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74歳バキバキボディで歓声を浴びる 65歳から始めた筋トレで変形性関節症を乗り越え「まだまだ筋肉の発達を感じる」

トレーニングで、はつらつと輝く高齢者が増えている。

8月31日(日)に新潟市で催された、40代以上の年齢別ボディビル日本一を競う『日本マスターズボディビル選手権大会』では、89歳のボディビルダー、金澤利翼(かなざわ・としすけ/89)選手が、通算16回目となる年齢別優勝を獲得。「トレーニングのおかげで未だ無病息災、130歳まで生きる」と意気込みを見せた。

【写真】74歳・布目元子選手のバキバキボディ

布目元子選手

愛知県で活躍する、布目元子(ぬのめ・もとこ/74)選手も、その潮流を牽引する一人だ。国内最高齢の女子フィジーク選手として注目を集めている。

「今年は肩と背中の強化に注力し、背中の広がりが増したと言われます。74歳でも、まだまだやり方によっては筋肉が発達するということを実感しております」

布目選手は、8月24日(日)に名古屋市で開催された『愛知女子フィジーク選手権大会』に6年連続で出場。2018年から、今年の2025年(2020年のコロナによる大会中止を除く)まで、ステージで鍛えられた肉体を披露し続けている。

65歳から始めた筋トレ 身体機能の改善と肉体の進化

布目元子さん7カ月の変化

「筋トレを始めたのは65歳です。ダイエットが目的でした」

きっかけは当時の職場の上司でボディビルダーの高瀬恵造さんへ「痩せたい」と相談したことだ。30年近く変形性股関節症に悩まされていた布目選手は、高瀬トレーナーと整体の先生に相談しつつ、週1回のダンベル体操(※)からスタート。半年後、硬かった筋肉がほぐれ、身体が動くようになった。
(※)ごく軽量のダンベルを体操動作に用いることで、無理なく身体への負荷を増やすトレーニング。ダイエット効果とともに骨粗しょう症を予防する効果もあり、医療機関やリハビリ施設でも行われている。

「マッサージや鍼を受けながら、少しずつ身体が変わっていくのを実感しました」

トレーニングが本格的に行えるようになった布目選手の最初の挑戦は、2017年のパワーリフティング大会出場だ。ベンチプレス35kg、スクワット55kg、デッドリフト70kgを記録し、67歳での初出場で年齢別優勝を飾った。

また、2018年1月は145cmで58kgあった体重は44kgへ。スリムになった身体で女子フィジークに出場。大会時には39kgまで身体を絞り上げる。その食生活はストイックだ。

「7時の朝食で胚芽玄米を100g、卵1個、ブロッコリー。10時からのトレーニング後に、プロテインを20g。13時の昼食には鶏肉やヒレ肉、魚を100gとブロッコリー。15時に有酸素運動とプロテインを20g。18時の夕食は、昼と同じです。増量期でも食材はほぼ変えず、摂取量のみを増やします。その代わり、週末は好きなものを好きなだけ食べます。大好きな穀物をたくさん食べることが多いですね」

また、10年間、週5日のジム通いを欠かさず行ってきたことで、「年齢を経るほど筋肉が健康においていかに大切かを知った」と語る。

「若い方はSNSでたくさんのトレーニング情報を得られるかと思いますが、基本のBIG 3をしっかり行うのが、最も身体を発達させるのではないかと思います。中高年から始められる方は、トレーナーに正しい方法を学び、自分に合ったトレーニングを地道に続けることが大切かと思います」

75歳、さらなる理想を目指して

今年はフリーポーズの練習に特に時間をかけたという。布目選手は、2018年に155名の選手の中からベストポーザー賞を獲得するなど、フリーポーズに情熱を注ぐ。

「高瀬トレーナーの厳しい指導で泣いたこともありました。でも、ジムの仲間から『目線や指の動きがきれいで感動した』と言われて、本当にうれしかったです。『強く、柔らかく、美しい』。女子フィジークの理想に、また一歩近づけたと思います」

布目選手は今年の10月に75歳を迎える。医療制度においては後期高齢者と呼ばれる年齢となっても、なお夢に向かい、理想を追い続ける姿勢が、生命を漲らせているように思える。布目選手は、高齢者のさらなるフィットネス業界への参入と活躍に期待を寄せる。

「日本マスターズでは男性は85歳以上の部が新設(2022年)され、私よりも年長の方が活躍されている姿にすごく元気をいただきました。今後、女性も65歳、70歳、75歳の部と広がっていけばいいなと思っております」

長寿国として名高い日本だが、『平均寿命』と『健康寿命』(健康上の問題で日常生活が制限されることなく心身ともに自立した生活ができる期間)との差は、男性で約9年、女性では約12年もの差がある。(2022年/厚生労働省調査)

「いかに健康に生きられる期間を延ばすか」という日本の大きな課題を、フィットネス文化の興隆は支える可能性を秘めている。布目選手の活躍は、長い人生を楽しみ続ける秘訣と、フィットネスを通じた心身の充実を教えてくれる。

次ページ:6年目のステージに立ち歓声を浴びる布目元子選手

取材:にしかわ花 撮影:上村倫代

執筆者:にしかわ花
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』『Womans'SHAPE』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーとエクサイズでボディメイクに奮闘している。

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