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「安定した生活」を捨て、夢を追う――元中学校教師がオーストラリアボディビル大会で総合優勝「人生に不正解はない」

「全てを捨てて夢を追う」――この言葉を聞いて、あなたはどう感じるだろう? 多くの人は「無謀だ」と笑うかもしれない。しかし、人生の幸せは決まった道を歩むだけでは得られないこともある。

2025年7月12日、オーストラリアのゴールドコーストで開催されたナチュラルボディビル大会『NBA(Natural Bodybuilding Australia)』で、日本人の小池優真(こいけ・ゆうま/26)さんが総合優勝を果たした。

【写真】豪州を魅了した小池優真さんの肉体美と日常フォト

「多様な生き方や価値観があることを、かつての生徒や挑戦を考えている人たちに見てもらいたい。どんな環境でも、諦めずに一歩踏み出せば、面白い未来が待っていると伝えたいです」

教師の安定を捨て、夢への一歩を踏み出す

小池さんが海外生活を夢見始めたのは3年前。公立中学校の教師として、生徒たちに学びと成長の機会を提供する日々は充実していたが、心のどこかで海外への憧れがくすぶっていた。

「高校3年生のとき、入試の失敗で落ち込んでいた時期に泊まったゲストハウスで、さまざまな国の人々と出会いました。言葉は通じなくても、彼らの多様な価値観やエネルギーに衝撃を受けました。それが海外への憧れの始まりでした」

その思いは、受け持ちの生徒が卒業するタイミングで決意に変わった。英語は単語レベルしか話せず、仕事や生活の不安もあったが、ワーキングホリデーでオーストラリアへ飛び込んだ。

「周囲からは心配や反対の声も多かったですし、自分でも不安はありました。でも、挑戦しないで後悔するより、やってみて失敗する方がいいと思ったんです」

過酷な環境での挑戦と支え

現在、小池さんは日本、フランス、スペイン、コロンビア、アイルランド出身の8人と共同生活を送っている。2つのアルバイトを掛け持ちし、10時から19時まで働き、その後に3時間のトレーニングをこなす。ボディビル大会への挑戦は、高校時代からの経験が背景にある。

「父が大会に出場する姿を見て、自分も挑戦を始めました。大会は努力の成果を試す最高の場。海外での初挑戦として選びました」

慣れない地での肉体造形は簡単ではないが、小池さんは前向きだ。「海外のジムは広く、マナーも良い意味でラフ。のびのびとトレーニングできるのが魅力です」と笑う。密かな心の支えは、「挑戦 元気 勇気 筋肉」と書かれたTシャツ。教師時代最後のクラスの学級目標で、辛いトレーニングの日や大会前にも着る「お守り」だ。

「僕の宝物です。これを着ると生徒たちに背中を押されている気がして、どんなにキツくても頑張れるんです」

小池優真さん

挑戦から得た自信 「挑戦する人の背中を実績で押せる存在になりたい」

海外生活に憧れつつも、英語や仕事の不安から踏み出せない人は多い。小池さんも同じ不安を抱えていたが、実際に体験したことで払拭されたという。

「日本ではネガティブな情報ばかり耳にしますが、実際に行ってみたら英語も仕事もどうにかなります。海外に来て一番の収穫は、勇気を出して行動すれば何でも乗り越えられるという自信です。今、僕が受け持っていた子たちは高校2年生、3年生と進路に向けて悩んでいる時期だと思います。世界にはあらゆる人がいて、あらゆる価値観があること。どんな道を選んでも、人生に不正解はないということを伝えたいです」

現在、小池さんは新たな目標に向かって走り続けている。

「海外生活を送る上で大切なのは、人生のなかで頑張ってきたこと、誇れるものがあること。英語が通じなくても自分の『芯』が伝われば対等に渡り合えます。これからも自分のあらゆる可能性を試したいし、無謀と言われることにも挑戦したい。色んなことをやりたいけど勇気が出ない人の背中を、実績で押せる存在になりたいです」

小池さんの挑戦は、未知の世界に踏み出すことを躊躇する人々への力強いメッセージだ。ある人は笑うかもしれない。だが、自らの信じる道を切り開く人々には大きな勇気を与えるだろう。

小池優真さん

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取材:にしかわ花 写真提供:小池優真

執筆者:にしかわ花
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』『Womans'SHAPE』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーとエクサイズでボディメイクに奮闘している。

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