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「メンズフィジーク青春物語」絶対王者・寺島遼が流した涙、筋肉コンテストの背景にあったドラマとは

試合後の表彰式で、絶対王者と呼ばれる男は珍しく涙を見せた。まるで精密機械のように試合当日にコンディションを合わせてきた寺島選手。その胸に去来したものは何だったのか。オールジャパン3連覇、グランドチャンピオンシップス2連覇の背景にあったドラマとは。

取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介(大会写真)

――優勝おめでとうございます。グラチャンの表彰式では、珍しく涙を流されていました。
寺島(苦笑)。最後、僕にとって思い入れのある選手たちと並ぶことができたんです。

――2位は直野賀優選手、3位は佐藤綾選手でした。
寺島 僕の中で(表彰台で)並びたいなと思っていた2人です。直野君とはもともと仲が良くて、僕にとって近い存在でした。綾君には世界選手権に一緒に行った仲間という意識を持っています。

――直野選手とは2016年のベストボディ・ジャパン以来、5年ぶりの再戦になるそうですね。
寺島 2年前のグラチャンでも並んではいるんですが、そこでは1位、2位を争ったわけではないので「再戦」には数えられないと思います。今回はファーストコールで並んで(優勝を争ったので)「再戦」という感じがしました。

――ベストボディ・ジャパン時代は、15年の東京大会では1位が田口純平選手、2位が直野選手、3位が寺島選手という並びでした。16年の東京大会は1位が直野選手で寺島選手は2位でした。
寺島 ベストボディでは常に僕の上に直野君がいたんです。15年、16年の日本大会でも直野君のほうが順位は上でした。だから、通算成績は僕の2勝4敗ですね。

――寺島選手は17年からJBBFのメンズフィジークに出場し、 その初戦となったオールジャパン選手権40歳以下168㎝以下級で2位になりました。同じ大会で直野選手は40歳以下176㎝超級6位でした。
寺島 階級が違ったので、直野君を追い越したという感覚はなかったです。その当時は直野君のことをライバル視していたと思います。

――直野選手は寺島選手のことを「隊長」と呼んで慕っています。いつごろから今のような関係性になったのでしょうか。
寺島(18年の)世界選手権に一緒に行ったときくらいからだと思います。そして翌年のアジア選手権に一緒に行って、より深い関係になった印象があります。

――そのころの直野選手はスポルテックカップで予選落ちするなど結果が振るわず、アジア選手権帰国後の空港で寺島選手と梅田亮選手に「ここで辞めるなよ」と発破をかけられたと。
寺島 僕はもともとサッカーをやっていたので、仲間意識を高めたくなってしまうんです。自分が先陣を切って日本代表チームを組織としてまとめていかないと、という思いがあります。一緒に肩を組んで目標に向かって取り組める、そんなチームにしたい。そういった中で、直野君とは自然に仲良くなっていきました。

――その直野選手は戦前、「グラチャンでは寺島選手とトップ2で並びたい」と語っていました。
寺島 その言葉を本当に実行しました。オールジャパンで2位に終わった綾君も、グラチャンではしっかりと挽回しました。

――佐藤選手とは19年の世界選手権にともに出場しています。
寺島 綾君のことは世界でももっと上に行ける選手だと思っています。でも、今年のオールジャパンでは2位に終わってしまいました。僕は少し離れた客席からその瞬間を見ていたんですが、綾君がステージ上から僕に向かって「ごめんなさい」みたいなジェスチャーをしてきたんです。これまで綾君とはあまり深い話はしたことがなかったんですが、「あれ、こんな感じの人だったっけ?」と思って。

――寺島選手はこれまでインタビューで「僕が苦手とするタイプ」「怖い選手」として佐藤選手の名前を挙げてきました。「名前を挙げてもらったのに優勝できずに申し訳ない」という気持ちになったのかもしれないですね。
寺島 そうかもしれないです。そして大会翌日にLINEで「こんな結果でごめんなさい」「いやいや、誰も悪くはないです」といった感じのやり取りを交わしたんですが、そこで「僕はグラチャンでは綾君と並びたいです」と強めのメッセージを送ったんです。

――そんな経緯があったのですね。
寺島 だから、自分が一番になってうれしくて泣いたわけではないんです。這い上がってきた直野君、綾君と並べたことがうれしくて、それで思わず涙が出てきてしまいました。

――まさに「メンズフィジーク青春物語」ですね。
寺島 これは僕がそのように導いているというのもあるんですが、お互いにライバル視しながらも仲間意識があるという関係性の中で生まれたドラマに感動しました。

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てらしま・りょう
1992年10月9日生まれ、東京都府中市出身。身長166.7㎝、体重67㎏(オン)75㎏(オフ)現在はフリーのパーソナルトレーナーとして活動。日本工学院八王子専門学校スポーツカレッジ・非常勤講師。
主な戦績:
2015 ベストボディ・ジャパン東京大会 3位/サマースタイル・アワードスタイリッシュガイ 優勝
2016 ベストボディ・ジャパン横浜大会 優勝/ベストボディ・ジャパン東京大会 2位/ベストボディ・ジャパン日本大会ファイナリスト
2017 オールジャパン・メンズフィジーク選手権40歳以下168㎝以下級 2位/IFBB世界選手権メンズフィジーク170㎝以下級 4位
2018 アジア・ボディビル&フィットネス選手権メンズフィジーク170㎝以下級 優勝/オールジャパン・メンズフィジーク選手権40歳以下168㎝以下級 優勝/IFBB世界フィットネス選手権メンズフィジーク170㎝級 優勝
2019 アジア・ボディビル&フィットネス選手権メンズフィジーク170㎝以下級 優勝/オールジャパン・メンズフィジーク選手権40歳未満168㎝以下級 優勝/JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2019 優勝/IFBB世界選手権メンズフィジーク170㎝以下級 優勝
2021 オールジャパン・メンズフィジーク選手権40歳未満168㎝以下級 優勝/JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021 優勝


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。


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