一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手の栄養サポートを行う管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)が、「疲労が抜けないときにおすすめの栄養摂取」について、解説します。
筋トレやスポーツに取り組んでいると、「しっかり休んでいるはずなのに疲労が抜けない」と感じることはないでしょうか。疲労が残った状態でのトレーニングはパフォーマンス低下につながるだけでなく、慢性的
に続くとオーバーリーチングや体調不良の原因になることもあります。疲労回復には睡眠や休養が最優先ですが、栄養も大きな鍵を握っています。
まず考えたいのは「どのタイプの疲労か」
・筋肉の損傷による身体的疲労
・エネルギー不足や栄養不足による疲労
・ストレスや睡眠不足などによる精神的疲労
原因によってアプローチは異なります。
疲労が抜けないときに意識したい栄養素
ビタミンB群
ビタミンB群は糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変換する際に必要な補酵素です。特にビタミンB1は糖質代謝に関与し、不足するとエネルギー産生がスムーズに進みにくくなります。
多く含む食品:豚肉、うなぎ、かつお、まぐろ、レバー、玄米、大豆製品
アリシン
にんにくや玉ねぎに含まれるアリシンは、ビタミンB1と結合して体内に吸収されやすい形(アリチアミン)に変化します。ビタミンB1が豊富な豚肉と玉ねぎを組み合わせる生姜焼きなどの料理は、栄養面でも理にかなった組み合わせです。
抗酸化ビタミン(A・C・E)
高強度トレーニングでは活性酸素が増加します。ビタミンA・C・Eは抗酸化作用を持ち、酸化ストレスから細胞を守る働きがあります。
多く含む食品:緑黄色野菜、果物、ナッツ類、いも類
ただしサプリメントでの過剰摂取はトレーニング適応を妨げる可能性があるため、基本は食品からの摂取が望ましいとされています。
クエン酸
クエン酸は体内のエネルギー産生回路(TCA回路)に関与する有機酸です。単体で劇的な疲労回復効果があるわけではありませんが、酸味によって食欲を刺激し、食事量が落ちやすい疲労時でも栄養摂取をサポートするという実用的な側面があります。
多く含む食品:柑橘類、梅干し、酢
鉄分
鉄分は酸素運搬に関わるミネラルです。不足すると持久力低下や慢性的な疲労感につながります。
特に持久系競技者や女性アスリートでは鉄不足が起こりやすく、競技特性や発汗量によって必要量が増える場合があります。スポーツ栄養学の文献では、競技者は一般成人よりも高い摂取量が推奨されるケースがあるとされています。
多く含む食品:赤身肉、レバー、まぐろ、かつお、あさり、ほうれん草
n-3系脂肪酸
魚に含まれるEPA・DHAなどのn-3系脂肪酸には抗炎症作用があり、筋損傷後の炎症反応を穏やかにする働きが期待されています。
多く含む食品:さけ、まぐろ、さば
魚の種類による栄養価の違いについては、以前解説した記事も参考にしてみてください。
その他、見逃しがちなポイント
① エネルギー不足になっていないか
トレーニング量や強度が増えているのに、食事量が増えていないケースは非常に多いです。慢性的なエネルギー不足は疲労感の最大要因になります。
②食事内容が偏っていないか
カップ麺や菓子パン中心の食事はビタミンやミネラルが不足しやすく、脂質の質も偏りがちです。極端に加工食品が多い食事は、腸内環境や炎症状態に影響する可能性があります。
不足しがちな人の特徴
・ご飯とプロテインだけ
・鶏胸肉だけを繰り返す
・副菜や果物がほとんどない
炭水化物とたんぱく質だけを意識し、微量栄養素が不足しているケースは少なくありません。
疲労回復の基本は
疲労回復の基本は
主食、主菜、副菜、果物、乳製品を含むバランスの取れた食事
不足している栄養素を把握し補うこと
です。特定の栄養素だけに頼るのではなく、まずは「食事全体」を見直すことが、疲労を抜けやすい身体づくりにつながります。
■著者プロフィール
申泰鎮(シン・テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。現在はボクシングジムや大学ラグビー部で、増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを実施。競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・身体づくりに関する実践的な支援を行う。執筆や講演活動も多数。











