ぷりんと弾けるハート型のお尻と、50cmを切る美しいくびれ。女性が憧れるメリハリボディを持つ松尾郁里(まつお・かおり/38)さんは、ベストボディ・ジャパンで活躍する人気コンペティターだ。
エイジレスな肉体美を誇る松尾さんだが、意外にも「昔はコンプレックスの塊だった」と告白する。可愛くなりたいと切実に願った20代の自分。それが彼女の人生を変える第一歩だった。
美への目覚めと筋トレのきっかけ
「20代のころは太っていて、そんな自分がすごく嫌でした」と、松尾さんは振り返る。食事を改善し、エステに通うなかで美しく痩せていく自分に感動したことが、最初のボディメイク体験だった。その気持ちが忘れられず、自分も美を作る側になりたいと、通っていたサロンに就職。やがて独立を果たす。
「食事は今もずっと徹底していて、塩コショウのシンプルな味付け、使用する油は米油とオリーブオイルのみです。煮物には砂糖じゃなくて蜂蜜、醤油じゃなくて出汁や白出汁を使っています」
痩身の秘訣はやはりヘルシーな食生活だという。ただ、「年齢を重ねてもメリハリのある肉体には、筋トレと美容への高い意識が欠かせない」と力を込める。
「筋トレを始めたのは30歳のときです。仕事中に体力の衰えを感じたのがきっかけでした。それまで運動とは無縁だったんですが、エステティシャンとして仕事をし続けるにはもっと体力が必要だと思いました」
右も左もわからず、パーソナルトレーニングの門を叩いた。それが松尾さんの転機となった。
「あっという間に筋トレに夢中になりました。運動後の爽快さと自分と向き合う時間が楽しくてたまらず、ひたすらトレーニングに没頭しました」
「行けば勝ち」。日々の努力と大会への挑戦
「最初は大会に出るつもりは全然ありませんでした。先輩からの誘いを『人前で見せるためじゃないです』と、1年間断り続けたくらいです」
気ままに筋トレを楽しんでいた松尾さんだが、心を動かす出来事があった。
「大会に出ていた憧れの先輩に、『郁里ちゃんはエステティシャンだよね。お客様に背中を見せられる人でありなさい』と言われました。自分が一番美しくなる努力をしている姿を見せることが、お客様のためになるんだと気づいた瞬間でした。それで、出場を決意しました」
以来、仕事で疲れ切った日も「行けば勝ち」とジムへ足を運ぶ。大会期間中は、朝の空腹状態でのウォーキングから始め、仕事後の筋トレにさらに有酸素運動を重ねる。ただ細かった身体は大会を経るごとに進化、立体的な曲線へと変わっていった。
「『努力している』と、心から言えるほど努力しています。大会での戦績ももちろん嬉しいですが、自分を見てお客様が一緒にダイエットを頑張ってくれたり、どんどんきれいになっていく姿を見るのがすごく嬉しいです」
今シーズンの目標は「上半身の弱さを克服し、今までにない身体を作ること」。筋トレと美容への情熱を胸に、さらなる高みを目指す。
「昔は細いことが正義だと思っていたけど、今は増量中の自分も好きになれました。頑張ることで自分に自信が持てたからだと思います」
美しさと強さを楽しむ松尾さんの姿は、今日も多くの女性に輝きを与えている。
取材:にしかわ花 写真提供:松尾郁里(Instagram▪︎ kbs_kaori)
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。