「体脂肪率24%、そして陸上競技で太くなった大腿筋がコンプレックスでした」そう語るのは、現在ボディコンテスト団体「サマースタイルアワード」のスポーツモデル部門で活躍中、2024年の福岡大会ではオーバーオールチャンピオンとなった増永隆之介(ますなが・りゅうのすけ/33)さん。
※体脂肪率は市販の体組成計によるものです。
今ではバランスの取れた身体でステージに立つ増永さんだが、そこに至るまでにはコンプレックスと真剣に向き合い、自分に合った方法を試行錯誤してきたという。
まずは、自分に合う「食」を探すことから始めた増永さん。
「食事管理では、カロリー計算をしながら、自分に合う食べ物を探す努力を重ねました。ストレスや身体のリアクションを細かく観察して、適度な脂質が自分にとってのカギだと気づいたんです」
基本はローファットで減量を行っていたが、活力が出ずトレーニングにも影響が出ていたという。
「タンパク源をサバ缶に変えてみたところ、パフォーマンスが上がり、体温も日中高い状態を維持できるようになりました」と語る。結果として減量もスムーズに進んだそうだ。
「推奨されるPFCバランスに縛られるのではなく、自分の身体にとってベストな栄養の“質と量”を見極めることが重要でした。特に魚に多く含まれる不飽和脂肪酸が効果的だったと思います」
「また、乳糖不耐症のためプロテインを使わず、“リアルフード”からタンパク質を摂取していました。ちゃんと栄養を“吸収”できているかを重要とし、便通が滞りなく性欲が維持できているかを健康の指標にしていました」
トレーニングではコンプレックスを「生かす」ためのアプローチを意識していたという。
「トレーニングは週3~4回、胸・脚・背中を中心に、補助的に肩や腕も実施。ベースとなるセット法を一定期間固定し、その中で重量を伸ばす方法を取っていた。約8週間ごとに内容を見直し、新たなセット法や種目に切り替えて再度挑戦を重ねています」
コンプレックスだった大腿筋に対しては、2つのアプローチで強みに変えていったそうだ。
「1つ目は、下半身の機能改善です。特に反り腰だったので、股関節周辺の『腸腰筋』と『ハムストリング』に重点を置きました。腸腰筋にはフロントスクワット、ハムストリングにはルーマニアンデッドリフトを用い、体幹と骨盤の安定を意識していました」
前ももと裏もものバランスを整えることで、ただ太いだけだった大腿筋を、バランスの取れたものへと進化させていったのだ。
「トレーニング前の“ウォーミングアップ”も徹底しました。腸腰筋や脊柱起立筋を動かすCAT&DOG(CAT&COW)の動きは毎回取り入れています。柔軟性を高める準備運動も欠かせません」
2つ目のアクションは「コンテストへの出場」だという。
「スポーツモデルは、全身の筋肉バランスが評価されるカテゴリー。下半身の強みを活かしつつ、全身をバランス良く仕上げることが重要になります」
陸上競技で鍛えられた下半身が、むしろ強みに変わったのだ。
こうしたボディメイクの結果、トレーニング以前の2019年は体重73kg、体脂肪率24%だったのが、現在は体重70kg、体脂肪率12%まで減少。筋肉量を維持しながら理想の身体を作り上げることに成功したのだった。
「娘が生まれ、生活環境も大きく変化しました。そんな中でも、周囲への協力や環境への感謝を忘れず、“健康・心身・環境・感謝”を軸に過ごすようにしています。何かのせいにせず、“今、自分にできる最大限の努力”を選択する。それが自分の行動基準になりました」
トレーナーとしてのキャリアも、知人の紹介から始まったという。
「最初は“身体を鍛えてお金も稼げる”という軽い気持ちでした。でも、お客様と向き合いながら、自分の身体と知識を深めていくうちに、この仕事の責任と奥深さを感じるようになったんです。今では心からやりがいのある仕事だと思っています」
筋トレを通じて身体も心も変化し、人生そのものの質が高まった。増永さんは、これからも“自分の経験”を活かし、多くの人のボディメイクを支えていくだろう。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマースタイルアワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
執筆者:佐藤佑樹
主にFITNESS LOVEで執筆中。自身も大会へ出場するなどボディメイクに励んでいる。料理も好きで、いかに鶏胸肉を美味しく食べるかを研究中。
取材:佐藤佑樹 写真提供:増永隆之介