トレーニング mens

「トレーニングの基本を理解していますか?」ウォーミングアップとインターバルとストレッチで筋トレ効果をあげる

毎週、週の始まりにはトレーニングノートをチェックし、今週の筋トレの予定を確認する。そろそろ種目を入れ替えようか。強度を上げるためにドロップセットやスーパーセット法をやってみようか……。そんなことをあれこれ考えながらモチベーションを高め、今週も新鮮な気持ちでトレーニングに挑む決意をする。いかにも身体づくりを本格的に行うアスリートだ。そうやって今週も筋発達に励もうとしている皆さんにケチを付けるつもりは毛頭ないのだが、トレーニングの基本的なことについて本当に理解しているだろうか? 今回のテーマは、何をいまさら……と思うようなことかもしれないが、とても大切なことだし、ゴールを定めて進むためには避けられない基礎の部分である。

文:Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション

基本的な質問に答えてみよう

●ウォーミングアップは必要か?
●インターバルの休憩はどれくらいか?
●ストレッチはいつやる?
●そして、これらの答えの根拠は?

確かに、最初の3つの質問に答えられたとしても、その根拠まで聞かれたら、よほど知識のある人でない限り答えに窮してしまうかもしれない。でも心配は無用だ。トレーニング歴の長い人でも、これらの基本的な問いに答えられない人は大勢いる。

どんなスポーツ、競技を行う場合でも、必ず「基礎知識」が存在し、競技アスリートはそれについて学ぶ必要がある。野球でもいきなり球場に出向いて試合に出る人はいない。試合に出るには基礎を学び、練習を繰り返し、技術を身につけていく必要があるのだ。

また、基礎は初級者だけが学ぶものではない。上級者になるにつれて難易度の高い技術がマスターできるようになるわけだが、どんなレベルの技術であっても、それをマスターするには必ず基礎が反映される。より高い技術をマスターするには、それだけしっかりと基礎を固めなければならない。これはどんな競技においても共通していることだ。

ボディビルも例外ではない。趣味でウエイトトレーニングをやっているという人も同じだ。基礎を学ぶことは不可欠だし、それがケガを防ぎながらトレーニングの成果を得ることにつながっていくのだ。

ウォーミングアップ、インターバルの休憩、ストレッチなども基礎に含まれる事柄だ。それなのに、こういったことをおろそかにする人はすくなくないようだ。この機会にしっかり基礎を理解し、安全で効果的なトレーニングの知識を身に付けてほしい。

基礎①ウォーミングアップ

ベンチプレスでいきなり高重量に挑んだせいで胸筋を断裂。その後、数カ月もトレーニングを休まなければならなくなったトレーニーの話は決して珍しくはない。ジムに通えない数カ月間、彼は何度も後悔したはずだ。どうしてあのとき、軽い重量からしっかりウォームアップしなかったのか。筋肉や肩関節、胸筋を十分に温めていたらこんなことには……。ケガが治ってからも、そのトレーニーの胸筋は左右の形がアンバランスのままだ。そしてそれは明らかに「何かあったに違いない」と誰もが察してしまうほど目立ってしまっている。

そんな経験談を聞くだけでも、ウォームアップの重要性を誰もが実感する。しかし、実際のところ、毎回のワークアウトでウォームアップを行っている人はそれほど多くはいない。

●ケガ予防のためのウォームアップ

ワークアウトするならウォームアップは必須である。ウォームアップによって対象部が温まり、血流が増して酸素が対象部に運搬される。これがケガの予防につながるのだ。

●柔軟性向上のためのウォームアップ

ウォームアップには柔軟性を高める効果もある。柔軟性が向上すると可動域が広がる。スタートからフィニッシュまでの可動域をフルに使った動作は、対象筋の隅々にまで刺激を行き渡らせる。つまり、ウォームアップは筋発達の効果を引き出すためのものでもあるのだ。

●滑液を増やすためのウォームアップ

関節には滑液がある。この滑液のおかげで骨が関節の中で自在に動くことができる。滑液の少ない状態で、負荷がかかった骨がゴリゴリと動かされれば、関節の炎症が起きる危険性が増してしまう。ウォームアップをしっかり行っておくと十分な滑液が分泌され、関節内の摩擦を軽減することができる。本番セットの前にウォームアップを行うのは関節を保護するためでもあるのだ。

●競技能力向上のためのウォームアップ

ウォームアップによって柔軟性が高まり、関節が保護されることで、ワークアウトや競技で全力を出し切ることができる。ケガのリスクが減り、しかも筋肉やその周辺は温まっているので筋肉の伸展と収縮がスムーズになり、より大きな力を発揮することができる。

実際に『ジャーナル・オブ・ストレングス&コンディショニングリサーチ誌』に掲載されていたメタ分析結果によると、分析のために集められた過去の研究データの79%が「ウォームアップによって競技能力が向上した」と結論づけていたことがわかったそうだ。

●集中力アップのためのウォームアップ

「ザ・ロック」で知られるドウェイン・ジョンソンは、YouTubeにある彼のワークアウト動画の中で、「フォーカス!」とたびたび叫んでいるが、当然ながらワークアウトは集中して行ったほうが効果が高まる。本格的なリフターたちは、本番に向けて集中力を高めるためにウォームアップを行う。ウォームアップには、どんどん意識を集中させ、最終的に1点にすべての意識を集めていくという目的があるということを覚えておこう。

●どこまでやれば万全か

ウォームアップが重要なことは理解できたが、どれだけやれば万全と言えるのだろうか。

例えば軽く汗ばんできたら、それはウォームアップが適度に行われたと考えて間違いないだろう。そこまでウォームアップができたら,本番セットを開始してもまったく問題はないはずだ。ただ、どれだけウォームアップを行えば万全であるかは人それぞれの感覚によって異なるものだ。5分もあれば十分に温まるという人もいれば、もっと長くウォームアップに時間を費やす人もいる。

また、その人の体質によってもウォームアップの量は変わってくる。中にはウォームアップを開始してすぐに汗ばみ、体温が上がる人もいるし、ある程度の時間をかけないと汗もかかないし、体も温まらないという人もいる。

時間や量はともかく、まずは全身の血流量を増やすために、少し早めのペースでトレッドミルを行い、その後、特定の部位のための種目を軽重量で1、2セット行うことを習慣にしてみよう。

基礎②インターバルの休憩

ウォームアップが終わったらいよいよ本番セットだ。対象筋やその周囲は血液がしっかり循環している状態なので、本番セットでは高強度で追い込むことも可能だ。しかし、ここでひとつ決めておきたいことがある。最初の1セットを終えたら、次のセットを開始するまでにどれだけ休んだらいいのだろうか。

この、セット間休憩の長さについては、トレーニーの目的によって変わってくる。自分が何を目指してワークアウトを行っているのかをここで再確認し、セット間の休憩時間を決めておくこともワークアウトの基本として大切なことなのだ。

●筋肥大が目的の場合

筋肥大を目指してワークアウトを行うなら、セット間の休憩時間は1、2分がいい。その理由は、休憩時間が短い方がより多くのアナボリックホルモンの分泌を促すことになるからだ。筋肥大のためにはテストステロンや成長ホルモンなどのアナボリックホルモンが不可欠である。そのため、完全に疲労が回復してしまう前に次のセットを開始したほうがいいだろう。

ちなみに、インターナショナル・スポーツサイエンス・アソシエーション(国際運動科学協会)では、セットの所要時間とセット間の休憩時間の比率を1:1にするように勧めている。つまり、1セットの所要時間が60秒なら、セット間休憩も60秒にするということである。

●筋力向上が目的の場合

パワーリフターやウエイトリフティング競技を行う選手たちは、筋力やパワーを向上させる目的でワークアウトを行っている。筋力向上やパワーアップが目的なら、セット間の休憩は3~5分間がいいだろう。

前のセットでの疲労をしっかり回復させてから次のセットを開始し、どのセットでも全力を出し切るようにする。長めの休憩を挟むことで、枯渇したATP(アデノシン三リン酸)を十分に再合成することができるため、次のセットでも爆発的な力を発揮することができるのである。

●持久力向上が目的の場合

筋肉を緊張させて姿勢を安定させたり、筋持久力を向上させることが目的なら、セット間の休憩は0~90秒に制限するのがいいだろう。

例えばクロスフィットのアスリートなら、次から次へと異なる種目を行うことになるので、できるだけ疲労をためずに動作を継続する必要がある。そのため、普段のワークアウトでもセット間の休憩は限りなくしたほうがいい。

もちろん、いきなりセット間の休憩をゼロにするのは難しいので、最初は90秒間に設定してもかまわない。ただし、運動強度を一定に保ちながら少しずつ休憩時間を短くしていき、最終的には連続して複数のセットが行えるようにしよう。

基礎③ストレッチ

ワークアウトにおいてストレッチはどれくらい重要なのだろうか。

『ジャーナル・オブ・インジュリー・リハビリテーション』は、ケガから復帰するためのリハビリ情報誌だが、それによるとストレッチは関節の可動域を広げて競技能力を高めたり、柔軟性を向上させて再びケガを負う危険性を軽減するのに役立つとしている。

そうであるなら、トレーニーにとってストレッチはウォームアップと同じくらい有用であると考えたほうがいいのではないだろうか。

『アメリカンカレッジー・オブ・スポーツメディスン』の会合でも、週2、3回のストレッチは多くの人に役立つと発表されている。この場合のストレッチは、動作を伴わないスタティックストレッチ(筋肉を伸ばした状態でしばらく停止するストレッチ)で、ウォームアップのあとに行うことが勧められている。

ストレッチはまた、ワークアウトの最後に行うことも推奨されている。というのも、ワークアウトによって刺激を受けた筋肉は緊張状態で固く萎縮している。これをほぐすことで疲労物質が血流によって押し流されやすくなり、疲労回復を促すことにつながるのだ。

ところで、ストレッチはいつやってもいいのだろうか。トレーニング歴の長い人なら、これまでにコーチや先輩たちから一度は聞かされたことがあるのではないだろうか。ワークアウト前やトレーニング中にストレッチをすると競技能力(筋力)が落ちるという話だ。これについては、実はある研究結果が根拠となっていたのだが、新しい研究も行われているので紹介しておきたい。

2019年発行の『ジャーナル・フロンティア・イン・フィジオロジー』誌によると、筋力&パワートレーニングの前に行われるウォームアップルーティンの中に、60秒程度のスタティックストレッチ(静的ストレッチ)を組み込んだところ、競技能力にマイナスの影響はほとんど見られず、むしろ柔軟性が高まり、筋肉や腱などにケガを負うリスクが軽減されたということだ。

研究者たちは、ハイレベルなアスリートにとって、わずかなことが結果を大きく左右するので十分な注意が必要なのは間違いないと前置きした上で、少なくとも競技前に行うストレッチに関しては、これが筋力やパワーの低下を招くとは言い難いとしている。

ストレッチを行うタイミングとしてはワークアウト前、ワークアウト中(セット間)、ワークアウト後などがあるわけだが、ウォームアップと同じようにストレッチも積極的に行ったほうがよさそうだ。

ワークアウトの本番セットに向けた準備では、ウォームアップ同様にストレッチも有用なのだ。また、セット間の休憩中にストレッチを行う人もいる。これはストレッチに可動域を広げたり、柔軟性を高めたりする効果があるためだ。さらに、血液の循環を改善することにもなるので、栄養や酸素が傷ついた筋線維に運搬されやすくなり、疲労回復を促すことにもなる。

ワークアウト後のクールダウンにストレッチを行うのも非常にいい。多くのトレーニーは、ワークアウト直後から数日後まで筋肉痛に見舞われる。これは遅延性筋肉痛(DOMS)と言われるもので、ワークアウトを終えてからも傷ついた筋線維には様々な物質が傷に浸潤して炎症を起こしたり、痛みを引き起こしたりすることを意味している。

実は、クールダウンにストレッチを採用することで、このDOMSを軽減することができるのだ。DOMSが消失してからでないと筋線維の傷修復は始まらないので、クールダウンにストレッチを行うことでDOMSが軽減され、それによって傷の修復が促され、筋肥大がより効率よく、より早く行われると考えることができる。

実際、プロボディビルダーたちの多くは、ストレッチが筋肥大につながると信じている。その理由はこうだ。筋肉は筋線維の束によって構成されていて、その筋線維は筋膜と呼ばれる薄い膜によって束ねられている。ストレッチはその筋膜を伸ばすことになり、つまりは筋線維1本1本がより太くなるスペースを生むことになるというわけだ。そのためストレッチは筋肥大にプラスになると信じられているのである。

ストレッチが推奨される理由については、いずれも実験によって裏付けがされている。例えば『ジャーナル・オブ・ヒューマンキネティクス』誌によると、ワークアウト後にPNFストレッチを行うことで運動の可動域を広げたり、筋力やパワーを向上させたり、競技能力を向上させる作用があるそうだ。

ちなみに、PNFストレッチとは、筋肉を伸ばしながら神経を刺激し、凝り固まった筋肉をゆるめていくタイプのストレッチだ。

PNFは日本語にすると固有受容性神経筋促通法のことで、筋肉と腱の境目にあるゴルジ腱器官や、筋肉の中にある筋紡錘と呼ばれる感覚器の緊張をゆるめるストレッチ法である。

これらの感覚器は、筋肉が過剰に伸ばされまいとして作動するのだが、感覚器の緊張がゆるみ、感知する能力が低下すると、筋肉をしっかり伸ばすことができるようになる。

ボディビルダーにとってストレッチは、筋肉と筋肉の境目、すなわちセパレーションをはっきりと強調するためにも効果がある。体脂肪を絞るだけでも筋肉と筋肉の境目は明確になってくるが、日頃からストレッチをしっかり行っておくことで、個々の筋肉の輪郭がより強調され、セパレーションの際立ったフィジークを完成させることができるのである。

結論

ウォーミングアップを敬遠しないこと、インターバルの休憩は目的に合わせること、そしてストレッチを軽視しないこと。とても基本的なことだがこの機会にしっかり理解を深めておこう。

知識は他人に自慢するためではなく、自分のために活用すべきだ。ひとつひとつの事柄を理解し、それを自分のワークアウトに活かしていくことでよりよい結果が期待できるのだ。

◀トップページに戻る


-トレーニング, mens
-