近年、メキメキと頭角を表す期待の星たち。昨年から今年にかけて、「ファイナリスト」という壁を越えるために、 どんなことをしてきたのだろう。彼らの戦術の中に、「成長の秘密」が見えるかもしれない
取材・文:小笠拡子 Web構成:中村聡美
壁を超えるためのカギ
トップ選手と並ぶ機会を月に1回持つ
渡部史也 2025年日本クラス別75kg以下級2位

撮影:中島康介
Q.課題に感じていたことは?
上半身の厚み
ポージング(見せ方)と全体的な筋量不足、特に上半身の厚みが足りないです。昨年の日本選手権で須山翔太郎選手や嶋田慶太選手の隣に並んだとき、また『ジュラシックカップ』で170cm超えの選手と比べたときに一回りか二回り筋量が足りないと感じました。
Q.自分の身体を最も成長させてくれたのは?
マリンジム!
月に1回の「マリン(※)遠征」です。愛媛県の西条という地方在住なので、トップ選手と並ぶ機会がこれまでありませんでした。今年の5月から月に1回マリンに通うようになり、トップ選手のスケール感や戦い方のイメージができるようになったんです。初めて訪れたときは新参者として控えめな感じでしたが、2回目ぐらいからは「全員かかってこい」という気持ちで挑んでいます(笑)。去年、あと一歩でファイナリストだったという悔しさが僕のスイッチを押してくれましたね。
※神奈川県にある横浜マリントレーニングジムのこと
Q.トレーニング面で注力してきたことは?
重量を伸ばす
メニュー自体はあまり変えていません。フォームを崩さず、重量を伸ばすことに注力しています。重量が特に伸びた種目はダンベルのブルガリアンスクワット。去年は40kg強でしたが、現在は片手61.2kgで行い、減量期に入った今でも継続できています。挑戦として一度根性で挙げてみて、「意外といける」と思った種目に関してはその重量をキープしている感じです。また、これまで痛みがあった肩が治ってきたので、インクラインのバーベルベンチプレスを取り入れ、120kgで5~6回挙げられるようになりましたね。
Q.食事面で変えたことは?
ご飯の量
基本的に昨年と変わっていませんが、去年は空腹しのぎで食べていた野菜を今年はそれほど食べていないですね。あまり空腹を感じることがなくて。もしかすると、去年の減量期は600gだったご飯の量を800gに増やしたからかもしれません。タンパク質の量は去年と同じです。具体的な中身としては鶏肉450g、鮭150g、卵4個、納豆1パック。納豆はおやつとして、特製「はちみつきな粉納豆」にして食べています。めっちゃおいしいです(笑)。
Q.そのほか、変えたことや尽力してきたことは?
ずっと熱量高く!
意識して変えたというより「変わったこと」になりますが、昨年の大会シーズンが終わってからずっと熱量を強く持ち続けていること。2024年はボディビルデビューの年だったので、「とりあえずやってみよう」の年でした。これほどまでに熱くなれなかったのですが、日本選手権での悔しさがバネになって、負けん気が強くなりました。ずっと頭の中に「全員かかってこい!」という意識がありますし、なんならトレーニング中もボソボソ喋っています。「もっとデカくならな負ける」って。
Q.一番の強みは?
全体的な丸みと、身体のバランス的にも弱点がないところ!
わたなべ・ふみや
2001年生まれの24歳、愛媛県在住。身長168cm、体重74kg(オン)、87kg(オフ)。現在は2交代制の工場に勤務しているが、9月末で退職が決定。和製フィル・ヒースを目指していて、合言葉は「渡部史也最強!!」。主な戦績:2024年 JBBF西日本男子ボディビル優勝、日本ジュニアボディビル70kg以下級、オーバーオール優勝。2025年JBBF日本クラス別ボディビル選手権75kg以下級2位