「元々、お客様のほとんどはボディメイク競技をされる方でした。競輪、格闘技などの他業界のアスリートの方に広がり、今は一般のお客様のご来店も増えつつあります」
そう語るのは、「ジュラシック筋膜リリース」の開発者、エステサロン『Clear』浅野てるみ社長。同サービスは、現在、全国で73店舗(※)のエステサロンやトレーニングジムが提供に加盟する。(※ジュラシック筋膜リリース協会ホームページ「JFRA」加盟店一覧より)
今や全国に広がったこのサービスは、元々、ビジネスのために開発されたものではない。
「お世話になっていたボディビルダーの方をケアし、成績の向上へのサポートがしたいという個人的なボランティアから生まれた技術です」
ジュラシック筋膜リリースは、なぜボランティアから全国区のビジネスとなったのか。「肉体美のプロ」「アスリート」を惚れ込ませた技術の開発秘話を追った。

従来の筋膜リリースとの違い

「ジュラシック筋膜リリース」は、カッピングに着想を得た特殊な吸引カップマシンを用いる。
「一般的な筋膜リリースは、指圧やローラーで筋肉を押して癒着を剥がすため、痛みが強くでやすく、施術時間が長くなることから部分的な施術にとどまることもあります。ジュラシック筋膜リリースはマシンでの吸引で筋膜を引き上げて緩めつつ、内蔵されたローラーで老廃物を流し、手技のリンパマッサージを組み合わせます」
吸引による引き上げは筋膜の深い層まで痛みを抑えてアプローチできること、マシンの使用により、短時間で全身への施術が可能であることが大きな特徴だという。
「筋肉痛でも受けられるほどリラクゼーション効果が高いと、お客様から声をいただいています。全身の施術にこだわるのは、特定の部位の痛みは全身のバランスが原因であることが多いため、満遍なくケアする必要があるという考えからです」
愛用者からは、「浮腫がとれ、皮膚感がすぐに変わるためコンテスト前のカット出しに使っている」、「疲れがとる効果が高く、ハードトレーニングを続ける支えになる」、「通年、定期的なメンテナンスとして受けているが、食事管理や有酸素をしても残りやすい部位の脂肪まで絞りやすくなる」と声が寄せられる。
利益を考えないからこそ生み出せたクオリティ

ジュラシック筋膜リリースは、名前の由来ともなっている2024年にボディビル日本王者となったジュラシック木澤選手(木澤大祐)に対して、浅野社長が行った独自のケアである。木澤選手は20年間、ボディビルの頂上戦である日本選手権に挑み続け、引退の年に日本一となった経歴を持ち、『不屈の精神』が代名詞となっている。
「木澤先生とは、パーソナルトレーニングを通じた、10年来の親交がありました。開発のきっかけとなったのは、先生を応援したいという気持ちだけでした。当時の先生の成績は下降を続けており、また、ジム(ジュラシックアカデミー)を開業したてで全ての業務を一人で担われていて、心身が限界の状態を身近で見ていたからです」
浅野社長は美容専門学校を卒業後、大手エステサロンへの就職を経て、独立した経歴を持つ。自らのボディケアの知識や技術を生かして、応援として無償のサポート役を担ったという。なぜ、無償のケアサポートという選択に踏み切ったのか。
「木澤先生にはトレーニングだけでなく、どんな状況でも諦めず、角度や方法を変えて挑戦し続けることの大切さを教わりました。この考え方は、私の生き方に大きな影響を与えています。その恩を返す機会がほしいと思っていました」
木澤氏が好むカッピングをもとに、よりよい形を試行錯誤した。カッピングから動くカップマシンへ、カップマシンの中にローラーを内臓する仕組みへ、吸引力の微調整や手技の混合など、週に2回のフィードバックで2017年冬から3年かけて技術の改良を重ねた。
「最初は、ほんの少しでも助けになればと思ったのですが、木澤先生がどんどん元気になり、身体や成績が向上していくのが楽しくて、のめり込みました」
木澤選手は、2017年には日本選手権での自己成績中最低位であった11位から、翌2018年に6位と急浮上。以後、40歳を超えてから成績を伸ばし続け、50歳で日本一に到達した。
「極秘の応援プロジェクトだったのですが、先生の肉体や戦績の向上があまりにも急で目立ったため、他の選手やファンの方が理由を調べて辿り着き、問い合わせが殺到しました。最初は紹介の方のみをお受けしていましたが、紹介が広がり続けて、自分だけでは対応できない状況になりました。また、このケアを家族のため、パートナーのために行いたいから教えてほしいという要望も多くなったことから、ディプロマ制度をスタートしました」
ディプロマは現在、仕事として活動する施術者は108人、私的利用を含めると145人に上る。口コミのみだけでの全国区展開という、強力な伝播力を生み出せた要因を聞いた。
「利益を考えず、純粋にクオリティだけを追求し続けたからだと思います」
頑張り続けなければならない全ての人へ届けたい

現在、顧客層はスポーツ業界から一般層へ拡大している。
「特に、子育て中や兼業のお母さんの支持が増えています。『誰にも労ってもらえないけど、頑張り続けなければならない』という状態にある方が、身体も心も緩めにくる場として活用していただけて、『これでまた頑張れる』と言われるのが何よりうれしいです」
浅野社長は、「人をサポートするのが好き」なのだという。自身がアトピーや肌荒れ、痩せ体型への強いコンプレックスがあったことからエステ業界へ進み、「美しさとは対処法ではなく、心身の健康と元気から生まれるもの」と学び、救われたこと。結果、多くの同じ悩みを持つ方を変えられたこと。その経験が、健康への奉仕という信念につながったという。
「今後の目標は、ディプロマのスキルの差を無くすことです。資格取得をゴールではなく、今後どれだけお客様に向き合えるか、学び続けられるかのスタートとして考えていただきたい。そのためのフォローアップ制度の強化や専門セミナーを通じ、理論・技術・接客すべてで妥協なく、一丸となってサービス提供をしていきたいです」
一人の選手への献身から生まれたこの技術は、今、幅広い人々の心身の健康と活力を支えている。
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』『Womans'SHAPE』寄稿。記者、メディアプランナー、エッセイスト。
取材:にしかわ花 写真提供:浅野てるみ










