10月12日(日)、東京・江戸川総合文化センターで開催された『第71回日本男子ボディビル選手権』。身長、体重関係なくオーバーオールで日本一を決めるこの戦いで、昨年同大会4位の扇谷開登(おおぎたに・かいと/28)選手が優勝に輝いた。
【写真】怪物・扇谷開登選手の「デカすぎる」と観客をザワつかせた筋肉
扇谷選手と言えば、昨年ボディビルデビューで一気に駆け上がり、その桁外れな筋肉量から「歩くテストステロン」「ホモサピエンスの最高傑作」などといった呼び名が付けられ、人気を集めている。
扇谷選手は昨年3位の刈川啓志郎選手、昨年2位の嶋田慶太といった実力者たちを抑え優勝に輝いた瞬間、現実を受け止められないような、一瞬戸惑った姿が印象的だった。
「この結果に、率直にびっくりしています。正直、ファーストコールで2人には呼ばれましたが、自分としては『1位から6位、全部可能性があるな』と思っていたので」
「まだ、全然(優勝した)実感が湧いてないんですよね」と、謙虚で、率直な感想を話してくれた。
今年の春頃に腕に怪我を負い、そこからまともに腕や背中のトレーニングができなかったという。
「腕は5月頃から全くできませんでした。前腕を痛めて握る動作も辛く、腕トレも背中トレも満足にできない日々が続きました。それでも“できることを100%やる”ことを心がけました。重い重量は扱えなくても、軽い重量で回数をこなすなど工夫していました」
得意の部位である背中も、工夫を凝らしトレーニングの質を高めてきた。
「床引きのデッドリフトは特に問題がなかったのでやり込みましたし、懸垂もワイドは無理でもクローズグリップで対応していました」
厳しい環境でも諦めず模索し続けた結果が実る形となった。そんな扇谷選手の職業は消防士。仕事とボディビルの両立について尋ねると、淡々と語った。
「特別なことは意識していません。仕事のときは仕事に集中し、トレーニングのときはトレーニングやボディビルに集中するだけです。自分だけでなく、みんな働きながらやっている。だから自分も同じようにやるだけです」
怪我を乗り越え、見事掴んだ初優勝。ボディビル歴2年で日本一のタイトルを獲るという異常な成長速度のわけは、肉体的素質だけでなく決して諦めない精神力にあるのだろう。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材・文:FITNESSLOVE編集部 撮影:中原義史