新女王決定の瞬間、会場でひときわ大きな歓声が上がった。
8月31日(日)、新潟市新潟テルサで40歳以上の年齢別日本一を競う『JBBF日本マスターズ選手権大会』が行われた。歓声を一身に浴びたのは、女子フィジークオーバーオール(全年齢総合)優勝を獲得した、宮田みゆき(みやた・みゆき/60)選手。昨年女王の阪森香理(さかもり・かおり/55)選手、本大会で10度の優勝経験を持つ清水恵理子(しみず・えりこ/61)選手を破り、階級別で満票の1位。総合でもほぼ一位票を占める形での優勝と、競技歴10年と還暦を迎える節目を華やかな戦果で飾った。
「故郷、新潟での夢のオーバーオール優勝は、今までにはない格別な喜びの優勝でした。今回、色々なご縁が重なりました。今年で還暦ということで、7月に高校の同窓会がありました。42年ぶりに同級生に再会した際に、新潟で大会に出場するという話をしましたら、なんと出席したほぼ全員が一致団結して来てくれました」
友人たちは観戦時の掛け声をzoomで打ち合わせするなど、愛情を込めた応援を送ってくれたという。
「また実家の両親、妹、叔母、そしてファンでいてくれている方々など、『応援の力』からパワーをいただいたことが原動力となったことは間違いありません」
宮田選手は、50歳を目前にトレーニングを始めてから、 わずか4カ月でデビュー戦の『東京オープンボディビル選手権大会』を優勝。その後も快進撃を続けるも、先天性の股関節の不調がトレーニングに支障をきたすように。2021年の『日本女子フィジーク選手権大会』では、当時、自己最高記録の3位を獲るも、変形性股関節症の悪化で日常生活もままならない痛みとなり競技の引退を考えていた。
しかし、手術とリハビリを乗り越えて復帰。不屈の挑戦心で競技に返り咲き、2024年『IFBB世界フィットネス選手権大会』(世界選手権)女子フィジーク163cm以下級で2位と世界的にトップレベルの水準で評価を受ける。逆境をものともせず歩みを進める姿は、多くの競技者に勇気を与えた。
「世界選手権では自分史上最高の評価をいただいたものの、世界基準の審査と(本大会の主催である)JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)の審査はまた違うであろうと不安ではありました。しかし、とにかく自分を信じ、トレーナーを信じ、ブレずに信念をもって今日を迎えられたことも功を奏したのでしょうね」
「感無量です」と勝利の喜びを表しつつ、その視線は次の目標を定めている。
「まだまだ課題はたくさんありますので、次戦の日本選手権(日本女子フィジーク選手権)につなげたいと思っています」
かつて女子フィジークの美しさに魅了された観客であった宮田選手は、今、次世代を魅了する存在の一人となっている。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材・文:にしかわ花 撮影:中原義史