JBBF選手 コンテスト

夫婦喧嘩で「大きい」と言われ奮起しコンテストで日本一に 自らの“美しさ”を追い求め続ける43歳

夫婦喧嘩中に夫に「大きい」と言われトレーニングを開始した早倉フジコ(さくら・ふじこ/43)選手。

ボディコンテスト団体のマッスルゲートやJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)で活躍し、2025年は日本大会である『オールジャパン』ビキニフィットネス163㎝超級2位、『オールジャパンマスターズ』ビキニフィットネス40歳以上160㎝超級優勝と日本トップクラスのビキニフィットネス選手として活躍する。40代からボディコンテストに挑戦し、理想の身体になるべくボディメイクを成功させ続けている早倉選手に「高く・丸く・短い」殿部のつくり方や“美しさ”へのこだわりを聞いた。

[初出:月刊ボディビルディング2026年7月号]

【写真】早倉フジコ選手の脚線美しく発達したビキニステージフォト(大会写真6枚)

早倉フジコ選手

6位入賞を目指したステージで2位に

──昨年のシーズンを振り返って、まず率直な感想から聞かせてください。

早倉 昨年は群馬県のオープン大会、東京選手権、オールジャパンにグラチャンと多くの大会に出場させていただきました。オールジャパンではマスターズで優勝させていただいたことも本当にうれしかったですし、163㎝超級では6位入賞が目標だったので、準優勝することができて本当にありがたいと思いました。グラチャンは入賞には届きませんでしたが、ピックアップ審査を通過できたことはすごくうれしかったです。

──2024年は1年間大会に出場していなかったんですね。

早倉 そうです。2023年はマッスルゲートのレギンスフィットネスを中心に出場していたのですが、同じ年のジャパンカップでビキニにも挑戦したんです。成績としては準優勝することができたのですが、脚のカットが出にくいこと、上半身が小さいこと、骨格的に上下のバランスがビキニの理想にまだ届いていないことが課題として見えました。そのときに「半年のオフでは足りない。筋量だけではなく、コンディショニングも含めて、身体を作り直そう」と思ったんです。

──具体的にはどのようなことをしましたか?

早倉 アメリカの理学療法士であるグレイ・クックという方が提唱している『パフォーマンスピラミッド』を参考にしました。それによると、スキルや筋力、パワーよりも土台の部分にモビリティやスタビリティがあるんです。腰椎は安定させる、胸は動かす、首は安定させる……そういった基本的な動きを学びました。
他にも同ピラミッドに則って、関節や筋膜の柔軟性も重視し、整体と筋膜リリースに通いました。骨格の上下バランスが整い、脚のカットが出しやすくなりましたね。

高く・丸く・短い臀部は
「3Dで動かす」

──昨年から今年にかけて、特に強化している部位はどこですか?

早倉 臀部です。2025年のシーズン後から、かなり強化しています。お尻専門のトレーナーさんに教わっているのですが、そこで学んだのは、お尻は骨盤の前傾・後傾、大腿骨の内旋・外旋を使いながら、3Dに動かすことが大事だということです。

──かなり難しそうですね。

早倉 はい。ビッグ3やコンパウンド種目だけでは、なかなか難しい動きだと感じました。私はずっとビッグ3一筋に近い感覚でやってきたのですが、臀部を作るうえではマシンの力もすごく重要だと実感しました。フリーウェイトだけでは作りにくい刺激があるんです。

──具体的にはどのような種目を?

早倉 今は9種目行っています。スミスマシンのヒップスラスト、お尻の下側を狙うヒップスラスト、回旋を入れるブルガリアンスクワット、ワンレッグの45度レッグプレス、両脚の45度レッグプレス、ワンレッグのダンベルデッドリフト、バーベルのスティフレッグデッドリフト、ケーブルキックバック、最後に片脚ずつのハイパーバックです。

──9種目はかなり多いですね。

早倉 多いです。でも2時間で終わるくらいですね。このやり方にしてから、お尻が短くなった感覚があります。ハムストリングと臀部の境目に刺激が入るようになって、そこが土台になり、お尻が上に乗るようになりました。トップポジションも上がり、下のラインも明瞭になってきたと思います。テンポも変えて、今まではゆっくりコントロールすることが大事だと思っていましたが、テンポよく行うようにしたら効きが良くなりました。ブルガリアンスクワットもゆっくり受けすぎると、前ももの関与が増えやすいんです。実際にやってみると、お尻がキュッと丸くなってきたので、新しい刺激でした。

美術と競技がつながる
黄金比、ひねり、横顔の美しさ

──憧れている選手はいますか?

早倉 スロバキアのアネタ選手です。上半身と下半身のプロポーションが絶妙で、脚も長すぎず短すぎず、本当に弱点がない身体だと感じます。可動性も高く、サイドポーズの形がとても美しいです。私の中では、そこに黄金比を感じるんです。

──黄金比ですか?

早倉 はい。私は東京藝術大学を卒業して、現在は服飾系デザイナーをしているので美しいというものに敏感なんです。黄金比に1対1・618という比率がありますが、プロポーションを考えると、上半身と下半身のバランスも1対1・6くらいがきれいに見えると感じます。海外のジャッジが美しいと感じる形は何かも考えています。

──海外選手の美しさを意識しているんですね。

早倉 はい。昨年、美術解剖学をされている同窓の方とお話する機会がありました。そのときに、海外の美術や彫刻では『ひねり』や『回旋』が美しいとされること、横顔や横向きの姿が重要視されることを聞きました。ボディビル競技のサイドポーズも、横を向いて身体をひねります。カテゴリーに関係なく、ポーズには必ずどこかに『ひねり』が入ってくる。そこに共通点があるのではないかと感じています。

──競技のポージングを、かなり分析されていますね。

早倉 美には明確な答えがないので難しいです。でも、どう見せたら審査員が票を入れたくなるのか、どこかに再現性がないかを考えています。私は服飾のデザインもしているので、比率やシルエットを見る感覚は、競技にもつながっていると思います。

「自分の身体で勝負したい」

──憧れているアネタ選手のような身体を目指しているのでしょうか?

早倉 最初はそうでした。ただ、2024年の世界選手権を東京で見たとき、「私には無理だ」と感じました。海外の強い選手は関節が細く、肋骨を上から見ると円筒形に近いんです。一方で、私は胸郭が薄く、横に広く、関節も太い。明確な違いを見て、一度は落ち込みました。

──そこから考え方が変わったのですね。

早倉 自分がなれる身体を目指そうと思いました。私は上半身が小さいことが課題ですが、その原因の1つは胸郭にあると気づきました。今は日々のコンディショニングで、呼吸を使って胸の上部にも空気を入れる練習をしています。

──胸郭は変わってきていますか?

早倉 少しずつ変わってきています。これまでの薄く横に広かった胴体が、少しずつ筒型に近づいてきました。前から見たときと横から見たときの厚みが近づいてきて、海外選手のような円筒型の胴体に少し近づいている感覚があります。そこは今、すごくうれしい変化です。

目指すは世界選手権出場
そして世界一

──今後の目標を教えてください。

早倉 まずは世界選手権に出場することです。2025年のシーズンは、オールジャパンマスターズのオーバーオールで世界選手権に行ける権利にあと少し届きませんでした。あと2点だったので、とても悔しかったです。今年はもっと良い身体を作り結果として世界選手権につなげたいです。

──世界の舞台に立つ、その先も見据えていますか?

早倉 はい。世界選手権で優勝を目指したいです。

──日本一ではなく、世界を目指す理由は何ですか?

早倉 いろいろな強い選手に会ってみたいからです。ボディビルやフィットネス競技は海外発祥のスポーツなので、本場の世界で認められたい思いがあります。
この競技の良いところは、階級や年齢カテゴリーがしっかり分かれているところです。私のように40代から始めても、日本一を目指せる。そこから、もしかしたら世界一になれるかもしれない。そういうスポーツは珍しいと思います。もちろん自分がなりたい気持ちが一番ですが、40代からでも頑張ればここまで変われる。そのことも伝えていきたいです。

【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。

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取材・文:柳瀬康宏 大会写真:中原義史

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