「毎日トレーニングをしていた時期もありましたが、今はもうやめ、オフをとるようにしています。次のトレーニングに向けていかに身体をリフレッシュさせるか、という部分やコンディショニングに重きをおくようになりました」
そんな話をしてくれたのは村山彩乃(むらあま・あやの/37)さん。29歳のときにボディビル競技を始め、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)の選手として活躍してきた。現在は新潟県でパーソナルトレーナーを務めながら、今年も大会出場に向けてトレーニングに励んでいる。
村山さんがトレーニングを始めて3、4年経ったとき “身体をもっと変えたい” と思うようになった。その想いと向き合った今たどり着いたのは、ルーティンの撤廃と怪我をしないトレーニングの重要性だった。
がむしゃらトレーニングを卒業し、その日の体調を優先させる
女性はホルモンバランスによって体調が左右されることもある。よって、村山さんは「この日に身体のどの部位をやる、というのは決めていない」のだと言う。
その理由は、体調が良くないと感じたときでも「やらなくてはいけない」という義務感が生まれ、ストレスを感じてしまうから。大体1週間の中で全身をまんべんなく鍛えられたらいい、と村山さんは考えている。
「私はどの部位のトレーニングも好きなんです。そして仕事柄、トレーニングが確保できる時間も不規則で。だから、1週間の中で全身を回すけれども、その順番は固定しないというやり方が一番しっくりきています」
自分の体調と相談しながらその日にやる部位を決め、疲労が抜けきっていないときはきちんと休む。いかに疲労を蓄積させず、次のトレーニングに臨めるかが村山さんにとっては大事なのだそう。
競技を始めた当初は週3のトレーニングからスタート。それが徐々に増えていき、「もっとできるのでは」と毎日がむしゃらにトレーニングをした時期もあったという。しかし、毎日トレーニングしていても変わらないという “頭打ち” になったことを機に「休んだ方がいい」という結論に至ったそうだ。
マイペースに数時間のトレーニングをするよりも、長くても1時間半というコンパクトなものに変化。余分な疲労がなく、身体がきちんとリカバリーできるようになったという。さらに短時間のトレーニングを行うことによって、より丁寧なトレーニングを心がけるようになったそうだ。
筋肉への感覚を変えてくれたコンディショニング
村山さんのトレーニングは、“ストレスフリー” がキーワード。そしてもう1つ大事にしていることがコンディショニングだ。村山さんは「怪我をしないようにトレーニングをする」のが今のモットーだそうで、その一環としてコンディショニングを取り入れるようになった。
それは村山さんが大好きな脚トレの前でもしっかり行われる。「最も重い重量を扱うスクワットの前は、儀式のようにコンディショニングを行います」と笑う村山さん。
小さなゴルフボールサイズのフットケアボールで足裏をコロコロしてみたり、『骨盤職人』(※)を使って股関節周りをほぐしてみたり。こういったアイテムを使って筋肉をほぐし、片足でスクワットを行って股関節の硬さや詰まりの左右差を確認する。
※ 腰や背中、殿部のツボを寝ながら簡単にマッサージすることができるアイテム
「コンディショニングを行うと感覚も動きも良くなりました。37歳になった今、無理にトレーニングをして怪我をするよりも、止めてしまった方が安全だという考え方に変わりましたね」
そうにこやかに話す村山さんだが、感覚も動きも良くなったということは、成長の余白があったということ。今シーズンの舞台ではどのような身体を見せてくれるのだろうか。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピング講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材・文:小笠拡子 撮影:中原義史・中島康介