昨年のジュラシックカップオープンクラス。規格外の腕を誇る西﨑選手の登場に会場はどよめいた。そしてボディビル初挑戦ながら、勢いそのままにグランドクラスで腕・肩の部位別賞を獲得。日本トップクラスの腕となった西﨑選手の取材で見えてきたのは「感覚を研ぎ澄ます」ことの重要性だった。
取材・文:舟橋位於 トレーニング写真:岡部みつる Web構成:中村聡美

2年で腕周りを8㎝増やしたトレーニングメニュー
これまでのトレーニングを振り返ってみて、腕が一番太くなったと感じるのは、2018年から2020年にかけてのことです。それまでは腕周りは38㎝か39㎝ほどでしたが、ひとたび40㎝を超えてからはとんとん拍子で伸びていき、2020年には46㎝まで成長していました。
このときは、20回くらいを狙うハイレップ種目からトレーニングを始めていたのが特徴です。
二頭筋ならケーブルカール、三頭筋ならローププッシュダウンが該当します。高回数で感覚を研ぎ澄ますようなイメージを持って行っていました。二頭筋はその後、バーベルカール、バーベルプリーチャーカール、21カール、インクラインカールと進みます。これらも8レップから場合によっては12レップを超えることがあり、今と比べると比較的ハイレップのトレーニングでした。三頭筋は、ケーブルの後は、今も行っているスカルクラッシャーとダンベルフレンチプレスです。ケーブル種目で感覚を良くしてから、重量を扱う流れはやはりこの頃の基本です。この内容で筋肉の感覚が良くなったため、今では低回数でも刺激を入れられるようになりました。

一番腕が太くなった時期にはこのローププレスダウンやケーブルカールなどのケーブル種目を最初に取り入れ、腕に効かせる感覚を養ってきた
「西﨑流」デカい腕の考え方
バーベルカールは太い腕をつくるには欠かせない種目です。ちなみに、バーベルカールではストレートバーを使うのが好きです。EZバーには、前腕が回内して、親指が若干上を向く特徴があります。このポジションは、自分の中だとハンマーカールの動作に近い感覚です。ハンマーカールは重量が扱えて、確かに身体の芯に刺激が来るのですが、もう少し二頭筋に効かせることを狙いたい気持ちがあります。そうすると、前腕が回外していて、二頭筋の短頭に負荷が乗ってくるストレートバーが選択肢に挙がってきます。
ただし、ストレートバーは手首を痛めやすい点は気をつけたいです。自分はストレートバーで手首を痛めたことはなないですが、痛めた経験のある人は、EZバーを選択した方が良いでしょう。
メニューについては、感覚的な話なのですが、「しっくり来る」「難しくない」種目を徐々に取り入れた結果、今の内容になりました。それに加えて、精神的な負担も考えながら種目を調整します。1部位あたり25セットから30セット行うのが今のスタイルなのですが、種目によっては何セットもできないものがあります。そういった場合に、ボリュームを稼ぐための種目を追加するような考え方です。
- 西﨑選手が腕を太くしたい人に最も推すのがバーベルカール。自身は前腕が回外するストレートバーを好むが、手首を痛めてしまう人にはEZバーを勧める。身体の芯にウエイトが乗る感覚を理解するため「絶対やった方が良い種目」と力説
ケーブルとマシンは使い方が鍵
単純に腕を太くすることを考えるならば、やはりある程度の重さを扱う必要はあると思います。ケーブルやマシンといったトレーニングだけでは、筋肉に対するダメージが不足しがちです。
ただ、こういった種目が完全に悪いわけではありません。実際に自分が行っていたように、ケーブルを使ったハイレップトレーニングでは、腕に対する感覚を良くすることができると思います。このようなトレーニングを行うことで、腕に対する解像度を高くすることができます。逆に、高重量だけだと、腕へのダメージは大きくても、腕の解像度に欠けると思います。結局は、腕にしっかり刺激が入っている感覚をつかむことがポイントになるということです。
数値よりも太く見える腕をつくる
コンテストに出ることを考えると、「腕周り何㎝」というような数値よりも、実際に太く見えるかどうかが重要となります。自分自身、直近の腕周りのサイズはパンプ時で49㎝ですが、ここまで達していなかったときでも、「50㎝以上あるように見える」とよく言われていました。
太く見える腕の条件は、「情報量が多いこと」です。個人的には、このことを「えぐれて見える」と表現しています。例えば刈川(啓志郎)選手の脚のように、筋肉の境目がはっきりとしていて、それぞれの筋肉の隆起が一目で分かるような状態がその例です。
このようなえぐれた腕をつくるためには、腕の密度を高めていくことを考えないといけません。高重量をぶん回すようなトレーニングをしていると、オフの間はとても太く見えます。しかし、いざコンテストに向けて絞ると、全体がぼやけたように感じることがあります。これを避けるためには、やはり筋肉の感覚を研ぎ澄ました上でトレーニングすることが大事なのではないかと思います。
ここで問題として挙がってくるのが、太さを増すためのトレーニングと見栄えを良くするためのトレーニングは両立できるのかどうかということです。結論から言うと、別々に考えて取り組んだ方が良いと思います。自分のトレーニング経験を踏まえても、まずは腕の感覚を良くすることから始めて、それから太くすることを狙うのをお勧めします。ただ、腕が元から強い人ならば、同時進行のトレーニングでも成果が出せる可能性はあると思います。
現在の“爆腕”に至るまでのメニュー変遷
【トレーニングを始めた頃のメニュー】
◆種目
バーベルカール(ストレートバー)
バーベルプリーチャーカール(ストレートバー)
スタンディングダンベルカール
スカルクラッシャー
◆意図
トレーニングの知識がまだ豊富ではなかったので、知っている種目を限界までやり込んでいた。1セットあたりの回数は15レップ程度。
【腕が最も太くなった頃のメニュー】
◆種目
ストレートバーケーブルカール
バーベルカール(ストレートバー)
バーベルプリーチャーカール(ストレートバー)
21カール(ストレートバー)
インクラインダンベルカール
ローププッシュダウン
スカルクラッシャー
ダンベルフレンチプレス(ツーハンズ)
◆意図
二頭も三頭も、まずはケーブル種目を1セットあたり20レップほどで行っていた。これにより、トレーニングに対する感覚を良くすることを狙っていた。メイン種目の回数は8レップから12レップほど。
【現在行っているメニュー】
◆種目
スカルクラッシャー
バーベルフレンチプレス(EZバー)
ダンベルフレンチプレス(ツーハンズ)
プッシュダウン(Wバー)
バーベルプリーチャーカール(ストレートバー)
バーベルカール(ストレートバー)
インクラインダンベルカール
マシンワンハンドカール
ハンマーカール
◆意図
回数は7レップ→6レップ→5レップが目安。トレーニングに対する感覚が良くなったため、比較的低回数でも筋肥大を狙えるようになった。
初心者はまず「感覚」から
これから腕を太くしていきたいと考えるトレーニング初心者や中級者の方は、すでに何度も出てきていますが、何より腕に感覚が入るようにしましょう。
15回から20回できるような重量が一つの目安です。周りから「どう見ても軽すぎるよね」と思われるような重量でも問題ありません。まずは腕の筋肉を使ってあげる感覚を覚えて、それから重量を持つようにするのがお勧めです。
種目選択のアドバイスとしては、バーベルカールは絶対にやった方が良いことを挙げます。バーベルカールは、下半身の土台を整えた状態で全身をうまく使う種目です。言い換えると、身体の機能性が必要になる種目ということです。こういった種目を正しく行い、身体の芯にウエイトが乗る感覚を理解することが、トレーニングでは重要だと思います。

腕トレを始めた当初からバーベルプリ―チャーカール(ストレートバー)を継続して行う。西﨑選手の腕づくりに大きく貢献した種目だ
マシン種目にも良い点はたくさんあるのですが、身体の機能性というポイントに関して言うならば不十分です。マシンは身体の大部分が固定されて軌道が決まっているため、比較的容易に動作できてしまうのがその理由です。
フリーウエイトとマシン、それぞれの良い点を正しく理解して、使い分けるようにできると良いのではないかと思います。
こういった要素をクリアできている上級者の場合は、重量を伸ばしながら丁寧に動作することが意識できると良いと思います。自分の場合は、8レップを超えられるようになったら重量を一段階増やすようにしています。
理想の「えぐれた」腕に向かって
自分が理想とするのは、立ち上がりやピークのある腕です。しかし、こういった要素は遺伝による部分が大きいため、実現するのが難しいとも思っています。そのため、今はある程度割り切って「全体的に太くて丸い腕」を目指しているところです。
また、情報量が多い腕をつくることも意識しています。筋肉がえぐれていて隆起があり、カットが深いような腕は、やはりステージに立ったときに太く見栄えがするはずです。
トレーニングを続けていく中で、いつかはミスター日本にも出場したいと思っています。そのため、ミスター大阪やジャパンオープンが最初の目標になります。ミスター日本に出るからには、ファイナリストになりたいです。ただ、何がなんでも優勝したいという強い欲があるわけではないんです。まったりとした気持ちでトレーニングをする中で、目標に向かっていければと思っています。

西﨑空良
2025年の第3回ジュラシックカップではグランドクラス7位、腕・肩賞を受賞。優勝した寺山諒選手や扇谷開登選手といった選手たちを抑え、腕・肩部門でナンバー1に
腕が一番太くなった時期にやっていたこと
【時期】2018年~2020年
【やったこと】二頭、三頭ともに、第1種目にケーブルでのハイレップトレーニングを採用。第2種目以降も8~12レップの(西﨑選手的には)比較的ハイレップでメニュー構成した
にしざき・そら
1996年生まれ、大阪府在住。身長164㎝、体重73㎏(オン)、約88㎏(オフ)。パーソナルトレーナーとして活動しており、大阪を中心に、不定期ではあるが、東京や名古屋でもパーソナルを受け付けている。第3回ジュラシックカップオープンクラス優勝、グランドクラス7位、腕・肩賞受賞
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