13歳でコンテストデビューし、全国高校生選手権、全日本学生選手権、日本ジュニア選手権と、ジュニア世代のタイトルを総なめにし、日本選手権3連覇まで躍進した相澤隼人。ジュニア世代の選手たちのトレーニングや栄養摂取、SNSとの付き合い方など、自身の経験を元に、成長していくための「考え方」を教わる。
取材・文:月刊ボディビルディング編集部 撮影:徳江正之、中島康介 Web構成:中村聡美
ジュニア世代の皆さん、いつもトレーニングお疲れ様です。相澤隼人です。今回はジュニア世代特集ということで、私自身の経験を元にアドバイス、と言うとおこがましいですが、一つの考え方として提示したいと思います。参考になれば幸いです。
まず初めに大前提として、私の中で当時の「失敗」は、その瞬間は失敗でも、少し長い目で見れば「良い経験だった」として消化できるものだと思っています。なので、今回は便宜上「失敗」と言いますが、今振り返れば「学びになった話」として捉えて欲しいです。
ジュニア時代を振り返って
まず、ジュニア時代のトレーニング面での失敗は、根性が先行しすぎて「出し切る」ことにフォーカスしすぎたこと・追い込むのはきついので、その”きつさ”だけに焦点が当たっていました。ベースのメンタリティや根性は必要だと思います。ただ僕の場合は度がすぎました。高校3年の時にハックスクワットで腰をやって、そこからヘルニアがどんどん悪化していってしましました。

高校時代は柔道部。この頃は授業終了後に19時頃まで部活をし、その後ウエイトトレーニングという生活を送っていた
食事面の失敗は、極端に振ってしまったことです。高校1年の最初の減量で、とにかく炭水化物をカットしました。柔道の練習を19時までやって、20時半くらいから22時くらいまでウエイトをしているのに、摂取エネルギーが明らかに足りなかった。カロリー計算はしていませんが、1カ月間ぐらいお米を一回も食べず、卵と鶏胸肉とブロッコリーだけ。確かに絞れるんですけど、絞れるというより「やつれる」が適切で、何もかも楽しくなくなって、とにかくきつかったです。
食事に関しては、食べ過ぎた経験もあります。高校3年で柔道を引退してボディビルだけになった時、消費エネルギーが減ったのに食事量をめちゃくちゃ増やしました。肌感だと一日3000〜4000キロカロリーぐらい余剰だったと思います。大会が終わった反動で菓子パンみたいなジャンキーなものをめちゃくちゃ食べて、翌年の仕上がりも悪くなり、オフの体重が増えすぎて怪我もしました。
ただ、これらのことは理論で正解が分かっていても、身体に落とし込まないと分からないことがある。だから致命傷さえ負わなければ経験として消化できる、というのが今の僕の考えです。そこを経験できたのは大きいです。

トレーニングの最優先は「動かし方」
トレーニングメニューを考える時、まず重要視したいのは「身体の動かし方」です。適度に連動させることと、適度に分離させること。入れるところは入れる、入れないところは抜く。そのさじ加減を学ぶのが大事だと思います。
それを学びやすいのは、やはりフリーウエイトです。不安定で、力を抜いたら落ちたり軌道が乱れたりするので支えなきゃいけない。身体の中にタスクがいっぱいあって、それをクリアして初めて挙がって、結果的に「効いた」になります。チェストプレスやペックフライ、レッグエクステンションも悪くはないし筋肉には効くんですけど、タスクが少なすぎる。長い目で見た時に、ポージングの仕方やフリーポーズの表現力みたいな身体操作は、やはりマシンだと上がらないと思うんです。だからフリー中心にして、フリーだと重さが乗らないところはマシンで補完する、という形がいいと思います。
例を挙げるなら、胸はベンチプレスとディップス。背中はチンニングとデッドリフトまたはベントオーバーロウ。肩はショルダープレスとサイドレイズ。三頭はライイングエクステンション、二頭はバーベルカール。脚はスクワットとブルガリアンスクワット。人によって違いますが、土台になる動きは外さないでほしいです。
カロリー設定の考え方
大会に出るのが前提なら、減量期はカロリー制限が必要です。自分のおおよその消費カロリーとメンテナンスカロリーを知った上で、カロリー設定をしていくのが必要だと思います。
オフはメンテナンスから500〜1000キロカロリーぐらいプラスしてもいいと思います。ただ1000だと多い面もあって、計算上は1週間で1キロぐらい脂肪で乗ってしまう。ずっとプラス1000だと、理論的には1カ月で4キロほど脂肪が増えてしまいます。でも高校生や大学生は結構動くので、代謝も戻ってくる。減量明けの増量は、500〜1000ぐらいは普通にプラスしちゃっていいんじゃないかなとは思います。
食材は、お米と卵と魚と鶏肉などベーシックなもので十分だと思います。飽きたら味付けや調理法を変える、食材を変える。大枠のカロリーの方が大事なので、そこをまずはざっくり決めていくのがいいと思います。成長期の注意点としては過度な増量で、眠気やだるさ、集中力の低下など日常に影響が出てくるので、オーバーカロリーは500〜1000ぐらいで収めておくのが良いのではないでしょうか。

SNSは「思考停止しない」こと
睡眠は、寝られるなら寝た方がいいです。私は、大学の時は10時間ぐらい寝ていました。質を上げるために、夕方以降のカフェインを抑える、寝る前は画面の光をなるべく避ける(ブルーライトカットをする)、室温を整える、みたいなことをやっていました。自分の場合はトレーニングは基本午前中にやっていましたね。
今主流となってきているコンディショニングは、概念は知っておいた方がいいけど、具体的なハウツーにはまだ行かなくていいと思います。トレーニングを頑張って、効かない部分が出てきたら、その不得意なところをトップダウンで落としていく。そのタイミングで取り入れるのがいいと思います。最初から、足首から全部整えよう、みたいにボトムアップで全てやる必要はないと考えています。
SNS時代の情報との向き合い方は、思考停止しないことが大事と捉えています。30秒のショート動画をただインプットするんじゃなくて、「なんでこの発信者はこの部分を話しているんだろう」と考える。発信者がどういう経験をした上でその情報を言っているのかを見極める。僕が言っているから全部正しい、でもないです。なので、「なんで相澤がこれを言っているんだろう」という仮説を立ててみてほしいです。
それと、コンディショニングやサプリに夢を見すぎないでください。ベースはトレーニングして、飯を食って、寝る。情報も思考停止で受け取らず、雑誌を読んでみたり、気になるなら教わりに行ったりもアリだと思います。

最後にまとめるなら、まず致命傷を負わないことが大事です。食事、トレーニング、メンタル、SNSとの付き合い方も含めて、これ以上自分にストレスをかけると病む、怪我する、というラインを見極める。その上で、気になったらまずやってみる。うまくいかなかったら試行錯誤するか、捨てる判断をする。もちろん一日二日で決める話ではないですが、まずやってみる、と考えること自体は大事だと思います。
相澤隼人が贈るジュニア時代の自分への言葉
●あいざわ・はやと
1999年10月21日生まれ/神奈川県出身/身長164cm/アイデンティティの筋肉を携えて俳優道を歩み出した/2015~2017年全国高校生ボディビル選手権3連覇。2017年日本ジュニアボディビル選手権優勝。2018・2019年全日本学生ボディビル選手権優勝。2021~2023年日本男子ボディビル選手権3連覇











