オランダ・アメルスフォールトを拠点に、ヨガインストラクターとして活動する川田佳澄(かわだ・かすみ)さん。ヨガ歴は約10年、指導歴は9年になる。現在は日本の禅の要素を取り入れたオリジナルのZenヨガをはじめ、パークヨガ、チェアヨガ、現地の最大級スポーツジムである『SportCity』でのレッスンも担当。日本企業に向けた健康経営のコラム執筆や、オンラインでのパーソナルレッスンと多岐にわたる。ヨガと出合ったことで、川田さんの身体だけでなく、人生の選び方まで大きく変わったという。

オランダにてヨガのレッスンを行う川田さん
川田さんが初めてヨガを体験したのは、母に誘われたことがきっかけだった。最初から強い興味があったわけではなく、半ば付き添いのような気持ちで参加したという。
しかし、レッスン後に感じた心地よさは、今でも鮮明に覚えている。
「エステやマッサージの後とは違う、自分が動いたからこその爽快感がありました。でも疲れはない、不思議な感覚でした。身体が軽くなったこと以上に、心が少し楽になった感覚があり、『これは今の私に必要なものかもしれない』と感じました」
ヨガを続ける中で、身体にも変化が表れた。3カ月ほどで体重が落ち始め、慢性的な肩こりも気付けば改善していたという。変化の理由は、単に身体を動かしたことだけではない。ヨガを通して「自分を大切にしよう」という意識が芽生え、自然と身体と心に良いものを選ぶようになったことも大きかった。
「完璧でなくてもいい」ヨガが教えてくれた身体との向き合い方
川田さんにとって、ヨガの一番大きな変化は「完璧でなくてもいい」と思えるようになったことだった。
以前は失敗を恐れ、人からどう見られるかを気にすることも多かった。思い通りにいかないことがあると、自分を責めてしまうこともあったという。しかし、ヨガを通して「今の自分を受け入れる」という考え方を学んだ。
「人生にはコントロールできないこともたくさんあります。その中で、自分ができることに集中し、変化を受け入れる柔軟さを持つことが大切だと感じています」
その考え方は、日本を離れてオランダへ移住する挑戦にもつながった。言葉も文化も違う環境に飛び込むことは簡単ではない。それでも、ヨガで培った「まずはやってみる」「今この瞬間に集中する」という姿勢が支えになった。

室内ではなく、屋外で行うヨガスタイルであるパークヨガ。自然の中でヨガを行うことで新鮮な空気を吸いながらリラックスすることができる。
身体との向き合い方も変わった。以前は「身体は頑張らせるもの」と考えていたが、今は「対話するパートナー」だと捉えている。柔軟性や体型だけでなく、その日の呼吸の深さや心の状態にも意識を向けるようになった。
「オランダに移住してからは特に、『頑張ること』よりも『自分らしく心地よく生きること』を大切にする文化に触れました。身体からのサインに耳を傾けることが、健康だけでなく人生全体の豊かさにつながると感じています」
インストラクターになった当初は、ポーズの形や技術を「正しく教えなければならない」という思いが強かった。しかし、9年間の指導と、オランダで多様な国籍や価値観を持つ人たちと出会った経験から、考え方は変わっていった。
「今は、全員が同じ形を目指す必要はないと考えています。一人ひとり身体も人生も違うからこそ、その人自身が心地よく感じられることが大切です。今は『教える』というより、『その人が自分自身に気付くための場をつくる』という感覚です。心地よい空間づくりに力を入れています」
印象に残っている生徒の言葉がある。
「かすみさんのレッスンを受けるようになって、自分を責めることが減りました」
ヨガというと、身体を柔らかくしたり、姿勢を整えたりするイメージが強い。だが本来は、自分自身との向き合い方を学ぶものでもある。体重が減る、身体が柔らかくなる、肩こりが改善する。そうした身体の変化も大切だが、川田さんが特に意義を感じるのは「自分を認められるようになった」「自分を大切にできるようになった」という心の変化だ。
忙しい人がヨガを続けるためのポイントは、「毎日やらなければならない」と思わないことだという。
「ヨガは1時間マットの上にいることだけがヨガではありません。朝起きたときに深呼吸を3回すること。デスクワークの合間に肩を回すこと。寝る前に1分だけ自分の呼吸に意識を向けること。それも立派なヨガなんです」
川田さん自身も、海外で子育てと仕事をしながら活動している。だからこそ、「完璧を目指さない」ことを大切にしている。続ける秘訣は、頑張ることではなく、自分にとって心地よい習慣にすることなのだ。

コンサートの休憩時間に着物でお子さんとチェアヨガを指導。気軽に始められることもヨガの魅力の一つだ。
川田さんの原動力は「自分らしく生きたい」という思いにある。学生時代に所属していたバトン部(現在のチアダンス部JETS)で、当時の顧問である五十嵐先生から聞いた言葉も心に残っている。
「添え物で生きるな。ハンバーグになれ」
付け合わせではなく、自分が主役の人生を生きる。その言葉は、川田さんの中に残り続けた。現在も恩師である五十嵐先生との交流は続いており、講演会に登壇する機会もあるという。川田さんはヨガを教えるだけでなく、ヨガの考え方や人生との向き合い方を通じて、受講者が自分らしく生きるきっかけを届けたいと考えている。

恩師である五十嵐先生の講演会登壇時の一枚
毎年、美容専門学校の学生に向けて講義を行う中でも、身体の健康だけでなく、自分自身の可能性や生き方について考える時間を大切にしている。
今後は、ヨガを通じて培ってきた心身の健康や「自分らしく生きること」というテーマを軸に、さらに多くの人へ活動を広げていく予定だ。2027年には、拠点としているオランダ・アメルスフォールトで、日本文化とウェルネスを組み合わせたイベントの開催を予定している。さらに、オランダだけでなくフランスでのリトリート(※)開催も準備中だという。
※日常から離れた環境で心身を整える滞在型のプログラム

ヨガだけでなく日本文化の発信にも力を入れている
ヨガは身体を柔らかくするだけのものではない。自分の呼吸に気付き、自分の心の声を聞き、自分の人生を選び直すための時間にもなる。川田さんの歩みは、健康的な身体づくりとは、単に痩せることや筋肉を付けることではなく、心地よく毎日を過ごせる状態をつくることだと教えてくれる。
川田佳澄オンラインパーソナルレッスン
Mail:kasumino.7@gmail.com
Instagram:@kasumi.yoga.japan
取材・文:柳瀬康宏 写真提供:川田佳澄
『月刊ボディビルディング』『IRONMAN』FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。保有資格は、NSCA-CPT,NSCA-CSCS,NASM-CES,BESJピラティスマット、リフォーマー。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動もしており、2019年よりJBBF、マッスルゲート、サマースタイルアワードなどのボディコンテストに毎年挑戦している。










