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「脂質制限は必要?」ダイエット・減量したい人必見【管理栄養士が答える脂質のQ&A】

一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の人の“食”を指導する管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)が、正しい食の情報をお届けします。

私の職場であるボクシングジムの会員さんはダイエット目的の方が多く、食事と運動を前向きに取り組んでいます。

一方で「今日からサラダとサラダチキン中心にします」「MCTオイルを飲みます」など、油を極端に増減するご相談も少なくありません。

果たしてダイエット・減量において、これは理想的な取り方なのでしょうか?

ここではQ&A形式で、脂質に関する正しい知識と実践ポイントを初心者にも分かりやすく解説します。

Q1ダイエット・減量では脂質制限は必要?

→はい、必要です(ただし“適正範囲”で)。

脂質は1g=9kcalと高エネルギーで、糖質やたんぱく質(各1g=4kcal)よりもカロリー過多につながりやすい栄養素です。

一方で、糖質はトレーニングや日常生活の主要なエネルギー源、たんぱく質は筋肉維持に不可欠であるため、減らしすぎることはできません。そこで「エネルギー調整の中心」となるのが脂質です。

健康維持や体型を大きく変えない人は、1日の総エネルギーの20~30%を脂質から取るのがおすすめです。

一方で、減量やダイエットを目的とする人は、20~25%程度に抑えることで、糖質・たんぱく質を確保しながら効率的に体脂肪を減らすことができます。これが「ローファット」ダイエットの考え方です。

ただし、20%未満まで厳しく下げるとパフォーマンス低下の一因になりやすく、10%未満では脂溶性ビタミンの吸収低下や皮膚・骨・免疫などへの悪影響が指摘されています。

目安(計算式):脂質g = 総摂取kcal × 0.20~0.30 ÷ 9
例)1,800kcalなら 40~60g/日、2,400kcalなら 53~80g/日

参考:日本人の食事摂取基準(2025年版)/スポーツ栄養学ハンドブック(東京大学出版会,2021年)

Q2ダイエット中は揚げ物を控えるべき?

→はい(頻度・量・作り方を調整しましょう)。

理由としては脂質を適正範囲に抑えやすいからです。揚げると油を含みやすく総脂質が増えます。

吸油率(食材が吸う油の割合)は衣の厚さ・油温・水分量で変動しますが、一般的な目安は以下のとおりです。

・素揚げ:3~8%
・唐揚げ:6~8%
・天ぷら:15~25%
・フライ:10~20%

参考:吸油率 - 揚げ物の油の量について - 簡単!栄養andカロリー計算

衣が厚い・油温が低い・水分が多いほど油を吸いやすいため、かき揚げ・フライ系は脂質が多くなりがちです。

具体例
・唐揚げ(若鶏、皮つき)5個(25g×5)= 脂質約22.6g
・白身魚フライ1枚(110g)+メンチカツ1個(100g)= 脂質約42.6g

1日の適正範囲(例:1,800kcalなら脂質40~60g)を考えると、揚げ物の習慣化は脂質過多の大きな原因となります。

さらにマヨネーズやタルタルソースを加えると、1食で1日分を超えることもあります。

脂質を抑えるコツ
・衣は薄くする
・揚げ上がりは網でしっかり油を切る
・週の中で揚げ物は回数制限(例:週1~2回)
・外食は焼き・蒸し・煮のメニューを優先(例:唐揚げ→鶏むねソテー、カキフライ→蒸し
牡蠣/焼き魚)

参考:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

Q3MCTオイルを飲むと痩せる?

→いいえ、置き換えれば“やや有利”ですが、足し飲みでは痩せません。

MCT(中鎖脂肪酸)は消化・吸収が速くエネルギーとして使われやすいため、長鎖脂肪酸よりわずかに熱産生が高い特性があります。とはいえ9kcal/gであることは他の油と同じ。

食事内容が同じままMCTオイルを“追加”すれば、その分だけカロリー過多になり体脂肪は増えます。使うならバターや調理油の一部、ドレッシングをMCTオイルに“置き換える”のが前提です。

実践メモ
・まずは小さじ1~2/回から(胃腸症状を起こすことがあるため)
・高温加熱は不向き(仕上げにかける・飲み物、ヨーグルト、汁物に加える)
・食が細い人や増量したい人には少量で効率よくエネルギーを確保できる手段として有効

実際私もボディメイクで増量するときにカロリーがどうしても食事で不足する場合はMCTオイルを取り入れています。

さらにMCTオイルは高齢者や介護食品にも活用されており、食が細く十分なエネルギーが取りづらい方でも少量で効率的にエネルギーを補えるのが利点です。

Q4サプリメントのオメガ3(EPA/DHA)は食品と同じですか?

→いいえ、完全に同じではありません。

バルクアップ

魚(サバ、イワシ、サケなど)
→ EPA、DHAに加え、タンパク質、ビタミンD、タウリン、セレンなど多くの栄養素を同時に取れる。

サプリメント(魚油カプセルなど)
→ 主にEPAやDHAを濃縮している。純度は高いが、魚そのものに含まれる他の栄養素は含まれていない。

吸収率は食事と大差ないとされますが、脂質を含む食事と一緒に取るほうが吸収は良好であり、空腹時のカプセル単独摂取は効率が下がりやすいです。

実践の目安
・食品で:青魚を週2回以上
・サプリで補う場合:EPA+DHA 合計で数百mg~1g/日を目安に(体格・目的で調整)
・抗凝固薬内服中は医師へ相談を

魚油は良質な脂質で、脳機能・視機能・血管の健康・筋肉の回復などに有益とされます。

理想は魚を基本に、食べられない日をサプリで補う併用スタイルです。

■参考文献
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
・ダン・ベナードットほか【スポーツ栄養学ハンドブック】 東京大学出版会、2021年
・吸油率 - 揚げ物の油の量について - 簡単!栄養andカロリー計算

■著者プロフィール

申泰鎮(シン・テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。現在はボクシングジムや大学ラグビー部で、増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを実施。競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・身体づくりに関する実践的な支援を行う。執筆や講演活動も多数。

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