東京選手権では2022年は6位で23年は5位。そして今年、24年はまた1つだけ順位を上げて4位に。ジャパンオープン選手権では、初出場の21年は9位という成績で終わった。女子フィジークの新沼隆代(にいぬま・たかよ/49)選手はいつも、優勝からはそれなりの距離感のある位置にいた。
「だから、(このまま競技を続けても)私はもう勝てないのかな、なんて頭をよぎったり、勝ちたい気持ちが強かった今年の東京選手権でも優勝とは程遠く、もうここから上にはいけないのかなと思いました」
ところが、4位で終わった東京選手権のちょうど1週間後、8月11日に福井で開催されたジャパンオープン選手権。新沼選手は表彰式が行われたステージの中央に立っていた。日本選手権のファイナリストも参加した激戦必至の大会で初めての優勝。一体、この1週間のあいだに、何があったというのだろうか。
「(調整方法などで)何かを変えたというのはないんです。東京選手権のあとにたくさん食べて代謝が上がった? 確かに、試合が終わったその日だけは食べました。といっても、かき氷を2つだけですが(苦笑)」
そこで代謝が上がり一気にダイエットが進んでコンディションが良くなった、ということではなさそうである。では、ハイレベルな大会で優勝を果たせた要因は、どこにあるのだろう。
「気持ちが違いました。勝ちたい気持ちが強かった東京選手権のときとは違い、今回は挑戦者の気持ちで臨めました。また、すでに本年度の初戦を終えたばかりだったので、いい意味で肩の力が抜けて、ほどよい緊張感で当日を迎えられたというのもあったかもしれません」
勝利にこだわりすぎていた自分からの解放。飛躍のヒントは、意外なところに潜んでいた。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材:藤本かずまさ 撮影:中島康介
藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。