ボディメイクのレベルが上がり、競技出場中もしくは出場を考えているが、「時間がない」を身体が変化しない言い訳にしていないだろうか? 限られた時間で改善を続けてきた喜納選手の考え方を吸収し、血肉に変えよう。
取材・文:舟橋位於 大会写真:中原義史 トレーニング写真:岡部みつる コンディショニング写真:AP, inc. 写真提供:喜納穂高 Web構成:中村聡美

身体が改善しない原因をトレーニング時間のせいにしない
ボディメイク競技での優勝を目指して身体づくりをしているものの、思うように身体が変化しないと悩む方もいるはずです。そんなとき、「トレーニング時間が確保できないから身体が変わらないんだ」と短絡的になってしまうのは良くありません。問題となるのは、時間以外の要素である可能性も十分に考えられます。
大切なのは、現在の自分自身に足りていないのは何であるかを明確にすることです。サイズが足りていない場合と、アウトラインが良くない場合では、改善のためのアプローチも当然変わってくるわけです。
例えばアウトラインを良くすることを狙うのであれば、肩に負荷がうまく乗る身体の使い方を習得しないといけません。難しいのは、種目を変えることによるアプローチは必ずしも正しくない点です。自分の身体の使い方や機能の特徴を知り、その部分を直していく必要があります。
そうなってくると、トレーニング以外の時間で行うコンディショニングが有効になってきます。ストレッチや専用のエクササイズがその例ですね。自分の身体の中で何がマイナスになっているかを知り、そのマイナスをゼロに戻す作業をしていきましょう。

限られた時間で身体を変えるなら自分一人の「正解」に固執しない
自分一人でトレーニングしていると、ある種の固定観念ができ上がってしまう可能性があります。問題なく発達していれば良いですが、うまくいっていないならば、トレーニング時間に応じて内容を考え直すタイミングです。
解決の糸口を得やすいのはパーソナルトレーニングです。知識の豊富なトレーナーから、自分の視点とは異なる意見をもらうことができるはずです。パーソナルトレーニングを受けた結果として、改めて自分はどういう意識でトレーニングしているのかに気付けることもあるでしょう。普段は一人でトレーニングしている人ほど、客観的な視点からのアドバイスでトレーニング時間が見直されることがあると思います。
最近はトップ選手のトレーニング情報を入手することが容易になりました。これらを参考にして自分の考えを固めていくこともありですが、情報の取り方には注意したいです。自分とその選手は同じではないので、メニューが同じでも得られる効果は異なることが考えられます。「こういう身体になりたい」という目標はもちろん大事です。しかし、トレーニング時間の観点から、参考にすべき部分だけを抽出する必要があると言えるでしょう。

種目選定法と重量帯変更テクニック
短時間のトレーニングで成果を出すためには、意識の段階から変えていくことが必要です。
例えば、重さを持つことよりも、筋肉への負荷を優先で考えることが挙げられます。重さを持つことは大事なのですが、それがエゴとなり、結局筋肉には負荷が乗らないというのでは本末転倒です。この観点だと、時間が多く必要なコンパウンド種目は、短時間トレーニングには不向きな可能性があります。
短時間で筋肉に負荷を乗せることを考えると、インターバルを短くしたり、アップが少なくても実施できる種目を選んだりすることが有効です。身体を良くすることがボディメイクなので、最も効果が出ると思われる方法を採用するようにしましょう。
時間がない場合のトレーニングでは、対象筋への意識を重視したいです。逆に、先に述べたような重量へのこだわりはそれほど重要ではないと言えます。やることを絞って、それに集中して取り組むことで、結果として種目の熟練度が上がることも期待できます。

次に、一定期間身体の変化がない場合のアプローチについても考えていきます。この場合、毎回行っていることが同じである可能性があります。この状況を打破するためには、思い切って種目数を減らしてみるのも良いと思います。
他には、高重量・中重量・低重量のようなさまざまな重量帯でトレーニングするのも一案です。
結局のところ、ボディメイクで重要になるのは筋肉に刺激を的確に入れることです。そのための手段として、重量を扱ったり、トレーニングテクニックを駆使したりということがあるわけです。
現在のトレーニングのやり方に問題がありそうならば、思い切った変更も考えてみましょう。大事なのは、1セットの強度が高くなるようなトレーニングを考えて実践することです。

「背中と肩が大きく変わった」
最も多忙だった2023年に身体を変えられた理由は動作の意識改革
自分の場合は、背中の広がりやワイドさが課題であることをずっと感じていました。この点の改善のために、2023年からトレーニングメニューの意識を変えるようになりました。

まず背中に関して言うと、下背部で引かないようにすることを心がけました。自分の場合は、どうしても最初に下背部で引き込む癖があったので、それが起こらないようにすることを意識しました。また、重量を扱うこと自体が目的になっていた部分もあったので、そこも改めました。
これらのポイントを頭に入れて、プルダウンなら上背部に乗せる感覚を身に付けました。また、ベントオーバーロウは、体幹を固めすぎず、ある程度ゆとりを持って動作できるようにしました。
同時期に肩についても改善を狙いました。サイドに乗せる感覚が不十分だったので、対象筋に乗せる感覚を改めて確認しました。
2023年は子どもが産まれたばかりの年で、当然、今までのように時間を確保することはできませんでした。しかしながら、自分に必要な種目を選択し、さらに動作の意識を改革したことで、時間がない中でも満足できる結果を出すことができました。

ジム以外の時間でコンディショニングをしよう
ジムに行ける時間が限られている場合は、それ以外の時間の使い方が成長の鍵になります。特におすすめできるのは、日頃からコンディショニングの観点を持って生活することです。
例えば自分の場合は、物を拾うときや階段を上がるときに、もも裏とお尻を意識するようにしています。ただ、あまりに気にしすぎるのも良くないので、自然にできる範囲のことで良いと思います。
それ以外だと、自分に特有の身体の癖を知ることも大事です。自分は、歩くときに左足と比べて右足の裏だけ力みがちな特徴があります。歩きながら修正するのは難しいので、この部分に関しては、トレーニング前の関節チェックで補うようにしています。

家でも気軽にできるコンディショニングの一つのヒップリフト。体幹部を固定した状態で股関節を動かす意識で行うと、より股関節の動きが出やすい
車の運転をする方ならば、身体の片側に重心が乗りがちということがあると思います。そうすると結果として左右の脚のバランス変化なども起こるかもしれません。こういった問題は、日常的なコンディショニングで解決していけると良いと思います。
時間がもう少しあるのならば、お尻のストレッチをしたり、マッサージガンを使うのも良いです。呼吸のエクササイズなんかも、取り入れやすくおすすめできます。

最後に───
短時間でも身体を変えるために重要なこと
「短時間の中で身体を変えるために一番大切なのは、自分の身体を深く知ることだと思います。時間がないからこそ、やることをできるだけ減らしてでも、自分にとってプラスになるものにしないといけません。そのためには、自分の身体が今どうなっていて、どこを変える必要があるのかを理解することが大切です。
短くなった時間の中で、今までのやり方をそのままパパッと行うだけでは、身体は変わらないし、ただボリュームが減っただけになってしまう。変化が出ない理由が、単純にボリューム不足なのか、それとも自分の弱い部分へのアプローチや身体の使い方に問題があるのか。そこを見極めた上で、自分に必要な種目に絞って取り組むことが重要です。
もちろん、重量を伸ばしていく意識も大切です。ただ、身体を変えることが目的なら、対象筋に負荷を感じることを優先した方がいいと思います。僕自身は、種目数を減らして、その種目の熟練度を上げ、1セットごとの強度を落とさないようにしています。
また、才能のある若い選手が2時間、3時間トレーニングしていても、自分と比べたところでしょうがないとも思います。大切なのは、自分の身体の変化をちゃんと見ること。僕は競技一本にしたい性格ではなく、仕事や育児もある程度バランス良くやっていきたいと思っています。ボディビルに対して完璧を求めているわけではありませんが、しっかりやるときはやる、というイメージです。
60分もあれば、身体は変わると思います。みんなが完璧なわけではないので、自分ができない部分の改善にその時間を使うといいと思います」(喜納)

きな・ほだか
1995年11月20日生まれの30歳。沖縄県出身。身長173㎝ 。フリーパーソナルトレーナー。クラシックフィジークでは2021年、2022年ジャパンオープン選手権175㎝ 以下級優勝。2022年はオーバーオールでも優勝。ボディビルでは2023年日本男子ボディビル選手権5位、2024年同大会7位、2025年同大会6位











