筋肉をつけるには、長い月日の鍛錬を必要とする。筋トレの経験がある方ほど痛感するのではないだろうか。そんななか、わずかトレーニング歴5年で全身に砲丸をつけたような丸々とした筋肉を構築した男が「ミスター愛知」(愛知県ボディビルで優勝すると与えられる称号)となった。トラックドライバーとして勤める会社員ボディビルダー・後藤有児(ごとう・ゆうじ/37)選手だ。
後藤選手は、大会出場歴2年目の2023年には『マッスルゲート奈良大会』でクラシックフィジーク175cm以下級とボディビル75kg以下級の2冠を獲得。今年の8月24日(日)に開催された『愛知県ボディビル選手権大会』で優勝と、着実に戦績を伸ばす。30歳を超えてから本格的にボディメイクを始めた、“遅咲きの実力派”のマッスルライフとは。
短期間の筋肥大の秘訣は「強度とボリューム」
後藤選手は週に6日、2時間から4時間近くをジムに費やす。オフ期のトレーニングは、脚ならスクワットやブルガリアンスクワットなどの複合種目をメインに据え、大会前にはレッグカールやレッグエクステンションといった単関節種目で細部の造形を磨き上げるという。
「ボリュームは筋トレを始めた当初から同じか、さらに増えています。どの種目も10〜20レップを最低でも5セット、多いときは15セット以上。種目数も多いので、やりきれなかったものはオフ日に回してでもやります」
この徹底したボリューム重視のアプローチが、短期間での筋肉量増加の鍵だ。クラシックフィジークからボディビルへの転向となる今年には、単なる動作の正確さではなく、「対象筋で動かせている感覚」を重視。「対象筋を使い切る」ことを徹底した結果、より顕著な筋肥大を実現したと語る。
ストイックな食生活でも「肉体づくり第一」の喜び
オン期・オフ期ともに食材を変えず、量だけを調整する後藤選手。減量期を長めに設定することで筋肉の減少を最小限に抑え、炭水化物はGI値の低いさつまいもやオートミールを主食に選ぶなど、緻密な計画性を欠かさない。
こうした肉体づくり第一の生活を、後藤選手は心から楽しんでいるという。部活動以来という30代でのトレーニング再スタートが、かえって情熱を生んだのかもしれない。
ジュラシックカップでトップ選手と対峙 同世代の希望
10月19日に開催される新興ナチュラル・ボディビル大会、第3回『ジュラシックカップ』ノービスクラスへの出場を表明。この大会は、『JBBF日本クラス別選手権』や『日本選手権』のトップ選手が出場するほか、優勝者には300万円など賞金が用意され、今年は新たに特定選手への“投げ銭”システムを導入するなど、画期的な取り組みをしている。
「現在の目標はジュラシックカップで良い戦績をいただくことです。大変恐縮ですが、トップ選手の方々と並んでみて、自分がどう評価されるのかを知りたいです」
20代の「競技エリート」たちが台頭するなか、30代半ばの後藤選手の躍進は、同世代のボディビル愛好家に大きな希望を与えている。
次ページ:全身ゴリゴリの丸み筋肉で会場を沸かせた後藤有児選手
取材:にしかわ花 撮影:上村倫代
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』『Womans'SHAPE』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーとエクサイズでボディメイクに奮闘している。