「背骨を知れば動きが変わる。日常が変わる」。
私たちが生活する上で重要な背骨。背骨を整えることでスポーツや日常動作のパフォーマンス向上、自立神経の調整に役立ちます。
現代の生活習慣で乱れやすい「背骨」のポテンシャルを最大限に引き出すための「背骨リセット術」を3回に分けてご紹介。3回目の今回はヨガインストラクターのMAIMAIさんに「背骨と自律神経との関わり」についてと「心身とのつながりを感じられるワーク」を教えていただきました。
[初出:Yoga&Fitness vol.14]MAIMAI 『呼吸と共に心身と背骨のつながりを感じる』
「背骨の働きで見逃せないのが、神経との関わりです。背骨の内側には脊髄と呼ばれる神経の束が通っており、脳からの指令を身体の各部に伝え、身体の各部からの情報を脳に伝えるという、人間の生命活動において非常に重要な役割を担っています。背骨はこの脊髄を保護する構造になっており、外部の衝撃から脊髄を守っています。また、背骨の間から末梢神経が左右に分かれて出ていくため、背骨は神経が全身へ分岐していくための通り道としても働いています。そして、その中でも特に深い関わりがあるのが自律神経です。
自律神経は私たちの意思とは関係なく身体の働きを調整する神経のことで、緊張や興奮を促す交感神経と、休息やリラックスを促す副交感神経の2つがあり、常にバランスを保ちながら身体の機能を維持しています。しかし、一度バランスを乱してしまうと、呼吸が浅くなったり、胃腸の調子が悪くなったりと様々な不調が現れます。神経に直接触ることはできませんが、背骨を整えることで神経伝達がスムーズになり、自律神経の調整につながります。
また、背骨を呼吸の通り道と捉え、深い呼吸をしながら内側の感覚に意識を向けると、心身のバランスを整えることができるのです。
このように背骨を整えることは、姿勢の改善のみならずわたしたちに沢山の恩恵をもたらしてくれます。それではどのようにすれば背骨への意識を高め、心身とのつながりを感じることができるのでしょうか。実践的なワークをいくつかご紹介していきます」
軸としての背骨を感じる
スカーサナ
お尻の下にブロックやブランケットをひき、骨盤を立てて座ります。足はあぐらのようにし、両手を膝に乗せて目を閉じましょう。軸となっている背骨を感じながら、背骨に呼吸が通っていくのをイメージして10~15呼吸ほどキープします。
マーラーサナ(代替)
股関節から脚を外に回し開き、肩幅くらいに開いて深くしゃがみます。胸の前で合掌し、肘を膝の内側に当てて押し合いながら、胸を持ち上げていきましょう。足裏で床を押す力を背骨に伝え、軸を感じながら10~15呼吸ほどキープします。
内観力を養う
バッダコナーサナ
床に座り、股関節から脚を大きく外に回し開いて足裏を合わせます。息を吐きながら頭の重さに身を委ね、骨盤から背骨がしなるようなイメージで足裏に向かって体を前傾させていきましょう。内側の感覚に意識を向けて10呼吸ほどキープします。
バッダコナーサナ(軽減)
頭が浮いてしまってきつい場合は、おでこの下にブロックを置いて行います。また、骨盤が立たない場合には、お尻の下にブランケットなどを入れて行いましょう。ポーズの形に捉われず、呼吸の深まるポジションを探します。
胸を広げて副交感神経を高める
セッツバンダーサナ
仰向けになり、脚を骨盤幅に開いて膝を曲げます。息を吸いながら骨盤のほうから1本1本背骨を持ち上げていきましょう。お尻の下で手を繋ぎ、胸の開きを感じながらゆっくりと10~15呼吸ほどキープします。
セッツバンダーサナ(軽減)
体が力んでしまい、心地よく感じられない場合は、仙骨の下にブロックを置いて行います。ブロックに身を委ね、余分な力を抜いて、呼吸で胸が広がっていく感覚を味わいましょう。手のひらを上に向けるとリラックスしやすいです。
形より感覚。自分の内側に耳をすませて
内側の感覚というのはとても曖昧でつかみどころがないもの。そんなとき、手がかりになるのが「背骨」です。背骨は身体の軸であり、構造としても意識しやすい存在。まずは静かにポーズに入り、背骨を感じてみてください。そこにゆっくりと空気が流れる様子をイメージしてみることが内観の第一歩です。そして、時間をかけていくことでその感覚が深まり、自分の中心を感じることができるようになっていくのです。
ポーズの形を追い求めず自分の感覚を大切にする。これは、ただの身体のワークにとどまらず、心のあり方にもつながっていきます。呼吸が浅くなっていたり、身体が無意識に力んでいたりすることに気づく━その小さな「気づき」が始まると、自然と呼吸が深まりポーズもしなやかになっていきます。こうした練習の継続が自分との関係を少しずつ変えてくれるでしょう。
そしてその先には誰かと比べることのない、自分だけの「ちょうどいい」が見つかるはず。心地よさとは、外側の評価ではなく、内側が静かに教えてくれるものです。形にとらわれすぎず、自分だけの快適さを見つけてみてください。
まいまい
ヨガインストラクター/ヨガプログラムコーディネーター/大学非常勤講師。全米ヨガアライアンスRYT200取得し、多くのヨガスタジオやフィットネススタジオでのヨガ指導を中心に、イベント登壇や企画、イベントコーディネーターとしても活動の場を広げている。指導内容は、体の構造をわかりやすく丁寧に指導することに定評がある。さまざまなメディアにヨガポーズモデルとして多数出演し、TVCMのヨガ監修などの経歴もある。メインの活動はヨガ指導であるが、近年ではこれまでのヨガ講師として培ってきたものを活かし、大学の非常勤講師としてQOLの探求、ウェルビーイングといった自己探求の講義もしている。ヨガのクラスや大学での講義を通して、人の可能性を最大限に引き出すことに喜びを感じ、自身のQOL向上に繋げている。
取材・文:高野真利 撮影:中原義史 Web構成:中村聡美