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コロナ感染を乗り越えて優勝!ボディビル階級別日本一決定戦で起こった大番狂わせの背景【マッスル】

ボディビルの階級別の日本一決定戦、日本クラス別選手権大会が9月11日、富山で開催された。“令和の怪物”相澤隼人選手や話題のイケメンビルダー・嶋田慶太選手らが参戦するなど、ボディビルファンから大きな注目を集めていた今大会。その65kg以下級で、今シーズン最大と思われる大波乱が発生した。
この階級の優勝候補と目されていたのは“日本一の背中”を持つ男と呼ばれるベテラン、須江正尋選手。1990年代からトップ戦線で活躍し続けている伝説のボディビルダーである。しかし、大方の予想を覆し、須江選手に勝って優勝したのが26歳の若手・吉岡賢輝選手。2016年に神奈川県ジュニア選手権でデビューした、キャリア5年の新人選手だ。

【写真】26歳の若手・吉岡賢輝選手のバキバキボディ

「信じられないです…。本当に信じられない感じです」

優勝した吉岡選手自身も現実感を喪失してしまうほどの超大番狂わせ。2019年は関東クラス別65kg以下級と神奈川県選手権で優勝。2020年はコロナ禍で大会がなくなったため、今回が19年以来の試合出場になるという。なお吉岡選手は18年には日本ジュニア選手権で4位に。ほんの3年前まではジュニアカテゴリー(23歳以下)の選手だった。

「僕は元々パーソナルトレーナーをやっていたんですが、昨年9月に仕事が変わったんです。トレーニング関係ではなく、ウエブやイベントのイルミネーションの企画などを扱う制作系の仕事をしています。仕事がデスクワークになって日々の活動量が減り、また筋トレのモチベーションも少し下がっていた中で迎えた大会だったので、(自信よりも)不安のほうが大きかったです」

その「不安」を感じるようになった要因のひとつに、現在人類が直面しているあのウイルスの存在があった。今年の3月から大会に向けて減量に入った吉岡選手。しかし、4月になって身体の異変を感じたという。

「熱が出てきて、味覚が全くなったんです。これは怪しいなと…」

結果は陽性。コロナに感染してしまった吉岡選手は2週間の隔離生活を余儀なくされた。減量はもちろんトレーニングも中断。試合出場を諦めざるを得ないような状況に陥った。

「その間は運動も全くできず、食事も提供されたものしか食べていませんでした。隔離が終ったあと、お医者さんに確認した上でジムに行くようになったんですが、後遺症が結構長く続いて…。咳が出て、息苦しい状態がしばらく続きました。また、トレーニングを再開した当初は力が全く出なかったです」

こうした背景を知ると、試合後に本人が発した「信じられない」決して誇張した表現ではなく、リアルな心境を物語った言葉であったことが理解できる。今後、吉岡選手は10月10日の日本選手権大会に出場する予定。将来性を感じさせる逸材がまた現れた。

取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。

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