート・ゴンザレス
コーチ・オブ・ザ・イヤー受賞者

「私がコーチとして選手にINBA/PNBAの大会を勧める最大の理由は、この団体を心から信頼しているからです。薬物検査はどの選手も例外なく厳格に行われるので、選手の努力、自己管理能力が純粋に結果に反映されます。
INBA/PNBA は全ての選手に対して真に公平であり、だからこそ選手は身体づくりにまい進することが可能になるのです」

 

最後に

私たちの団体は、地域予選から国内大会、そして最高峰の「ナチュラル・オリンピア」に至るまで、妥協のない薬物検査を実施している。だからこそ、そこで戦い抜いてきた選手たちは、ナチュラルであることに誇りを持っているのだ。

ドラッグフリーのボディビルディングとは、単なるスローガンではない。常に隙を見せず、科学的な裏付けを求め、信念を貫く覚悟が必要だ。INBA/PNBAは上っ面だけのナチュラル団体ではない。そこに私たちの存在意義があり、世界に広がるINBA/PNBAのリーダーたち
も同じ価値観を共有している。

選手たちがINBA/PNBAのステージに立つとき、彼らがこれまでに払ってきた犠牲、己に課した規律、そして宿してきた不屈の精神は、最大限の敬意をもって称えられる。「ナチュラルアスリートのために尽力する」――創設から40年を経た今も、これこそが私たちの掲げてきた唯一無二のモットーなのである。

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