「子どもの頃から1位とは無縁でした」という人生が、ボディフィットネス競技との出会いで大逆転。大谷美咲さんの“2位の女”卒業の裏には、楽しみつつも真摯に、真剣に学ぶトレーニングとの向き合い方があった。また、おいしく食べてキレイな身体をつくるヒントも聞いた。
トレーニングを始めたのは5年ほど前。フィットネストレーナーのAYAさんが話題になっていた頃でした。それまで何かに打ち込んだ経験といえば、中学時代のバレーボール部くらい。とくに趣味もなく、またちょうど30歳になる年だったこともあり、「私も自分に厳しくしたい、しっかり何かをやり遂げたいな」と一念発起してジムに通い始めました。
コンテストの存在を知り、自分の頑張った成果を知りたいという気持ちから大会に出場するようになったのは2018年から。最初はビキニフィットネスのカテゴリーで、横浜オープン大会に出場しました。ビキニからボディフィットネスに転向した昨年2021年は、オールジャパンやグラチャンでも優勝させていただき、予想以上の結果にただ
ただ驚くばかり。というのも、地域の陸上大会に始まり、子どもの頃から競争といえば万年2位。私は自分を「2位の女」だと思っていて(苦笑)、初出場の横浜オープンも、じつは2位でした。だから正直、絶対優勝できないと思っていたのです。
優勝できたのは、開き直りではないけれど「私は2位の女だから、微妙な差なら絶対に勝てない。でも、ぶっちぎったらほかの方の出来栄えに関係なく1位になれるんだ」と思うようにして、トレーニングや本番に自分ができる精一杯でのぞんだことがよかったのかもしれませんね。
ふだんのトレーニングについてですが、始めたときは1日に全身の基本的な種目をやっていて、慣れてきたら部位別に分けるようになりました。今の分割は脚、背中、胸、腿裏とお尻、肩で順番は決めていません。腕は余裕があるときに、他の部位と一緒にやっています。私は新潟県魚沼市のジム(MAXトレーニングGYM)に通っていますが、大会に出場している方もいませんし、トップ選手のトレーニングも見たことがありませんでした。ただ、フォームなどはジムのオーナーの方が教えてくれますし、その都度アドバイスもくれるので、その環境でじっくりトレーニングと向き合うことで身体がどんどん変わってきました。
身体に関しては肩の丸みを褒めていただくことが多いのですが、肩の種目数はそれほど多くありません。サイドレイズがメインで、日によってはそれだけで終わったりもします。リアは背中の日に結構刺激が入りますし、フロントも胸の日に一緒に入れることもあるので、肩だけの日は疲労がないサイドレイズが中心になります。基本的にドロップセットで、チ―ティングも使って追い込んでいます。
回数やセット数については、気にせず限界までやることが多いです。今、私が一番目指しているのは「トレーニングが上手になりたい」ということ。それができたら身体も絶対変わるし、そのうち重量も伸びてくると思っていて。だから、私にとってジムでの時間は理想の身体を作るというより「トレーニングを日々練習している」という感覚なんです。思うように効かないと「フォームはこうかな、それともこうかな」と試行錯誤しながらやっていくので、セット数や回数は気にならない、というより気にする余裕がなくなります(苦笑)。日々のトレーニングでは、前回よりうまく効かせられているかが今は一番大事で、上手になっていくことがとても楽しいです。
重量や回数を意識すると、どうしても「ほかの人は〇㎏挙げているから」とか「〇回以上やると効果的とネットに書いてあるから」など外からの情報が気になります。でも、ジムで見ていてもトレーニングがうまい人のほうがカッコイイし、身体も断然にキレイだと思うんですよね。もちろん筋肥大も目指すのでしっかりやりますが、重量や回数より私は正しいフォームを意識しています。
食事に関しては、もともと食が細いほうで、減量期も極端に食事を制限することはありません。「必要なエネルギーをストレスなく食べるということが私にとって最大の課題なので、タンパク質なら1食20gなど、決めた量をクリアすることを最優先に、自分の食べやすいように調理しています。
「減量のときも親子丼を食べています」というと、みなさんに驚かれるのですが、親子丼の食材は鶏肉と玉子がメインですし、炒め物ではないので油も使いませんよね。同じように、調味料の塩分、糖分もあまり気にせず、お肉をおいしく食べるために焼肉のタレも使います。「減量期に丼物や甘い味つけは絶対NG」と制限すると、もともと食べられない私には食事が苦痛になりますし、ストレスでボディメイクが楽しくなくなってしまうという人もきっと多いと思います。これからも私なりに工夫しながら、おいしく食べてキレイな身体をつくりたいです。
取材・文:藤村幸代(初出:Woman’sSHAPE Vol.24)