ボディビル競技の世界には“ラッキーパンチ”などは存在しない。試合当日になって、たまたまバキバキに仕上がって、たまたまいいポーズが取れて、そしてたまたま優勝した、といったことは起こりえない。そこでモノをいうのは、日々の積み重ねのみである。
9月1日に仙台で開催された、『JBBF日本クラシックフィジーク選手権』。171cm以下級、そして各階級の覇者で争われるオーバーオール(無差別級)を制したのは、日本のクラシックフィジークの絶対王者である五味原領(ごみはら・れい/26)選手。昨年2023年の世界選手権、今年のアジア選手権ではクラシックボディビルで優勝。国内のクラシックフィジーク選手権ではこれで171㎝以下級4連覇、オーバーオールでは3度目の戴冠となった。
「世界、アジアである程度の評価をいただいた中、日本で負けるわけにはいかないというプレッシャーは感じていました。ただ、今回は私の中ではベストの身体を作ることができました。負けても後悔はないという、これまでとは異なる心境で大会に臨みました」
2020年にクラシックフィジークの初戦を闘い、翌21年にはJBBFのクラシックフィジーク王者に君臨した五味原選手。今回のベストと言えるコンディションを作るにあたっては、新たなアプローチを取ったのであろうか。
「いえ、特別なことは何もやっていません。基本に忠実な、ベーシックなトレーニングを常に継続してきました。そうした年々の積み重ねで、ようやく自分の身体を理想的な形に近づけることができたのではないかと感じています」
7月のアジア選手権後はコンディションを崩してしまった時期があったものの、「これまでの経験を頼りに」調整を進め、立て直すことができたという。愚直な実践のその先に、大きな成功につながる道がある。ラッキーパンチがない世界では、不断の努力こそが最大の武器となる。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
文:藤本かずまさ 撮影:中島康介